19話 勝利! 敗北! どこ?
「楽勝にゃ~」
「ふふふっ、500階層のボスも瞬殺出来そうよね~」
「ん?」
「あつし、どうしたの?」
「どうかしたにゃん?」
「う~ん。階段が2箇所にあるんだよ」
「当然でしょ?」
「いや、上りの階段がだよ」
「にゃ? 下りる階段はないにゃ?」
「あつし、そうなの?」
「いや、下りる階段はボス部屋の奥にあるんだよ」
「じゃあ、あれじゃない。隠し部屋。宝箱が沢山あるとか」
「凄いにゃ」
「まあ、あったとしでも空だと思うけどね」
「そうよね~、こんな下層なのに、全て空だもんね~」
「残念にゃ~」
僕達はもう1つの上へと上がる階段を無視してボス部屋へと向かった。そして扉を開けると見たことのある魔物がいた。
「あれ? あつし、地竜じゃない?」
「正解。ユウ、帰還を頼む」
「にゃ? 戦わないにゃ?」
「ドラゴンと戦うのはまだ早いと思うよ」
「ふふふっ。試してみましょ」
ユウはいつものように地竜に向かって走り出した。そしてジャンプ。
「いいにゃん?」
ノルンは首をかしげて走り出した。
「ユウ、ノルン。ちっ」
仕方ないので僕も前に出る。
ユウの振り下ろした大剣はドラゴンの肩を斬り裂く。硬い鱗に守られている地竜の肩から血が。
あれ? 効いてるのか。
地竜
HP4521/5000
MP3000/3000
地竜を鑑定してみると、ユウの1撃でHPがかなり減っていた。
「ノルンが倒すにゃ~」
地竜の側面に回ったノルンが地竜の腹に横斬り。
地竜
HP4411/5000
MP3000/3000
ノルンの攻撃も効いている。
倒せるのかドラゴンを。
僕はノルンと反対側の側面に周り込む。
「ユウ、ノルン。攻撃が効いてるぞ」
って、僕を狙って来たか。
地竜の顔が僕の前に。
僕は後ろへとジャンプして地竜の噛みつきを回避。
ん? 尻尾か?
「ユウ、ノルン。地竜が横回転して尻尾で攻撃してくるぞ」
「ふふふっ。知ってるわよ」
「当たらないにゃ~」
ユウとノルンは地竜に向かって高くジャンプして尻尾を回避し、そのまま攻撃を。僕は更に後ろにジャンプし尻尾を回避。そして前に出る。
地竜はノルンを見ている。僕は走りながら剣を振り上げ、地竜に向かって振り下ろす。
僕の剣で地竜の身体から血が。
よし、効いてる。
「ノルンが倒すにゃ~」
「ふふふっ、負けないわよ」
次々に地竜にダメージを与えていくノルンとユウ。僕も負けじと剣を振る。
地竜の動きは遅い。
僕達は地竜の攻撃を全て回避。
地竜
HP1153/5000
MP2050/3000
ん? 何か魔法やスキルを使ったのか?
地竜のMPが減っていたのだが……特に変化はない。
僕は剣を振る。地竜が何かして来る前に倒しきればいい。
「ユウ、ノルン、止めだ」
「やるにゃ~」
「ふふふっ、これで私達はドラゴンバスターね」
ノルンが地竜の腹を連続で斬りつけ、ユウがジャンプからの大剣。
地竜は断末魔を上げ、地に伏して動かなくなった。
「ふふふっ、楽勝だったわね」
「無敵にゃ~」
「まさかドラゴンに勝てるなんて考えてもいなかったよ」
地竜を倒した僕達が宝箱に近づくとやはり開いていた。
「にゃ? 何か入ってるにゃ」
ノルンが宝箱から盾を取出した。
「開いてたのに中身が?」
「まだあるにゃ」
ノルンが宝箱から指輪を取り出す。5つも。
僕が鑑定すると5つ全てがS級の素早さの指輪だった。
「どうして残ってたんだろ?」
「ふふふっ、考えても分からないわよ」
「にゃ。書いてるにゃ。未来の勇者に託すって書いてるにゃ」
ノルンが紙を手に取り、そんなことを。
僕とユウも紙を見せてもらったのだが……異世界の字で読むことは出来なかった。
未来の勇者? 何かを託すならもっと沢山残してくれてもよかったのにね。
地竜を倒した翌日、僕達は501階層へ。
「この調子なら最下層まで行けそうね」
「ノルンは無敵にゃ~」
「だね。思っていたより難易度が低いみたいだね」
「ふふふっ、来たわよ」
「ノルンが倒すにゃ~」
501階層に下りて5分くらいで、2m程度の黒狼の魔物と遭遇した。
1匹なので、ノルンに任せて僕は歩いていく。
上段から振り下ろしたノルンの剣が? 黒狼がノルンの剣を横に移動し、回避。
「ノルン?」
ノルンが吹き飛ばされる。黒狼に体当たりされたようだ。
「じゃあ、私が」
ユウが前に出る。ユウが攻撃を仕掛ける前に黒狼がユウに突撃。
「ユウ?」
ユウまでもが黒狼に吹き飛ばされてしまった。
ノルンもユウもHPが減っているが命に問題ない。
ならば僕が。
は? 速いっ。
黒狼は一瞬で僕の前に。
「くっ」
僕も吹き飛ばされてしまう。
「あつし、大丈夫?」
「大丈夫。撤退するよ」
「ノルンが倒すにゃ~」
僕を無視してノルンが前に出る。が再び吹き飛ばされてしまうノルン。
「ノルンちゃん、無理しないで」
ユウの言葉もノルンは無視し、起き上がるとすぐに黒狼に向かって走る。
「強化にゃ~」
ノルンの速度が上がる。
おっ。ノルンもスキルを覚えたのか。ってダメか。
ノルンの速度は上がったのだが、それでも黒狼の速度には対応出来ずに吹き飛ばされてしまったノルン。
僕はノルンの手を引き、階段へと走る。
「ユウ、逃げるよ」
「そうね、悔しいけど、って、あつし、後ろ」
黒狼に接近されていた。避けられないと思った僕は階段の方へと吹き飛ばされるように身体をひねる。
痛いけど、痛いけど、階段の前に吹き飛ばされることに成功した僕は四足歩行で走るように階段を上っていく。黒狼はすぐ側まで来たのだが、階段には上らずに逃げる僕達をジッと睨んでいた。
「危なかったわね。久しぶりに攻撃されちゃったよね」
「SSS級は強かったにゃ~」
「ん? ノルン、SSS級って?」
「あつし、501階層からSSS級だって教えてもらったでしょ」
「そうにゃ」
「あ~、そういえば。レベル上げするしかないよね」
「え~、もう出てもいいんじゃ?」
「レベル上げは面倒にゃ~」
「面倒って……。まあいいけど。なら、もう1つの上りの階段を確認してから帰還しようか」
「ふふふっ。宝部屋だといいわよね」
「宝箱を開けたいにゃ~」
ここまでの宝箱は全て開いていたのだが……。
階段を上り499階層に辿り着いた僕は探索を使用した。
「あ~、宝箱はなさそう。魔物も499階層と変わらないけど……どうする?」
「帰還でいいよ。ねえ、ノルンちゃん」
「いいにゃ」
ユウもノルンも満足したのか、それともレベル上げが嫌なのか帰還を選択。
「まあ、いいか」
僕とノルンがユウと手を繋ぐと。
「帰還」
ユウが帰還のスキルを発動した。
階段の前に帰還した僕達はダンジョンの外に?
「あれ? ここはどこ?」
ダンジョンの外は見たことのない平原だった。
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