第12話 プラバンの型を取る

「まずはじめに。プラバンをどんな形にしたいか決めていくよ」


 僕達はオレンジジュースのグラスを端に寄せて、作業を始めた。

 そう言って渡されたのは……ペラペラのプラスチック板だった。


「え?これで作るの?明らかに材質が違うよね?」


 僕はお手本である星のヘアゴムをさわる。木村さんも板とヘアゴムを交互に見て、驚いた顔をしていた。巧はというとプラスチックの板をうちわのようにあおいでいる。……真面目にやれよ!と非難するような視線を向けると、巧は手を止めた。


「プラスチックが縮むことでこんな風に、硬くなるんだ」

「縮む?このペラペラが?まさか……魔法?」

「ううん。オーブントースターの熱で縮むんだよ」


 僕が感動していると藤咲さんが笑いながら否定する。


「正確には縮んでるんじゃなくて、元の大きさに戻っただけなんだって。私達が加工するためにペラペラなの」


 僕達はへえーとかふうんと、それぞれ相槌あいづちをうつとプラバンに視線を落とした。


「実際に絵をかいてもいいんだけど……今日は皆初めてだから型紙通りに形を作った後で色付けをしていく感じにしようと思うの」


 藤咲さんは厚紙で作られた星やハート、猫やクマ……いろんな型紙を作業台の上に広げてくれた。


「それにしても型紙ってこんなに大きいんだ……」

「プラバンは大体四分の一ぐらい縮むから、計算して型紙を作るんだよ」

「そんなに縮むの?」


 僕は純粋に驚いた。実際に縮むプラバンを見ていないからそんなに縮むなんて信じられない。


「助かったわー。俺、全然絵描けないから」


 巧がわははと楽しそうに笑う。


「デカ野郎がマホみたいに作れるわけねーだろ」


 巧の手から逃れたノアは藤咲さんの肩の上に座っていた。


「ああ?そんなのやってみねえと分からないだろう?」


 巧も負けじとノアをにらむ。巧とノアの間に火花が散った。その様子を見て木村さんが怯えた表情を見せる。見かねた藤咲さんがツンっとした表情で言った。


「ノア。大人しくしてないと火石君の隣にいてもらうことにするよ」

「ふんっ。仕方ないから今日のところは監視するだけにしておいてやる!」


 ノアが藤咲さんの肩に乗って強がるので僕は笑ってしまった。つられて木村さんと巧も笑う。


「好きな型を選んで。ハサミで切って形を作ってね」


 藤咲さんが両手を重ねて楽しそうに言った。

 僕らはそれぞれ型紙を選ぶと、ハサミでペラペラのプラバンを切り取り始める。ここまで何も難しいことはない。


「それじゃあ次はプラバンを縮めていくよ。……はいっ。皆これを手にはめてね」


 手渡されたのは……軍手だった。一体何に使うんだろう。


「ここからはスピード命でちょっと危ないから……。心しておいてね」


 藤咲さんの真剣な表情に僕は息を呑んだ。

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