怪盗業

Grisly

怪盗業

怪盗ニールは、急いで帰宅した。

手には、盗んで来た

時価総額8億円のダイヤモンド、蒼い瞳が。


彼が急いでいたのは、

この宝石を保護するためでも、

警察から逃げ切り、

安心するためでもなかった。


株券のトレード。

ただそのためだけである。


若気の至りというもの。

20年前、彼は盗んだ物の全てを

孤児院に寄付すると約束してしまったのだ。


景気の良かった昔ならともかく、

今となっては、支援者は減っていく一方。


かと言って、

どこに目があるか分からない、SNS時代。

盗んだ物を売り捌く訳にもいかず、


アルバイトをしようにも足がつき、

毎月の食費、家賃に加え、

莫大な変装代がかかるのだ。

生活は苦しくなっていく一方。


盗品の一部を着服することも考えたが、

今や怪盗にも好感度を求める時代。

更に支援者が減ることを考えれば、

それもできず…


不便な時代になってしまった。

しかし、その好感度こそ、

怪盗が怪盗であるオリジナリティ。

泥棒や強盗との差別化を図ってきた訳であり

怪盗自体が、

この不便な時代を始めたともいえるのだ。


8億円の手に入らないダイヤを見つめ、

彼は溜息をつき、独り言を。

クラウドファウンディングでも始めるか…





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怪盗業 Grisly @grisly

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