第32話 MMOアップデート

鎧ができるまで暇だったので俺は久々にパソコンで遊んでいると

MMOのアップデートが更新されている事に気が付いた


『レベル更新はされませんが更なるダンジョンの深層へ!』


と題しレベル20縛りでの新たなダンジョンが更新されたらしい


そして近々ヴァージョンアップでレベルも25まで上げられるようになるとの話もある。


という事で俺は


「ダイブ」


早速インストールしMMO世界へ飛び込んだ



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今回は死ぬようなことは絶対ない。フラグとかじゃなくマジで。

なので今回は仲間は呼ばずキャシーと共にゲーム内のダンジョンへ赴く


「いやー、久々だなゲーム。あれ以来あんまりやってなかったからなー」

≪まあ、メリットがないからやらないのも仕方ないわね≫

「…新しいダンジョン。ならばやることはひとつ…」

≪わかってたわよバーカ≫

「それは重畳。ならばいざ、マップ埋めの作業だぁああああああああああ!!!!」

≪おー(棒読み)≫


新たに踏み込む新天地マップそれを埋めるためにいざ往かん!!!


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例によって罠へ罠へと俺は足を突っ込み切り裂かれ焼かれ串刺しにされ

などがあり紆余曲折。

マップ埋めの作業に滞りなし。もう無限にやってられるなと思いながらもひとつひとつ埋まっていくマップに一抹の憂いを感じながらマップは出来ていく


悲しいよな。永遠ってのがない。世界ってのはこんなにもちっぽけなんだなと

ちっぽけな俺は哀愁に浸ってしまう


≪いや、なにマップ埋め如きに一喜一憂してんのよ。付き合わされる私の身にもなりなさいよね…。もう慣れたけど≫

「ついにキャシーもマッパーに…!!」

≪目覚めるわけないでしょこんな変態の所業!!世界を知るために地図を作ることは偉業だけどこれはただの暇人の持て余しじゃない!!≫

「ぐうの音も出ない正論!!だが好きなことが終わるってやっぱ悲しいよな

まあ次の楽しみ作ればいいんだけど」


ひたすらリスポーンされ周回ぐるぐると埋まっていない部分がないように隅々に歩いていく。まあ確かにはたから見れば変態の所業だ。でもめっちゃ楽しいんだよ俺は

そんな俺のさまを見てぼやくように黄昏ながら遠くを見つめてキャシーはなにやら意味深なことを呟く


≪・・・明日がくるって幸せね。人間っていうのは楽天家で明日日が昇るのも退屈な日常が続くと思い込んでる。いつか地面が崩れる、空が落ちてくるなんて考えもしないのはある意味幸せものね。平和なんて本当に簡単になくなっちゃうのに≫


「まーそうだなぁ。なんだかんだ結構人間って強いからなぁ。順応力っていうのか

色々あってもなんだかんだで生き延びて乗り越えるもんだ。

実際魔素やらダンジョンやらいつの間にか自分のものにしてるし業が深い生き物だとは思うぜ」


それは多分絶対的な滅びというものがまだ到来していないから。

地球がある限りまだ人類には存続権があると思う。

突然そんなことをつぶやいたキャシーに対し俺は神様と人間は違うんだなとしみじみ思う


≪でもね…やっぱり魔王は強いの。この世に在ってはならないほど強いの

あれは星どころか世界を覆いつくす悪意そのもの。倒すべき相手…≫

「神じゃ何とかならなかったのか?」

≪ならなかったからこうなっているの。

…聞いて雄一。あのね、ゲートは魔王の力じゃない。あれは神の作った苦肉の策

魔力の膨張を防ぐために神々が施した処置なの…。だからこの世界に魔の霧を呼び起こしたのは魔王じゃなくて…≫

「あー…もしかして俺の事調べた感じ?」

≪・・・・・・・・・・≫


口つぐむ辺り図星のようだ、まあいつか話す事だし遅かれ早かれで気にしてはいない

そしてキャシーの言いたいことは大体わかる。

魔王ではなく女神であるキャシーが俺の両親を脅かしたと言っているらしい

恨むのは魔王ではなく自分だという自責の念。だが


「もしかして恨めって言いたいのか?冗談じゃない。

俺はハンターになれて幸せだ。俺の親の事は残念だけどそれってキャシーのせいじゃないだろ?どうしようもなかったんだ。それに魔王を倒せって言いながら倒しに行かない俺達人間が謝るべきだろ?」


≪そんなのエゴよ…。神にできないからってよそ様に迷惑かけていいはずがない

厚かましいにもほどがあると思わない?自分たちでは対処できないから他に押し付けるなんてあっちゃいけないのよ。何のための神よ。誰よりも力があるから誰よりも責任を持つべきの神が人間にすがるなんて…ひどいでしょ≫


「まー神様にも出来ないことがあるって事じゃない?俺達も好き勝手やってるんだしイーブンだと思うよ」


≪そうね…ごめん。急に≫


「別にいいよ。ていうか抱え込んでいるなら話せよ。俺達仲間だろ?

一人で解決できることなんてたかが知れてるんだしさ」


俺は別にキャシーを恨んでいない。恨むとしたら俺自身だ。

魔王を倒すと息巻いていながらハンターが楽しいから両親のことは諦めるという薄情極まりない俺自身が責めるべき存在だ


人間も人間なりに充実した日々を過ごしている。

むしろ神様の願いをかなえようとしないことを咎めないのは意外だった


だってそれは自業自得だからとキャシーは思っていたんだな…。

一人で抱え込むな。それは俺自身にも言えるが実践は難しいな


「はいとにかくこの話はそれでおしまい。恨んでる人もいるだろうけど結構いい生活できてるから良いと俺は思うぜ。少なくとも俺は別にな」

≪…そう、本当、良いやつねアンタって≫

「そんなわけないじゃん。結構自分本位だぜ?現にキャシーに結構迷惑かけてるし」


実際マッピングに付き合わせているし。三日徹夜のマッピングの事を思い出す。

今日まで色々あった。両親が魔蝕病に侵されたあと店長にお世話になって


ハンター目指して今仲間に恵まれている。しかも俺は魔人になれるというチートがある。本当に幸せで、本当に生きていてよかったと心から思えて…


―色んな人に助けられて、いろんな人から生きる意味を教えてもらったんだ

―だから返さなきゃいけない。その為の命の消費

―俺の命など二の次。それに価値を見出す意味はない


二つの思いが背反している。矛盾しているのだ。生きていることに歓びを感じその恩を返すために命を使っているという矛盾。その矛盾にまだ気づくことはない

いや、気づいていても進み続けるのが鹿目雄一で魔人に選ばれた所以だろう


だから

人間らしく、人間から遠い憧れのような在り方で

だから

人間ではない、優しく温く溶かすような甘さを持っているから

だから

なのは自明の理だ

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