第14話 モンスターハウス

フィールドに出て遭遇したのはオークの群れ。

振るわれる棍棒を一刀両断しその直線状のオークの胴体を切断し絶命

次撃、人海戦術で俺たちを蹂躙しようとするオークに向け

「天より落ちる稲妻は至王の権能。≪雷魔法ウィアーズ!!≫」

魔法選択コードスキャン炎魔法ヴィリア!」

承認オーダー 炎魔法ヴィリア 現出アクティブ

最大威力の魔法をオークに向けて放ち炎魔法を刀身に宿し魔法剣完成

疾走する体躯は地面を駆り 速度ギア を上げて残ったオークを薙ぎ払う

「ちょっとオーバーキルすぎたかな…」

「ですね…」

大勢のオーク相手に少しビビりすぎたか。花道さんも現在最強威力の魔法を詠唱ありで放ったこともあり倒した後分解されるとはいえ跡形も残っていない

ドロップアイテムを入手。やはり役に立ちそうなものはないので換金。といっても何が欲しいかというのもまだ見当がついていない。ネットで役立ちそうなドロップアイテムを調べても単純に魔石などのレアドロップ品が多くそれらは武器の強化か社会貢献に使う用途がある。一口に魔石と言っても千差万別。数多ある専用武器の中で最も適した魔石も存在しつまるところ俺や花道さんに役立つ魔石というのは俺たちが使って見ないとわからないのでネットがあてにならないのだ。だからこそどのモンスターを倒せばいいか、どの魔石が良いか。切った張ったしたり武器に装備しなければ実際のところ分からない。ある意味共通武器ではないことの弊害だ。似たり寄ったりがない分憶測で判断するしかない

「佳夕さん。魔力は大丈夫?」

一番魔力を消耗する魔法を使ったためMPが大幅に減っただろう

だがその心配は杞憂のようで

「へへん。実は魔力量も上がったのですよ!今ならあと3回は撃てます!」

「すげええええええええええ!!!!もう完璧な魔法使いじゃない!??他パーティーに行かないでよ!!?」

「行きませんよ!??でも完璧だなんて…言いすぎですよ」

いやいや何も誇張じゃない。魔力量がそこまで高いなら立派な魔法使い。賢者も夢ではない。となれば…

「魔法使い系のモンスターを狩ろう」

「え?」

「いくら魔力量が多くても消耗したら撃てなくなるからさ。レアドロップで大気中の魔素を魔力に変換する魔具『ヴィジアグ』を手に入れたらもっといいかもって」

「それより雄一さんの大剣の強化が先では?このパーティーで最高戦力ですし」

「いや、俺よりも佳夕さんの力を上げた方がいい。言いづらいけど佳夕さんの防御力はかなり低いから防具に強化も込みでドロップを狙っていこう」

俺だけなら攻撃も防御も転じれる。だが花道さんは違う。火力は俺より上だがMPがゼロになれば戦う術がなくなる。そしてもし俺が盾になれない状況があれば佳夕さんは恰好の的になる。それだけは避けたい。今は蘇生のアコライトもいない状況では心もとない。

それに納得したのか花道さんはうなずき

「はい…私決めましたから。足手まといにならないって!なのでそれでいきましょう!」

「まあ行きがけの駄賃で俺用の魔石や宝が出てくるかもだしちょっと強い魔物がいる場所に移動しよう」

「はい!」

そう言って俺たちはフィールドを移動。レベルの高い魔法系モンスターのいる場所へ向かう


そして三十分経過し着いた場所が

「なんだか…おどろおどろしいですね…」

「まあ、『魔窟』と呼ばれる場所だからね」

辺り一帯モンスターの骨が散らばる墓場のような場所。それが魔窟

薄暗くここだけ夕方のように暗い。フィールド内は一日中太陽が昇っているのにも関わらず

それは単純にここだけ魔素の濃度が濃ゆい場所だからだ。魔素の霧が上空に立ち込めて光を遮っている

モンスターは分解されるといったがそれはあくまで人が倒した場合でありモンスター同士ならば遺骸は残り風化する。そこから魔素があふれて魔物が寄り付く。これが魔窟の構造だ。もちろんモンスターの骨も立派な戦利品になる。これも一応ドロップ品扱いされ回収は出来る…があえてそうしないのは先述言った通り魔物の死体には魔物が寄り付くからだ。魔窟というのは危険であり逆にハンターにとって効率よく稼げる場所ともいわれる。通称モンスターハウス。ここらで稼ぐハンターも少なくはない。だが初心者で行く無謀ものも少なからずいるわけで…

下手をするとモンスターの死体と同じになってしまうハンターもしばしば

そしてそこにいるモンスターは高濃度の魔素を吸収している為必然的に強く、そして…

「高確率で魔石をドロップする…ってネットに書いてあった」

ソースはネット。うん、だめだな俺。

まあ理屈的に理にかなっているわけだから出会うモンスターもただならぬ雰囲気を持っている

邂逅。現れたモンスターは幸運にも二体。レベル差を感じながらも気圧されることなく俺たちは

「行きますよ雄一さん」

「うん、倒そう」

阿吽の呼吸の如くアイコンタクトなしでモンスターに立ち向かった

コウモリ型のモンスターとヘドロ型のモンスターの二体。役割は俺がコウモリ型で

花道さんがヘドロ型を相手取る

ヘドロ型…というかスライムもどきみたいなやつに名はシュヴィルド

コウモリ型はギャゴリーと画面に映りネット知識を想起する

シュヴィルドは強力なモンスターで本来なら俺が相手をするべきだが

嫌なことにこいつは物理攻撃無効。知ってか知らずか天性の直感からか花道さんは魔法攻撃が通じるシュヴィルドの前に立つ。つまり俺がいても邪魔なだけだ

ギャゴリーは魔法も物理も通じるがコウモリ型なだけあってHPとMPを吸収する『エナジードレイン』を使う為ここでは魔力に意味をなさない俺が戦うしかない

息を吸う。呼吸を一泊し五メートル走り抜ける。先制は俺が取り飛んでいる奴の翼に向け切り上げる。だが

鋼同士が衝突したような金属音と共にはじかれる。

「やっぱつえ~な…」

『GRRRRRRRRR…』

レベルは相手が上なためか特にギャゴリーに警戒心はない

見定めるように静かに低くうなりながら俺を見ている

感心がない為即座に攻撃しない。その為一瞥で花道さんを見る

「光よ、我を見よ。汝が見据える先にこそ我はあり。故に我こそ光なり

『≪光魔法アンメル!!≫』」

どうやら光魔法も習得していららしく魔障を照らす光がシュヴィルドに向けて降り注ぐ。光魔法は魔素の総量に応じて威力が上がる魔法。魔素を吸収した魔窟の魔物はひとたまりもない。

しかし

「え?嘘…」

逆にアンメルの光をシュヴィルドは吸収し血肉に変える

不味いな…先走りすぎたか…

今の俺達ではこいつらを倒せない。なので

「撤退しよう佳夕さん」

「そうですね!本当にお強いですこのモンスターさんたち!!」

俺たちに感心を抱かない内に逃走。結局魔石は取れず換金のみだったが俺たちはポータルへ帰還した



「マジで強かったねあの魔物…いやアンメル吸収するとか卑怯だろ」

特に収穫がないまま帰還し現実世界に帰って共に帰路に向かう

魔法を吸収するモンスターは確かにいるけど…あそこはまだ初心者ゾーンだぞ?

改めてハンターの厳しさを俺は身をもって知った

「確か持っている魔素の分ダメージを与える魔法でしたよね?たくさん持ってそうでしたけどどうして効かなかったのでしょうか?」

「うん。身もふたもないけど…レベル差だね。威力云々じゃなくて単純に効くレベルまで至っていなかったから吸収されたんだと思う。でもシュヴィルドってそんな能力持ってたっけ?」

≪ないわ。ただ魔物は弱い力を吸収する特性をもってるだけ。つまり餌としか見てなかったのね≫

『それ花道さんに聞こえてないよね?聞こえたらかなり辛らつなこと言ってるからねキャシー?』

「?」

ぼそぼそとキャシーとチャットし弱いだとかエサとしか見てなかったとかそんな辛らつな言葉を毒づくキャシーに向けて俺は聞こえないようチャット機能で言う

もちろん聞こえてないようで首をかしげる花道さん

≪事実は受け入れた方がいいわ。あのレベルは貴方たちには厳しすぎる。

ハンターに必要なファクターよ≫

『そうだけどさ…俺ならともかく花道さんにはやめて…ね?』

≪女に甘いわねアンタ。もちろん言うつもりはないわ。聞こえないし

それよりも今後はレベル上げに専念することね≫

『はいほーい』

≪アンタ私相手だと毎回ふざけるわね…≫

そういってチャット機能を切り花道さんに今後の方針を伝える

「多分そっちのフェアリーも言っているかもだけど魔窟は俺達には早すぎるみたい

だから今後は地道に行こうと思う」

「賛成です!いのちをだいじに。ですね!」

「そう、ガンガンいこうぜ。はダメだね!!」

そう談笑して初陣は失敗したがいい経験を手にして満足して俺たちは各々別れを告げた

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