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後日…
「…なんと〜、史都が男の子と歩いていた〜…」
ここ楠家のリビングに、彼女の父である
ひゅるるるるるる〜っ…ずががーんっ!(×2)
その彼の身に、フリッツ
が、
「しっかりしてくださいな〜、あなた〜」
隣に座る妻、
「うむ〜、大丈夫だ〜」
いやま、確かに。驚いているようでいて帝都は、娘と同じく無表情かつ一本調子です。
かたや、ほぼ通常運転ながら、湖都もまた然り。
さらに、これまた史都と同様、両者とも会話しているにも口は動かず。その声も側のラジカセを通して、当リビングにこだましています。
そうなのです。娘が人の魂を宿した人形なら、両親もまた同じく。やはり史都よろしく、それぞれ双方の霊魂が、
実を言うと、この楠家の親子3人は、かつて揃って不慮の事故に遭遇。結果、この世に未練を残したまま亡くなってしまいました。
で、その一家の彷徨える魂が、たまたま同じ場に棄てられていた3体の人形に憑依。こうして、再び現世で共に暮らすようになった。という訳なのです。
ちなみに、この『うらめしや〜』みたいな家族揃っての一本調子も(ひとつのイメージとして)霊であるがゆえ、ということで。
「で〜、一体どこの誰かね〜、その男の子というのは〜」
「私も、ご近所の方に聞いただけなのでよく分かりませんが〜、なんでも同じ臨海高校の制服を着た、爽やかなイケメンだったそうです〜」
そう、湖都の言う『イケメン』とは、間違いなくあの有田土岐雄くんのこと。まだ史都は、彼の告白に対して返事はしていませんが、最近よく一緒に登下校などするようになった為、その姿を目撃されたのでしょう。
「ふむ〜…まあ、史都が仲良くしているなら、決して悪い子ではないとは思うが〜」
「私もそう思いますわ〜。あの子のことですから〜」
なるほど、そもそも真面目なせいか、史都は両親から大きな信頼を得ているようです。
「しかし、まだ彼氏と決まった訳ではないが、どうだろう湖都〜…その点について私からは聞きにくいし、ひとつ君の方から、さり気なく聞いてみてはくれまいか〜」
いつもは落ち着いているのに、いまは別人の如し。湖都とは対象的に、そわそわと手足を動かす帝都であります。
えてして、娘を持つ父親というのは、こういうものなのかも知れません。
「まあ、あまり自信はありませんが〜…」
とは言ったものの、そこは帝都の思いを汲んでか、
「…分かりましたわ、あなた〜。あの子が学校から帰ってきたら、それとなく聞いてみます〜」
湖都が小さく頷きました。
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