第89話説得
元中央銀行 下井田と2人
一旦落ち着いてもらう為に お茶を用意
「とりあえず落ち着いて話をしましょう。
貴方が最後に どう決断するかは自由ですし
何より一度は直接 話してみたかったんです」
下井田「何故 私なんですか? こんな老いぼれよりも若く優秀な人材 総理なら いくらでも呼び出せる。私の様な国民の敵と叩かれる人間に会うべきではない…」
「そうかもしれませんね…ただ少なくとも今の私は貴方を国民の敵だとは思ってはいません。
理由はいくつかありますが まず過去の国会中継を観て気づいたのは 貴方はカンペを ほぼ見ていなかった。 学歴だけで実は金融リテラシーの低い議員の質問に対しても相手のレベルになるべく合わせて丁寧に その場で自分の頭で考え答弁していました。 議員が出来ていないことを貴方は出来ていた。 それだけでも貴方は優秀な方なんだと尊敬しました。他にも色々ありますが何よりも私の目には貴方が悪い人間には全く見えなかった。自分の私利私欲の為に総裁を務めているようには見えない…ただ毎回 苦しそうな顔をしている様に見えました。
本来 中央銀行や国税庁など中立な立場であるべきですが実際は政府の子会社みたいなもの…
結果 上司に逆らえないから こんな国になった…貴方は総裁なのに中間管理職みたいなもので政治家からも国民からも叩かれて大変だったと思います…しかし正確には中央銀行の仕事は 物価の安定であり物価高の責任は貴方だとしてもYEN安については政府 財務の責任です…それなのに全て貴方の責任になったのは何故でしょうか?」
下井田「当時の物価高はYEN安によるものが大きかったからです」
「私も同意見です。しかし それも少し勘違いしている国民が多いと思います。例えYEN高に戻ったとしても物価は上がります。 デフレでもインフレでも物価は上がる… スピードの問題です。YEN高に戻って原材料価格が落ち着いても働き手が足りない状態では 少なくとも会社 企業は人員確保の為に賃金を上げます。公務員や大企業が賃金アップするなら いずれは中小企業も上げるしかない…そうなれば原材料ではなく人件費分の価格転嫁しなければ会社は潰れる。YEN安さえ止めれば物価高インフレが収まると勘違いしている国民もいる…賃金アップはサービス料アップになる。
例え1$160YENが金融ショックが おきて急激なYEN高で1$120〜130YENに一時的になったとしても以前よりはYEN安であることに変わりはない…さらに賃金上昇によるサービス料金値上げで多少スピードは抑えられても物価高は止まりません。YEN高=物価安定にはならない事を当時 理解出来ていた人はどれだけいたでしょうか?」
下井田「そうですね…さらに世界中で現金 紙幣は刷り続けられ増えていますから現金の価値は下がり続けます…他にも我々の国は40年の間 ほとんど成長してきていません…その間 発展途上国は成長しています。 我々と同じ様に自分の身の丈に合った生活をおくるのが自然です…生活レベルが上がれば今まで食べれなかった高級食材なども食べる様になる。そうなれば食材の奪い合い。競り合いによっても金額は上がります。」
「さすがですね。…って上から偉そうに すいません…」
下井田「ハッハッハ 貴方が総理です」
「あ〜良かったです…やっと笑ってもらえました。ハッハッハ
これで少し話しやすくなりました。
私は貴方を責めるつもりはありません…あの状態から引き継いだ貴方の勇気は素晴らしいです。 」
下井田「いえ…厳しい状態でしたが多少なりとも私が立て直せると考えていました…しかし結果は ご存知の通りかと…」
「はい…貴方はマイナス金利解除と利上げを実行しました。 結果は悲惨です…体力のない中小企業は どんどん潰れ金利上昇により住宅ローン返済出来ずに路上生活に追い込まれた人々…
これだけ見れば貴方は大罪人です…恨まれて当然…では何故こうなったのか? を考えなくてはダメですね!
では私の見解を話ます。
まず マイナス金利 異次元金融緩和に ついてですが私は全否定はしません。私が言うマイナス金利政策の失敗は 結果論ですね… ざっくりですが金利が ほぼないので企業は設備投資と人材育成など従業員への投資をしてくださいねって政策だと思います。しかし結果は企業は どちらにも投資せず貯金と上級国民株主に還元ばかり…政治家との癒着…資金パーティー…金持ちだけで お金のやり取りをして失敗したと思います…本来 異次元金融緩和など こんな異次元って極端な事を すれば いずれは異次元の反動が来て当然で 国が そんな 一か八か みたいな政策するべきではないと思います…しかし それでは否定だけ…もしも不正がなく国(政治家)と企業と国民(従業員) それぞれに正しく投資されて円滑に お金が回っていれば 可能性はあったかと思います」
下井田「そもそもはデフレからの脱却と低い経済成長率 を上げる為に開始されました。 理論的には可能かと思いますが お金は循環させなければいけません。」
「では失敗の理由は企業と国で止まり国民に
お金が回らない ずっと給料が上がらない状態が続いていたからですね…」
下井田「どこかで止まれば机上の空論になります。何より大切なのは経済成長です…
国の稼ぐ力が年々衰えていては上手くいきません」
「そうですね…結局は貿易黒字国に戻さないといけません。赤字が続く限り国の復興なんて有り得ない…話を戻すと このマイナス金利政策は失敗しました…ならば いつまでも続けていてはダメなので貴方が この政策をヤメた事は正しい…しかし経済成長してもいないのに この国がインフレになったのは戦争やパンデミックの外部要因で当時マイナス金利を解除するべきでは なかったのかもしれません…本来 金利を上げれば経済は冷え再びデフレに戻る
金利を下げれば加熱してインフレになるもの…当時の急激な物価高とYEN安を止める方法も経済成長していないと為替介入で時間を稼ぐか
金利を上げるしか止められない…恐らく誰が
やっても無理ゲーってやつです…貴方が引き継いだ時点で ほぼ負けが確定していたゲームで全ての責任を貴方に押し付ける国が一番悪いと私は思います…もちろん それでも総裁を引き受けた貴方にも責任はありますが…」
下井田「はい…YEN安と物価高を止めるには世界的なインフレが収まるまで時間を稼ぐか自国の金利を上げるしか方法は ありませんでした」
「その結果 貧しい庶民が犠牲になりました。
金利がない世界の方が不自然ですが金利を上げるからには国と連携して何か別の方法で住宅ローン返済出来ず家を失う国民が続出する前に救うべきでした。」
下井田「はい…しかしマイナス金利政策の結果 いわゆるゾンビ企業と言うものも生まれました」
「確かに…稼ぐ力がない企業も金利がないおかげで生き残りました。
効率の悪い 仕事の為の仕事をしている会社は
沢山あります…
本来0.25〜1%の金利上昇くらいで潰れる会社は経営が成り立っていない…しかし これは経営者が悪いのかマイナス金利政策を続けた国が悪いのか私には わかりません…
どこまでを救うのかの線引きは確かに難しいです。
ただ…
下井田さん…税金って言うのは増えすぎた現金を回収して価値を下げない様にバランスをとる事と税金を納めてくれる代わりに国は他国からの侵略や国内での国民の生活を守ります!
と言うものだと私は考えています。
この場合 本来 国が犠牲になるべき場面でした。他国ではパンデミック時この国の40倍ほど国民に お金を配った国もあります…結果的にインフレに各国苦しみましたが最初に国民が犠牲になるべきではない!
貴方にも少なからず責任はあります…私のお願いは大した事ではないですが このまま皆に恨まれて人生を終えるより少しでも挽回出来るかもしれません…貴方の成果次第では逆転も有り得ると思います。」
下井田「…………」
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