穂乃果 3

私は新幹線に乗って紗季を追いかけます。


新幹線はとても速いです。

気がつくと、もう小倉こくらに着いていました。


ここで紗季を探し出し、彼女がやろうとしていることをやめさせなくてはいけません。

この小倉のどこかにいるはずです。

行き先は、だいたい見当がついています。



一年ぶりの故郷はとても懐かしく、ただの住宅街を見ているだけなのに、次々に思い出が蘇ってきました。



私は紗季の実家に着きました。

チャイムを鳴らしてみます。


反応がありません。


紗季は、自分の親に会いに行ったに違いありません。

そう確信して、私はここにやって来たのですが……


私はのんびりしすぎていたのかも知れません。

ドアノブを回してみます。

すると、鍵はかかっていませんでした。


思い切って中に入ってみることにします。



!!



遅すぎました。



居間の入口近くに、紗季の父親が倒れていました。

台所には紗季の母親が倒れていて、タバコの吸殻や灰が床に飛び散っていました。

二人とも血だらけでした。何度も刃物で刺されたのでしょう。

部屋中に血が飛び散り、壁も床も真っ赤に染まっていました。

紗季の両親は、体中を包丁で切り刻まれ、息絶えていました。

足元には、うちの包丁が落ちています。



私は紗季の凶行をやめさせることができませんでした……



ここにいてはいけない。

不安になった私は急いで駅前に戻りました。


* * *


気がつくと、かなりの時間が経っていました。

九州は西にあるので、なかなか日が沈まないのです。

辺りはまだ薄明るいのですが、時計を見てみると、予想以上に遅い時間だったりします。



まずは、泊まるところを探さなくては……

ビジネスホテルにするか、おしゃれなシティーホテルにするか迷いましたが、私にはこの機会に地元でしたいことがありました。

なので、値段は張りましたがおしゃれなホテルに泊まることにしました。


私はスーツケースを引きながらホテルへと向かいました。


チェックインを済ませ、部屋のベッドに腰掛けます。

内装はおしゃれで、このホテルにしてよかったと思いました。



ベッドに腰を下ろし、私は今日の惨状に思いを巡らせました。

あんな無惨な光景を見ることになるとは……

紗季を追いかけて九州まで来たのに、そして、彼女がやろうとしていたことは分かっていたのに、私は無力でした。



何のために、私はここまで来たんだろう……



テレビをつけてみると、九州ローカルのCMが流れています。

私は今、地元にいるんだ。


携帯電話を取り出して、高校時代の仲間にかけてみました。


「あ、拓也たくやくん? うん、久しぶり! 今、小倉に帰ってきたんだけど、会わない?」


せっかくのおしゃれなホテルなので、このホテルのレストランで拓也くんに会うことにしました。

拓也くんは言いました。


香織かおりにも伝えておかないと……」


香織ちゃん……


高校時代の嫌な思い出が蘇ってしまいました。


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