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その後、園内の遊歩道を進む史都たちの前方に、カップルでしょうか、なにか困った様子の若き男女の姿が。
「どうかしたんですか」
ふと、有田くんが尋ねてみれば、その彼女の方が、コンタクトレンズを落としてしまったとのこと。
すると、さすがは有田くんか。長閑な田園風景が再現された中、史都ともども彼は、それを一緒に探し始めました。
で…
「あ、ありましたよっ」
皆の注目を一身に、歩道と芝の境目辺りに落ちたレンズを、有田くんが指差しています。自分の手で拾う訳にもいきませんのでね。
ともあれ、感謝の言葉を受けると共に、あらためて史都と有田くんは歩き出しました。
それから、徐々に街並みの方へと移動すれば、今度は周辺を右往左往する女の子に遭遇。
小学校4、5年生くらいか。それは泣いてこそいませんでしたが、なんだか心配になったのか、またも有田くんが尋ねてみると、彼女曰く、家族とはぐれてしまったのだそうです。
そこで、有田くんは史都と一緒に、とりあえずその子を、近くの管理事務所まで連れて行ってあげました。園内放送で家族を呼び出してもらえれば…と、普通に思ったからです。
さあ、そうこうするうち史都と有田くんは、レストランやフードコートのある一角へやって来ました。
いよいよ昼食タイムです。
でも、レストランの方は学生には高値なので、結局2人は、お手頃なフードコートの方を選びました。
時間的なこともあって、さすがにこの場は人が多くなっていますが、それをものともせず。有田くんは、史都をテーブルに待たせて、2人分の注文をしに奥のカウンターへ向かいます。
ちなみに有田くんは、リヒテンシュタイン名物(?)『ファドゥーツ丼』を。また史都は、同じく『フランツヨーゼフサンド』を選びました。
楽しいひと時。ほどなくして2人が、仲良く会話しながら、それらを食べ始めました。
そう、この史都を始め楠一家は、なぜか食事はするんです(『人形彼女』参照)。
おや、ちょっと待ってくださいな。
湖都と共に別のテーブルに着き着き、そんな史都たちの様子を見ていた帝都が、
「湖都〜…帰ろうか〜」
いきなり、そう言い出したのはなぜでしょう。
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