魔王様の子(勇者)育て奮闘記!
千織
第1話 魔王側の事情
「魔王様!勇者が6回目の転生をしました!」
親衛隊隊長が駆け寄ってきて報告した。
「あー!もう!何回転生したら気が済むんだ!」
魔王は頭を掻きむしった。
勇者は、1回目の聖戦では、戦士、魔法使い、僧侶を率いたパーティーで戦いに挑んだ。
それが、5回目ともなれば、勇者は各国の連合軍を率いて最新兵器を使った戦争となった。
魔族の村は焼かれ魔王城は全壊した。
「勇者は転生する度に記憶とスキルを引き継ぎ、人間側も勇者の転生を見越して戦争準備をしています。今は宇宙からレーザービームを撃つ宇宙兵器の開発が進んでいるとか…。」
「発想が暴力的すぎんだろ!もう長引く戦争で魔族は半分に減ったし、城もない。なんのためにそこまでやるのか…。」
城を無くした魔王たちは、怪物村に避難して身を潜めている。
「やつら人間は、魔王様の降伏宣言がほしいのです…。でもそんなことをしたら、魔族が人間の奴隷になる歴史が始まってしまいます!それだけは避けなければ…。」
そんなことはもう魔王もわかっている。
魔王は1000年を超えて生きた魔族の王だ。
魔王は長生きなほど魔力が高い。
最初の聖戦の深手を癒すために、蓄積された魔力300年分を使い、700歳に若返った。
そんな風に聖戦が起こるたびに、寿命魔力を使って傷を治した結果、今の魔王は20歳まで若返ってしまったのだ。
「勇者は16歳で前世の記憶を取り戻し、旅立ちます。一回目こそ、魔王城に辿り着くまで10年かかりましたが、前回は1年で来ました。今回は旅立ちから間もなく到着するかと…。」
「もう俺も勇者とタメの年と言っても過言ではないところまで来てしまった…。はあ、今度こそ殺される…。」
魔王はため息をついた。
「もはや魔族の戦力復興は不可能です…。仮に今、幼い勇者を殺しても、また転生するでしょうから際限ありません。どうしましょう…。」
魔王はしばらく宙をみつめていたが、ふと思いついて言った。
「勇者を殺さなければいいのでは?今、勇者をさらって、寿命まで面倒をみれば、新たな聖戦は起こらない!」
「なんという太陽政策!わかりました!早速準備をしましょう!」
こうして魔王の子(勇者)育て計画が始まった。
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