恐れるな 季節外れの 肝試し

──────




知ってるー?苫祖とまそ中学校って、魑魅魍魎ちみもーりょー温床おんしょーらしいよー?


絃葉いとは】怖がらない

めい】怖がらない

小霧さぎり】怖がらない

八葵やつき】怖がらない


悠心ゆうみ】オーバーに怖がることはないが、内心普通にビビり散らかしている時はある。




──────




[絃葉]「─?悠心?」


[悠心]「……ん?どうした?」


[絃葉]「いや、すっごいボーッとしてたから。大丈夫?寒い?」


[八葵]「寒かったら目ぇ冴えるんじゃ?」


[小霧]「どーせ楽しみで寝られなかったんでしょー。うりうりー。」


[悠心]「……?なあ、私たち、どこに向かってるんだ?」


[八葵]「え?忘れちゃった?……さぎ!」


[小霧]「任されたー。……肝試しだよー。」


[悠心]「なんでこんな盛冬に……」


[命]「秋ちゃんが言い出したんだよ。」


[悠心]「……私が?」


[八葵]「君らが行ってた中学校……苫祖とまそ中学だっけ。って、相当ウワサがあるらしいね。私は全然知らないけど。」


[小霧]「そうなんですよー。」


[絃葉]「進級決まって暇だから行こう!って言ったの悠心じゃん!」


[悠心]「記憶にないなあ‪……」


[八葵]「まあ出かけ始めちゃったし仕方ない!季節外れの肝試しを楽しもうじゃないか。」


[小霧]「お、そろそろ着くよー。」


[悠心]「あれ、校舎こんな形だっけか。というかあれ?苫祖とまそ中学校……?」


[命]「2年も来ないと忘れちゃうよね……」


[絃葉]「ていうか人通り少なくない!?ちょっと流石に5人きりは怖いんだけど‪……」


[小霧]「……5人じゃないかもよー?」


[絃葉]「ワ゚ー!!!!!!」


[悠心]「おい待て絃葉!一人で行ったら危ないぞ!もう夜なんだ、し……?」


[八葵]「?どしたん悠心?」


[悠心]「……あれ?いや、さっきまで昼じゃなかったか?」


[八葵]「怖いこと言うなあ悠心は。そんなわけないじゃん。家出た時から夜だったよ。」


[悠心]「それはそれでどうなんだ。女子高生5人で夜に出かけるのはどうなんだ。」


[命]「大丈夫だよ」


[小霧]「大丈夫だよ」


[八葵]「大丈夫だよ」


[悠心]「そうだな。まあ、大丈夫か……?」


~~~~~~


[絃葉]「安心してください!掃いてますよ!」


[小霧]「アイムクリーニーング?」


[八葵]「アーンプ!!!」


[三馬鹿]「(爆笑)」


[悠心]「命、あのあほ共置いて帰らないか?」


[命]「せっかく来たんだしまだ■んでないんだし、もうちょっと居ようよ。……ほら、コレとか懐かしいよ?」


[悠心]「?おお、懐か‪……しくない。懐かしくない。なんだコレ。」


[命]「?歴代の用務員さんの写真だよ?」


[悠心]「ここは音楽室だから貼るべきなのは音楽家の写真だし、それなら百歩譲って校長の写真だろ。確かに用務員さんも大事だが……」


[八葵]「それにしても出ないねぇ。8代用務員の怨霊。」


[小霧]「ここでしか見られないはずなのにー。」


[悠心]「なんで音楽室に幽閉されてるんだ?」


[絃葉]「その謎を解くことが用務員さんをここから解き放つために必要なんだとか……」


[八葵]「時間があったら今日してたんだけどなあ。」


[小霧]「めんどくさいんでパスでー。」


[悠心]「薄情じゃないか?」


[命]「…………」


~~~~~~


[八葵]「見てみて絃葉、。」


[絃葉]「やっちゃんそれ触っちゃダメだよ!?多分すっごい汚い!」


[小霧]「何年ものだろうねこりゃー。」


[命]「近所に屋内プールができたから、使われなくなっちゃったんだよね。5年前くらいからだったかな?」


[悠心]「ん?5年前?私らこのプール使ってなかったか?その辺で絃葉と小霧が一緒に足攣ってたろ。」


[絃葉・小霧]「うん!そうだよ!」


[悠心]「なんでそんなにニッコニコなんだよ。」


[八葵]「あ、ここからあそこ見えるじゃん。」


[命]「あ、ほんとだ、見えるね。」


[悠心]「何がだよ。」


[命・八葵]「時計」


[悠心]「げ、2:22じゃねーか。丑三つ時でゾロ目……」


[八葵]「行こっか」


[悠心]「行くって、どこにだよ。」


[命]「行こっか」


[悠心]「……あの時計のとこか?屋上だぞ?多分鍵閉まってるぞ?」


[小霧]「あ、鍵ならあるよ」


[絃葉]「音楽室に落ちてた」


[悠心]「防犯意識どうなってんだ。……あれ?というかなんで私たち学校ココに入れてるんだ?昇降口にも鍵ってあるよな?」


[絃葉]「こじ開けた」


[悠心]「こじ開けるな。日が明けたら謝りに

もう一回もっかい来るからな。」


[絃葉]「うん!」


[命]「うん!」


[小霧]「うん!」


[八葵]「うん!」


[悠心]「なんでおまえらも?しかしえらく返事がいいな……ニッコニコだし。」


~~~~~~


[八葵]「お〜!結構景色良いね。」


[悠心]「そうだな。割とちゃんと夜景してる。おーいおまえら、フェンス無いから気をつけろよ。落ちたら洒落になんねーぞ。」


[小霧]「あ、わたしの家あったー。」


[絃葉]「わたしもあった!メイちゃんの家はどこだろう?」


[命]「私の家は……あ、あの辺り。薬局が近くにあるから分かりやすいよ。」


[絃葉]「悠心の家はどこだっけ?」


[悠心]「はあ?何言ってんだおまえ。わざわざ言わなくても分かるだろ。」


[絃葉]「分かんない」


[悠心]「自分で思い出せ。私は夜景に浸ってるからな〜。」


[絃葉]「…………」


~~~~~~


[悠心]「さて。もういい時間……というか元からいい時間だったな。そろそろ帰るか。」


[八葵]「だねぇ。じゃ、帰ろっか。」


[悠心]「あ、命。鍵おまえが持ってたよな。鍵返しに行──めい!!!」


《屋上の淵から落ちる命》


[悠心]「あ……あ、命!命!?おい!大丈夫か!?ああくそ!そこ動くなよ!傷開くから絶対動くんじゃ──」


《同じように落ちる小霧》


[悠心]「……は!?ぁ、おい!おいぎ……

小霧さぎり!?」


[絃葉?]「いや、すごいボーッとしてたから。大丈夫?寒い?」


[八葵?]「怖いこと言うなあ悠心は。そんなわけないじゃん。家出た時から夜だったよ」


[悠心]「おい絃葉!八葵!救急車呼ぶぞ!ここ割と病院近いだろ!すぐ呼んだらまだ助か──」


《同じように落ちる絃葉・八葵》


[悠心]「は……!?……ぅ゙、」


《吐瀉物を撒き散らす悠心》


[悠心]「ぉ゙え゙……あ゙、救、救急車……!」


《無機質なコール音》


[119?]『……ここは音楽室だから貼るべきなのは音楽家の写真だし、音楽室に落ちてた!あ、わたしの家あったー。今日してたんだけどなあ。まだ■んでないんだし』


[悠心]「はぁ!?おい!ふざけてんのか!?」


[絃葉?]「心心心心心心心心みみみみみみみみ大大だだだだだだ大丈夫?寒い、寒い寒い寒い寒い寒い寒い」


[悠心]「は、え?い、絃葉おまえ今、落ちて……大丈夫か……?首、変なほうに曲がって……」


[八葵?]「忘れちゃった?忘れちゃ忘れ忘れ忘忘忘忘れ忘たたたた忘れた忘れた忘れ」


[悠心]「八葵……?おまえ、おまえも今、下に、真っ赤で、え、あれ……?」


[小霧?]「何年何年何年何年何何何何何何」


[命?]「■んでない■んでない■んでない■んで■んで■んで■んで■んで■んで■んで」


[悠心]「は……?あ、あ?ぁ、ぅ゙……」


[絃葉?・命?・小霧?・八葵?]「■んで■んで■んで■んで■んで■んで■んで■ね■ね■ね■ね■ね■


~~~~~~


[悠心]「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


《きゅうりを見た猫のように飛び上がる小霧》


[絃葉]「うわぁ何なに!?虫!?虫かな!?」


[悠心]「あ……絃葉、生きてる……(人目を憚らない全力ハグ)」


[絃葉]「😮→😳→😄→😇」


[小霧]「死んだんじゃないかー?」


[悠心]「絃葉、死ぬのか……?」


[絃葉]「死なない死なない!寿命ゴッソリ伸びたからむしろ長生きコース一直線だよ!!!」


[悠心]「よかった……」


[八葵]「いやー、ビクッたあ……悠心、大丈夫?変な夢でも見た?」


[悠心]「……ちょっと嫌な夢。」


[命]「本当にちょっと?秋ちゃん、だいぶ顔色悪いよ……?」


[悠心]「…………だいぶ嫌な夢。」


[小霧]「もー。これから肝試し行くってのにー。先に怖がってちゃーテンションがねー。」


[悠心]「……は?肝試し?」


[八葵]「ほらほら、君らが通ってた中学校あるじゃん。苫祖とまそ中学。そこって昔から肝試しの聖地なんでしょ?」


[小霧]「あれー?最初に肝試ししたいって言ったのゆーみじゃなかったー?それにわたしが苫中とまちゅーを推薦したはずなんだけどー?」


[悠心]「……私らが通ってたのは母衣ほろ第三中学校だろ。どこだよ。どこにあるんだよその苫祖とまそ中学校ってのは。」


[命]「えっ?ほら、小霧とやっちゃんの家からもう少し向こうに行った場所にある──」


[悠心]「中学に通うのにそんな遠くまでは行った憶えはない。母衣ほろ第三中学校は命の家の近くだろ。隣にあったコンビニでよく色々買い食いして帰ってただろ?」


[絃葉]「あれ?学校とメイちゃんの近くにあるのって薬局じゃなかった?」


[悠心]「薬局にホットスナックは売ってねーよ。おまえがいちばんよく買ってたろ。薬局は誰の家の近くにもない。」


[絃葉]「……あれ、そうだ!そうだよね!ほんとだ、苫祖とまそ中学校ってどこ?何?なんで?勘違い……?でもわたしだけじゃなくて悠心以外みんな……?」


[八葵]「う〜む、どっちもしっくりこないが。」


[小霧]「……やっちー、ゆーみの言い分が正しいですぜー。思い返せばわたし、苫中とまちゅーなんて学校知らないやー。」


[命]「3年間通ってた気がしたんだけど……。登下校のルートも、時間割も、校庭の広さも知って……あれ、知らない。何も分からない……」


[悠心]「……とにかく、今日の肝試しは中止だ。あと今日は誰か私を家に泊めてくれ。」


[八葵]「あ、そいじゃあ久しぶりにお泊まり会でも開きますか。せっかくこの後全員予定空いてるんだしね。」


[悠心]「ひっ」


[八葵]「どしたん悠心。」


[悠心]「いや、なんでも……」


[小霧]「やったーお泊まり会だー!」


[絃葉]「久しぶりだね!誰の家に集まる?」


[悠心]「……誰の家でもいい。今日家に誰もいないんだ。なんか私の家で独りで寝るのが怖いだけだから。おまえらと寝れるなら、誰の家でもいい。」


[絃葉]「可愛すぎない?」


[命]「ふふ。じゃあ秋ちゃん囲んで寝よっか。」


[小霧]「かーわいー。撫でなでしながら寝かせてあげよー。」


[八葵]「ぎゅーっと抱きしめてあげようじゃないか。」


[悠心]「……いいぞ。」


[絃葉]「それはダメ!NTR判定!😡阿修羅イックスマイル


[小霧]「NTRに厳しい雨ちーだー。」


[八葵]「そんな顔しなくても……」


[命]「あはは……」




──────




怖いものへの耐性って割と線引きが難しいですよね。状況によって変わったりもしますし。


悠心ゆうみ】スンとしているが割かし怖がり。表には出さないことが多いが、ちゃんとしっかりビックリしている。

絃葉いとは】ザ・怖がり。心霊番組は家族か友達がいないと見られないし、怖い話を聞く時は薄目&耳に手を当てて臨んでいる。

めい】肝が座っている&弟妹がいる環境によって、並大抵の心霊番組では驚かないパワーを持っている。

小霧さぎり】小さい頃はちょっと視えてた。だから余程じゃないと生身の彼らは怖くない。やはり猫か?猫なのかきみは……?

八葵やつき】生まれ持った好奇心ゆえに首を突っ込むことがよくあるが、性根は怖がりなのでその好奇心を少しばかり恨んでいる。




──────




【ひとこと】

わァ、ァ。吐いちゃった。悠心かわいそう……。

でも悠心に魅入った霊を追い出そうとする霊が予知夢のようなかたちでこの夢を見せてくれたおかげで、5人はしっかり救われました。

(悠心だけは結構なトラウマを負いましたが……)


今後は変な霊に魅入られないようにしようね。




【宣伝】

本日の21:30に新作が投稿されます!

本作と同じ形式(ボイスドラマボイス無し)で進む物語です!(※本作よりも遅筆です)

本当に気まぐれにしか更新できませんが、是非見て頂けると嬉しいです!

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