お姫様のたてロール
澳 加純
第1話
突然ではありますが、髪の毛を切りました。
もう何年もロングヘアーだったのですが、気持ちよくバッサリ! カットしました。
腰の辺りまであった長さも、今は肩上まで。軽くなりました。
痛んだ毛先をカットするとか、毛量が多いので梳いてもらうとかはありましたが、ここまで短くしたのは、何年ぶりのことでしょう。
美容院から戻ったわたしを見て主人、
「思い切ったなー」
と、感想が漏れたほどですからね。
息子など、わたしが昔ショートヘアだった頃の記憶が無いらしく、
「こんなに短くしたの、初めてじゃない?」
と、のたもう。違うよー。わたしにだって、ショートヘア時代があったのよ。あなたが覚えていないだけ。でも息子の記憶がないくらい、長い間ロングヘアにしていたってことなのね。
ああ、肩先で揺れる髪の軽やかなこと! ロングヘアでは、こんなことありませんからね。
このままこの長さをキープしましょうか。
したらば主人が、
「で、今度はどこまで伸ばすの?」
ですって。
ふーんだ!
ロングヘアにこだわっていた訳では無いのです。
断じて神通力強化の為ではありませんよ、娘。(←半ば本気で信じているらしい……)
強いて言えば、「美容院に行くのが辛い」ということでしょうか。
いえいえ、行きつけの美容院……ああ、ここはヘアスタジオとか言った方がいいのかしら? でもヘアスタジオってタイピングするより美容院って打つ方が早いのよね(昭和生まれ)。
いえ、ですから――。その、ヘアスタジオの美容院に問題がある訳では無いのです。
問題は、わたし。
体力の無いわたしは、椅子に長時間座っている……座りっぱなしになるっていうことが、辛いのです。
決してジッとしているのが苦痛な体質ではないのですが、それでも施術によっては2~3時間も椅子の上で、魔法のマントならぬ汚れ防止のエプロンでラッピングされ、鏡とご対面状態って云うのは、ちょっとした拷問です。
カットしてカラーして、パーマまでのフルコースなんて言ったら、片頭痛に腰痛肩こりと、こちらもスペシャルなコースになってしまうのですもの。
美容院の予約と同時に、次は接骨院の予約も入れておかなくちゃ……なんてことになってしまう。
そんなこんなで、どうしても美容院に行くのは二の足を踏んでしまうのです。
それでも、どうしても美容院に行きたくなった時どうするのかですって!?
それは予約を入れる2~3週間前から「美容院に行きたい!」と家族に宣言し、気持ちを盛り上げ体調を整えつつ、予約のTELから施術日までの間を極力開けないようにします。
そして、当日は意気揚々とお出かけ、お出かけ。
大好きなアーティストのライブにでも行くのか、って感じですよね。でも、こうでもしなくちゃ、腰が上がらないのだから困りもの。
くれぐれも、悪いのは、わたし。美容院のスタッフさんは、こんな根性なしにも優しく接してくれるいい人たちです。
美容院への足が間遠になれば、当然髪は伸び放題。カットに行きたし、けれど折り合いがつかずなんてことを繰り返しているうちに、超が付くほどのロングヘアに。
こうなると美容師さんも、「え~、切っちゃうの~!?」とか「もったいないよー」とか「せっかく伸ばしたのに」とか(わたしの担当美容師さんは男性です)引き留め工作に入り、「じゃ、長さやカラーを少し変えて……こんなカンジはどう?」と新たな提案をされたり。
そのプランが面白そうで、つい『(美容師さんに)お任せ』に計画変更となり、ヘアスタイルのチェンジはお預け状態が長々と続いたのでした。
――――ところで。
髪が伸びるにつれて、ふと子供の頃の憧れを実現してみたくなりました。
それは、お姫様のたてロール!
髪をコテで巻いて縦巻きにくるんとカールさせる、あのヘアスタイル。
コロネ巻き、というそうです。
子供の頃夢中で読んだ絵本や、少女時代の大好きなマンガに登場するお姫様たちは、優雅で華やかなたてロールヘアをしていました。若草物語の中では、長女のメグがパーティーに行く際、おしゃれをして髪を巻いていましたっけ。
某マンガの「お蝶夫人」なんて、高校生なのにたてロールでテニスをするんですよ!
彼女たち、すっごく、キラキラして見えたのですよ。幼きわたしには。
だから、あれをやってみたかったんです。
――だって、憧れのたてロールなんですもの……。
髪の長さが胸下あたりに届いた頃、挑戦してみようと思いました。
そこで購入、ヘアアイロン。ハサミみたいな形状で、髪を挟んでクルクルするコテですね。それからスタイリング剤。
やり方も、動画でチェック!
まずは髪をいくつかのブロックに分けます。ひと房取り分けたら髪の毛の真ん中あたりを挟んで、くるくる巻きながら下へとコテを滑らせ、全体を巻きつけていきます。
5秒ほどキープして、ほどいてみれば、くるくるカールの出来上がり。
この要領で、同じ方向(内巻き)に巻いていきます。出来上がった数本の細かいカールを櫛で軽く(あくまでも軽く、です。ガッツリやらない!)解きながら振り揺らしていると、あら不思議!
巻いた髪がだんだん一本にまとまってアントワネットさま風に。
憧れのお姫様ロールの完成です。
カールをすべて一定方向に巻けばアントワネットさま、内巻き外巻きと交互に巻いて行けばゆるふわヘアと、いろいろ試してみました。まとめ髪も楽しくて、櫛やかんざしを使って、いろいろ試行錯誤するのも楽しい。
ロングヘアだからできる楽しみですよね。満喫していました。
でも、短くしてみたくなっちゃったんですよね。
今度は、決心堅かった!!
切ったことを後悔はしていません。だって、髪を洗うのがと~~~~ってもラクになったんですもの。乾かす時間だって、長かった時の半分!
フワフワ風に揺れる髪の感覚も楽しいし、髪の重さもなくなったので気分もちょっと軽くなりました。
でも――洗面台に置いてあるヘアアイロンを見ると、なんとな~く、またやってみたくなってしまうのですよね。
お姫様のたてロール。
お姫様のたてロール 澳 加純 @Leslie24M
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます