第14話 アラサー王子は夢が無い
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言いたい事だけ叫んで、はあ、と息を吐いて、まだつかまったままの部長の手を借りて立ち上がれば、ヒールが片方脱げていた。
「もう・・・カッコ悪い・・・」
俯いて呟けば部長がふっと笑って、上を見れば「ちょっと待ってろ」と言って手を離し私の、レンガの隙間にきっちり嵌まり込んだヒールを取ってくれた。
そして。
「ほら、肩につかまっていいから」
そう言って足元に靴を置いてくれる。
「・・・王子ですね」
「ぶ、っは! 成り行きだろ。 誰かさんがヒール置き去りにすっから」
「・・・それも部長のせいだもん・・・」
転んで靴が脱げるなんて子供みたいで恥ずかしくて恥ずかしくて、この際全部部長のせいだなんて八つ当たりもいいとこ。
なのに部長はずっと笑ってる。
「はいはい。なんでもいいから靴履いてシンデレラ」
「っ!!///」
ちょっ・・・!!
「桜城さ・・っ!」
笑い含みながらもとんでもない台詞を吐きスッと跪いた部長が、私の細くない足首を持ってヒールを履かせてくれて
「この靴にピッタリな足の持ち主が私の花嫁です、ってか(笑)
ありふれた普通サイズだったらどうだったんだろな?」
私が立ち上がったら、小さな女の子の夢をぶち壊すようなことをへらっと言った。
「・・・私、その普通サイズですよ。ジャスト24センチ。女子の平均くらい。
靴が基準なら人違いされる事確実ですね」
「バカな探し方だよなあ。俺なら城に全員呼ぶね。
一緒に踊ったんだから顔見てんだし。それとも足フェチなのかね?(笑)」
見た目王子なのに、この物言い・・・。
「部長、子供の夢が粉々に壊れてますよ」
会社の、部長に憧れてる女子達の夢も壊れるな。
・・・そっちはどんどん壊れてくれって思うけど。
「え? だって思わねえ? 俺なら確実な方法を選ぶわ。・・・好きな奴なら、絶対間違えたりしねえよ」
急に真顔で見つめられて、言葉を失う。
「部長・・・」
「あー・・・せっかくカッコ付けたのに。役職呼びって色気ねえ(笑)」
「だって、部長ですし・・・」
昔、指導係だった時は苗字呼びだったけど、それからあれよあれよと出世したこの人を私だけ苗字呼びなんて、会社で特に女子の目があるところで許されるわけもなく。
「会社出たら、部長呼び禁止な。俺も薫って呼ぶ。・・・いい?」
いいのかな・・って思いながらも頷くと桜城さんは満足そうに笑い、「じゃ、帰るか」と私の手を取った。
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