第6話 学校改革

「先生、ラパスの様子はどうですか?」


「ラパス君は、正義感が強くて、弁が立ち、統率力があります。加えて、自己犠牲を厭わない勇気がありますね。」


こわすぎる。

バッチリこれまでの前世を踏襲しているじゃないか。



「先生。もっと、優しくて、仲間思いで、多様性に寛容で、じっくり話し合いで解決できるような温和な子になりませんかね。」


「やってはみますが、もって生まれた気質もありますからね。ご家庭でも働きかけてください。」


校舎からラパスが出てきたので、手を繋いで帰った。




「今日は友達が三人できました。明日、放課後遊びに行ってもいいですか?」


「ああ、いいよ。ところでラパス、友達と友達でない子の差は何だ?」


「話した子は友達です。まだ話してない子は友達ではありません。」


「そうか。それでもいいが、我々魔族はこんな考え方がある。」


ラパスは魔王の顔を見上げた。



「私たちは、元々一つの命から生まれた。そこから枝分かれして今がある。だから、我々は最初からみんな兄弟なのだ。その中で、近い仲、遠い仲はあるが、前提は兄弟みんな仲良くだ。だから、話してない子も、最初から友達といえる。」


「はい、わかりました。」


「あと、何があっても、暴力はいけない。」


「あっちから暴力を振るわれてもですか?」


「その時は、まず逃げなさい。暴力以外の解決策があるはずだ。」


「わかりました。」


『ご家庭の働きかけ』としては、仲良くすることと非暴力を徹底しよう、と魔王は思った。





翌日、魔王は校長のところへ行った。


「校長、学校から競争を無くしましょう。」


「ええ!なんですか、それ。」


「ラパスには、徹底的に愛と平和を教え込まなければ我々の未来はありません。愛と平和の中に競争は必要ですか?」


「まあ、魔王様がそうおっしゃるなら…。」


こうして、学校から競争は排除され、協働に重きが置かれた。



それぞれのやりたいことと能力を明確にし、適材適所が意識された。

話し合いも活発になり、達成感もあって、子どもたちの仲はますます良くなった。


友達が増えれば、ラパスが暴走する可能性も減るだろう。


学校生活も順調そうに見え、魔王はちょっと安心した。

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