ルキ ②

次の日。

入念に準備をして、再び悪魔召喚の儀式をしてみることにした。

今度は人間ではなく、ちゃんとした悪魔を呼び出さなくては……


魔法陣は、前回よりも丁寧に書いた。

呪文も正確に唱えた。


さぁ、どうだ!



悪魔封じの魔法陣の上に、ぼんやりと何かが浮かび上がってきた。


お!

儀式は成功か?!


現れたのは、真由美さんだった。


「またアンタなの?」


それはこっちのセリフだよ!

とも思ったが、儀式をしたのは俺だ。

なにか、手違いがあったのだろうか。


「すみません。悪魔召喚の儀式、ちゃんとやったつもりなんですけど」


「悪魔召喚の儀式をして私が出てくるってのは……ある意味、間違っちゃいないわね……」


え? そう言うってことは、真由美さんはやっぱり悪魔なのか?


「俺も、白馬に乗った王子様じゃなくてすみません」


「ふふふ……」


悪魔は笑い出した。

ちょっとウケたみたいだ。



俺は真由美さんと雑談をした。

相変わらず、この悪魔は願いを叶える気はなさそうだったが、俺の話はしっかりと聞いてくれた。

悪魔との会話は楽しかった。


今日の儀式も、悪魔となんら契約を結ぶことなく終わった。


* * *


その次の日。

俺はまたも悪魔召喚に挑戦した。


真由美さんが出てくるのではないか。

それをどこかで期待している俺がいた。


果たして結果は……




「またルキなの?」


「また真由美さんか」


俺と悪魔は、顔を見合わせて笑った。


「今日は何の話をする?」


もはや、悪魔召喚でもなんでもなかった。

俺はただ、真由美という女の子とおしゃべりを楽しんでいるだけだった。


これはこれで、いいのかも知れない。

次の日も、その次の日も、俺は悪魔真由美を召喚してはおしゃべりを楽しんだ。


初めて召喚した時は無愛想で不機嫌だった悪魔は、俺との毎晩の会話を通じ、だいぶん心を開いてくれるようになった。


ある日のこと、いつものように悪魔真由美を召喚して話をしていると、こんなことを言われた。


「そういえば、悪魔に3つの願いを叶えてもらいたい、ってルキは言ってたわね。お金と名誉、でさ、3つめの願いは何なの?」


「叶えてくれるのか?」


「ふふふ……私は確かに悪魔って呼ばれているけど、私に願いを叶える力なんてあると思う?」


「まぁ、ないだろうね」


「なにそれ! はっきり言わないでよ!」


「え~っと、3つめの願いを言うよ。『かわいい彼女が欲しい』」


「はははははは……」


悪魔は笑い転げた。


「なんだよ、笑うなよ!」


「じゃあさ、女の子にモテるための努力をしなさいよ。まずは見た目の清潔感。これ、大事よ」


結局、俺は悪魔から「モテるための極意」をいろいろ教わることになった。

毎日、悪魔を呼び出しては、モテるためのレクチャーを受け続けた。


「髪型はね、もっとこうして、あと、服装は……」


* * *

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