not my business,but ③



「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「うるせぇなぁ。男の子だろ?」


 根元から無くなってしまった右足の傷口を抑え、絶叫する男へ俺は後ろ髪を掻きながら近づく。


「ぐぅぅぅっ!な、なにが起きたんだ!?どうして、こんなぁ…!!」


  泣きわめく魔人を無視し、スキャンを使う。


「よかったなぁ。助けは来ないみたいだ。二人っきりだぜ?」


 笑って、血だまりを歩く。


「ひっ…!い、いやだ!死にたくなぁい!助けてくれ、せめて命だけはぁ!!」


「ハハッ!笑わせんなよ。お前だってそんな風に泣きわめく女子供をさっきまで散々殺してきたんだろ?仲間と離れてまで小さな子供追い立てて、こんな所まで殺しに来たんじゃねぇか?えぇ?」


「そ、それはぁ…!」


「兎でもおったててるつもりだったか?狩りは楽しかったか?」


「ぐぅぅぅ!森人を、エルフを狩って何が悪い!?奴隷になるくらいしか、こいつらには価値なんかないんだよぉ!!」


「へぇ?どうなのライア?これは一般的な価値観?」


 俺の家庭教師みたいなポジションになってきているライアを見ると、治療が終わって子供に自身が着ていたコートを着せていた。


「いえ、かなり偏った価値観ですね。同じ魔人でも、友好条約を結んでいる『魔界』の国民であれば、そのような考えにはならないはずですが」


「だってさ。お前はどこの魔人なの?」


「そ、それは……」


 男が目を背けたので、俺は男の胸を強く踏んだ。

 すると、甲冑が歪んで骨の軋む音が響く。


「がぁっ!?」


「どこの魔人?あーゆーふろむ?」


「言う…!言うからっ、離してっ…し、死んじゃう…」


 足を退けてやると、男は大きくせき込んだ。


「ごほっ!けほっ!お、俺は……『瘴国』だ。瘴国の…兵士だ」


「どうせ002はわからないと思うので説明しますが、瘴国は『魔人主要三か国』に数えられる、ここからかなり離れた魔人の国です。治安が非常に悪く、犯罪の温床でありながら、交易路の中心として経済的に発展している国ですね」


 もはや先読みするようになってしまったライアの解説によって、俺の理解もスムーズとなる。


「なるほど?で、遠路はるばるお前らはどうしてここまで来た?」


「それは……ど、奴隷を、確保するためだ。女の森人を攫って売る。男も八割は殺すが、一部はモルモットとして国に献上する。それ以外は好きに殺していいと、命じられて…」


「誰に?」


「た、隊長だ。だが、隊長もさらに上に命じられてここまで来た。俺たちはただの下っ端で、作戦中は一時的に解雇されている。有事の際には簡単に責任を押し付けられて捨てられるだけの、寄せ集めなんだ。頼む、見逃してくれ!」


「ふーむ……どう思う、ライア?」


「そうですね、あまり首を突っ込まない方が良い事案かも知れません。これが瘴国兵士の独断ならまだしも、国が黙認している、あるいは主導で行っている人攫いなら、かなり大きい案件です」


「だよなぁ。こいつら明らかに身分隠してやってたし、明るみになれば戦争になるような事態じゃないか?」


「ですね。まぁ瘴国はその程度意に介さないかもしれませんが」


 どの程度の規模間なのかも俺にはよくわからんが、今かなりまずい案件に巻き込まれたようだ。


「そ、そうだぞっ!俺を、ここで殺せば、お前らだって危ないだろ!?今ならまだ、便宜を図ってやる!だから……!」


「いやいや、ここで起きた事まだ誰も知らないんだから、お前を殺せばそれが一番安全じゃね?」


「…………へ?」


 キョトンと固まったその鉄の仮面に、俺は容赦なく弾丸をぶち込んだ。

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