第59話 質問コーナー
「そのあとに2人の配信に出ていくつか質問にも答えた。そっちの動画についてはリンクに貼ったから、時間があったらそっちのほうも見てくれると嬉しい」
ついでに華奈と瑠奈のチャンネルも少し宣伝しておく。せっかくなら2人のツインズチャンネルの人気も上げておこうという作戦だ。
「そしてそのあと先日のツインズチャンネルの配信で虹野虹弥が出てきたことを知って、急いで現場へ向かい2人と一緒に階層から脱出した。……虹野については完全に正気を失っていたようだし、2人を殺そうとした上に俺にまで攻撃を仕掛けてきたから、虹野を助けることを諦めて3人で脱出してきたという経緯だ」
実際のところ、あいつを助けようと思えばできたのかもしれないが、それは俺の意思でやめた。それについて今もコメントがたくさん来ている。
「すでに多くのコメントが来ているな。一応このスピードでもコメントはすべて追えるが、全部に答えるのは時間的に無理だから、多い質問順に取り上げていくな」
ものすごい速度で流れるコメント欄だが、ダンジョンの中では身体能力とあわせて動体視力や反応速度なんかも上がっているため、コメントはすべて確認することができた。
とはいえ今もコメントは増え続けているため全部を取り上げるのは不可能なので、多い質問を取り上げていくことにする。
「『虹野から攻撃をされたあとに配信を切ったのはなぜか? 虹野も一緒に助けられたのでは?』 これが一番多そうだな。正直な話、虹野から攻撃を加えられたことによって、俺も反撃をしようと覚悟していた。その結果あいつが死ぬ可能性もかなり高かったから、配信を止めたんだ。結果的にはモンスターの群れにやられたがな」
実際には虹野のことをクズ野と書き込んでいるリスナーが多かった。人気のあったはずの配信者も一度こうなってしまっては叩かれる対象となるらしい。本当にネットの世界は怖い……
「虹野についてはおそらくだが、一緒に助けられた気もする。だが、あいつは華奈さんや瑠奈さんを殺そうとしていたし、気絶させて運んだとしても途中で目を覚ましてモンスターと戦っている時にこちらへ攻撃をしてくる可能性もあって、俺たちの生還する可能性が下がるだけだから迷わず見捨てた」
これについては虹野を擁護するようなコメントもほんの少しだけあったが、すでにダンジョン協会からはおとがめなしで、俺も間違った判断はしていないと思っているので無視することにした。
「あと多い質問は『2人を治療したのはもしかしてハイポーション?』という質問だな。ああ、その通りだ。このダンジョンの奥の階層へ進むとハイポーションも稀にだが出てくるぞ」
むしろこちらの返答の方がコメント欄はにぎわっていく。どうやらダンジョンの外でハイポーションはまだまだ珍しい代物らしい。
「あとは『ヒゲダルマさんは先日の配信で58階層にいたブラックドラゴンをソロで倒していましたが、現在は何階層まで攻略が進んでいるんですか?』か。これについてはノーコメントだ。58階層までは進んでいるとだけ」
先日の華奈と瑠奈の配信では50階層を超えていると話していたが、先日配信したままの動画には58階層でブラックドラゴンを倒して、解体作業をしてしゃぶしゃぶにして食べている動画を配信してしまっていたから、58階層までは進んでいることになっている。
「次は『なんでヒゲが生えていないのにヒゲダルマチャンネルなの?』か。……うん、こういう質問はほのぼのしてていいな。実は俺はかなりヒゲが濃いんだ。今日は初めての配信でヒゲは剃ったけれど、当分は剃らないつもりだから、ヒゲダルマの意味もすぐに分かると思うぞ」
例の事件以外のこういう質問がくるとなんだかほのぼのする。
「まだ他にもたくさんのコメントはあるけれど、キリがないから先に進むぞ。基本的に俺は戦闘をしている間はコメントを見ないから、あとでセーフゾーンへ移動して解体作業をしたり飯を作っている時間にまたコメントを読み上げるからな」
「……よし、今日はこれくらいでいいか」
今日は56階層でビーダルディアを狩ってきた。こいつは言ってしまえば巨大なシカなのだが、2本の鋭い角がとても硬くて突進も速い通常のベヒーモスよりは厄介な相手だ。
しかしその肉は淡白でクセが少なく臭みも少なくて絶品だ。ブラックドラゴンもうまいことはうまいが、脂が若干多めなので、今日はあっさりとしたビーダルディアにした。
こいつなら他のダンジョンの最前線で出てくるモンスターで、すでにモンスターwikiにも載っているモンスターなので、そこまで大騒ぎにはならないはずだ。
「さて、セーフゾーンに着いたし、コメントを確認してみるか」
セーフゾーンへやってきて、いつも通り首を斬ったビーダルディア吊るして血抜きをしておく。そして解体作業の準備をするまでにコメントを開いてみた。
「……なんかさっきよりも同接数とコメントがすごいことになっているな。悪いんだが、過去のコメントはさすがに追えないから、質問があれば新しく質問してくれると助かる」
俺のセリフと同時にまた新たなコメントが一気に書き込まれた。
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