怠惰で可愛い彼女は僕の体液を飲まないと死んでしまう

白鷺雨月

第1話憧れの彼女の名前は羽鳥愛梨

「ねえ影山かげやま灰都はいと君、あなたの体液のませてくれないかしら」

放課後の教室で羽鳥はとり愛梨えりはじっと僕の目を見つめて、そう言った。


羽鳥はとり愛梨えりは僕が通っていた高校で一番の美少女であった。背は百七十五センチメートルとかなり高い。髪はまっすぐとのび、背中の真ん中あたりで綺麗にきり揃えられている。

濡れ烏の羽のような艶のある黒髪である。

さらに特筆すべきはそのスタイルの良さである。胸は大きくボリュームたっぷりで、歩く度にボヨンボヨンと揺れている。友人の話ではJカップはあるという。

話の真偽はわからないが、確かに制服のブラウスがパツンパツンになっているのは確かだ。


ゆっくりと羽鳥愛梨は僕に近づき、その白い指で僕の頬を撫でる。

「ねえ、お願い…… あなたの体液をのませて欲しいの……」

その美しい顔を近づけ、羽鳥愛梨は言う。甘くて温かい吐息が頬にかかる。

その吐息を肺に入れただけで、僕の下半身は情けないぐらいに熱く反応した。

僕の反応を見て、羽鳥愛梨はにこりと微笑む。絶世の美少女の微笑みに僕は頭がぼんやりしていくのを覚えた。思考能力が如実に低下する。

「ねえ、お願い。体液…… 飲ませて……」

ゆっくりと耳元で羽鳥愛梨はささやき、その長い腕をのばし、僕に抱きつく。

大きすぎるおっぱいが僕の胸にあたる。

僕は女の子の体がこんなに柔らかいのかと感動すら覚えた。

「ねえ、いいでしょう?」

唇が近づき、僕の唇に重なろうとしたまさにその瞬間、ピピピッと甲高い電子音が鼓膜を刺激した。


そこで、僕は目を覚ました。

スマートフォンがけたたましく鳴り響いている。

僕はスマートフォンをタップし、タイマーをとめる。

なんだ、夢か……。

それにしても妙に生々しい夢だったな。

下半身が妙に冷たく、不快だなと思い、布団をめくる。情けないことにスウエットを汚してしまっていた。


僕はパジャマ代わりのスウエットの上下を洗濯機に放り込む。

サッとシャワーを浴びる。

熱いシャワーを浴びて、目が覚めた。

しかし、本当に生々しい夢だったな。

確かに高校時代、羽鳥愛梨は憧れの存在であった。でも、あの夢のように親しげに話したことは一度もない。

遠くからその抜群のスタイルを眺めるぐらいであった。

僕の記憶がたしかなら弁護士を目指すべく彼女は国立大学の法学部に進学したはずだ。

高校時代にろくに勉強しなかった僕は羽鳥愛梨とはちがい三流大学にいき、そこを卒業した現在は新入社員一年目の社畜生活を送っている。


服を着て、髪を乾かす。

朝ごはんのあんパンを缶コーヒーで流し込み、僕は自宅のワンルームマンションを出る。

あんな夢をみたせいか体がだるい。それでも仕事にいかなくてはいけないのが、社畜のつらいところだ。

その日、集中力を欠いたままではあるがどうにか仕事をこなすことができた。

なんだか疲れてへとへとだ。

重い足を引きずりながら僕は自宅に帰る。

晩御飯をつくるのが面倒なので近所のコンビニでお弁当を買う。


今日は早く寝よう、そんなことをぼんやりと考えていたら何やら柔らかいものにぶつかった。二つの柔らかいものが僕の顔を包んでいる。

なんだろうと手のひらで触ってみると指がすぶすぶと沈んでいく。なんて柔らかくて温かいのだ。この温かさは人肌だ。

もしかして、これっておっぱいでは……。

「ごめんね、突然前に出たからぶつかっちゃたわね」

その女性はそう言うと僕の肩を両手でつかんだ。


僕はその声の主を見る。

まず目に入ったのはボリュームたっぷりでYシャツがはちきれんばかりになっている胸であった。

黒いスーツに身を包んだ絶世の美女であった。

その美女はあの羽鳥愛梨であった。

彼女は絶世の美少女から絶世の美女に成長していた。

「あなたが影山灰都君ね。探したわよ。時間がないの、あなたの体液をのませて欲しいの」

羽鳥愛梨は僕の肩を強く握る。

うっ、めちゃくちゃ痛い。

なんて力だ。

骨が折れそうだ。

それに身動きがとれない。

どうにかして逃れようとしたが、それは無駄な努力であった。

彼女の整った顔が近づいてくる。

かぶりと僕の首筋に噛みつく。

恐らくだけど頸動脈に噛みつかれた。

あれ、不思議と首は痛くない。むしろ気持ちいいぐらいだ。

じゅるじゅるという音が聞こえる。

ごくごくと羽鳥愛梨は首筋から僕の体液を飲んでいた。体液、そう別の名は血液であった。

「ふーげっぷ……」

羽鳥愛梨は噛みついて口を離す。その唇が血で真っ赤だった。まるでルージュをひいたようだ。

「ふー美味しかったわ、これに比べたら普通の男の血は泥水ね。それに頭から破壊衝動がすっと消えていくわ。やはりあなたの血がこの病気の特効薬だったのね」

羽鳥愛梨のその言葉を聞いたあと、僕は貧血で倒れて、意識を失った。

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