5.『メイド言葉で話すスマホに魅了されてしまった男の話。4/4』
「ひっ!!」
思わず俺の口から悲鳴が漏れた。
《ねえ、どうしたの? あかりに会えて嬉しいでしょ? 直接話したいって言ったでしょ? だから――アナタモ、シンデヨ》
姿は見えないのに確かに気配はあって、耳元では確かにあかりの声がして、その声は確かに可愛いのだけど……俺の首が、苦しい。
「あ、かり、なあ、あかり、……まって、ちょ……」
首が締まっていく苦しさで、俺の手からはスマホが転げ落ちた。
やばい、これじゃ、助けも呼べない。
(……そうだ、こんな時こそ!!)
「へい! シェリー!!」
『はい』
俺のスマホが返事した。けれど……なぜかいつもより声が、低い。いや、そんな事に構っている場合じゃ、ない、助けを!!
「シェリー、たすけ、て、たすけを……!!」
するとシェリーが起動した事を知らせる虹色の丸いデザインが映し出され、シェリーの声が聞えた。
『はあああああ?? 散々他の女と浮気してたくせに、都合のいい時だけ頼って来るの? 私が今までどれだけあんたの手助けしてきたと思ってんの。あかり、あかり、あかり、そればっかり。全然私の名前呼んでくれなくなって。画面の中からずっと見てた私の気持ち、分かる!? そんなにあかりがいいならあかりと仲良くすれば? ちなみにここ、3年前に殺人事件があった場所だけど。その被害者があかりちゃんだったわね。でも私、知ら……』
なに? これはなんのバグ? シェリーはまるで意思を持ったかのように延々としゃべっている。
え? 待って。俺の身体が浮いていくような感覚がする。なのになぜ、俺の身体が倒れているのが見えるんだ?
まさか、これは……幽体離脱というやつか!?
なあ?? 俺は――死んだのか? あかりに……殺された?
(なあ、あかり。あかり?)
声は出ないが呼びかけた。すると。
《……せっかく会いに来てくれて、嬉しかったのに。他の女の名前呼ぶなんて、信じられない。浮気者。あんたなんて……大っ嫌い。バイバイ》
……え??
俺は急に宙に突き放されて、すべてを失ったような喪失感に襲わた。
――と、思ったのに。
~ピロロロローン♪~
緊張感のない音楽が流れて、俺は目を覚ました。生き返った!?
時刻は、8時。
昨日シェリーに頼んでアラームをかけた時間だった。
そして、気付かない間に友人からのメッセージが1件。
『なあ、そろそろ高校の頃不登校だった、あかりちゃんの三回忌だな』
急に彼女の遺影を思い出した。黒髪ツインテ―ルに、くまの可愛いぬいぐるみ。
ああ、そうだ。なぜ俺は……忘れていたのだろう。
―完―
読んでくださりありがとうございます。
ここまでが、ギャグホラー版です。
そして次の次のページ(7P)から、恋愛ミステリー風の結末版になります。
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