第2話 ATMからお金が出ない南米

このころはめっきり朝晩寒くて、ハロウィン終わった瞬間に街の景色はクリスマス、正月用品ばっかりで……

何と冬が来ることが早いことよ。


冬と言えば、クリスマス、正月用品のきらびやかさのほかにも、お店では年末年始のお休み告知がされていたりします。

とはいえ、コンビニや大手外食チェーンはあいているところも多いし、銀行は閉まっていてもATMは使えたりする。

最近は働き方改革を受けてか、元日は休みにするお店も多いけれど、それでも2日、3日に空いている店は多い。

だから欲しいものが欲しい時に手に入れられる国と言っても過言でないだろう。


が、今はどうだか知らないが8年前夫と二人でいった南米はそうじゃなかった!

南米到着して間もない私たちがぶつかった壁。

それは不慣れな言葉もそうだし、食文化もそうだけれど、お金が手に入らなかったのはなかなか大きな壁だった。

私たちは、現地で使うお金をすべて現金で持っていくことは危険と判断し、米ドル、クレジットカード、そして銀行のキャッシュカードの3種類を持っていった。

銀行キャッシュカードは、この南米のために作った新生銀行のカード。

新生銀行のキャッシュカードは、インターナショナルキャッシュカードとして使え、普段日本で使うように海外のATMでお金を引き出すことができた。(このサービスは残念ながら既に終了している。海外旅行の時便利だったのに。)

使えるATMは、VISAもしくはVISA PLUSマークが表示されているATMのみだが、海外200以上の国と地域で使えるとあって、南米ではこのマークがついたATMを探すことは難しくない。

いやむしろほとんどそれだったかもしれない。


ブエノスアイレスに到着した私たちはさっそくVISAマークがあるATMを使い現地通貨を引き出そうとした。

だが、一向にお金がでてこない。

操作を間違ったのか? と思い、念のため持ってきていた使い方ガイドを確認してみるけれどあっている。

夫と私それぞれカードを持っていたので、カードを変えてやってみるが夫のカードも私のカードもできない。

少しの間何度かトライしてみたのだが、やっぱりできない。

どうしようもなく、いったん引き下がりホテルに戻ることに。


困った。

その後バスでボリビアへ行く予定だったのでバスのチケットを買いたかったのだが、ATMが使えなければお金がない。

かといって、このままホテルに泊まり続けるわけにもいかない。

だってお金がないのだから。

とりあえず予定通りバスのチケット売り場に行くと幸いクレジットカードが使えたので、予定通りボリビアを目指すことにした。

一応手持ちのドルもあるし、クレジットもあるしなんとかなるだろうと思ったわけだ。

それにボリビアのATMなら使えるかもしれない……という期待も込めて。


まぁ結果としては何とかなったのだが、このATM使えない問題はボリビアでも、そしてブエノスアイレスに戻ってきた後もちょくちょく起こった。

ある時は使え、ある時は使えない。

なぜかわからないけれど、何の規則性もなくある時は使えない。

理由がわからないので対策のしようもなく、手持ちの現地通貨がなくなっておろしに行くのではなく、結構余裕をもっておろしに行くことに。

クレジットカードが使える店が多くても、露店や小さな店では現地通貨しか使えないし、チップもあるので結構現地通貨は使う。

チップの度にドルを渡していたんじゃ、手持ちのお金が無くなってしまう。

ドルはなるべく、いざというときに残しておきたい。


困った時にはあっちの銀行、こっちの銀行とはしごし、使えるATM を探した。

現地の人から見れば完全に外国人の私たち。

当時バックパッカーだったので身なりもゴージャスなわけではなく、動きやすさ重視の格好。

そんな二人がATMをはしごし、何かぶつぶつ言いながら長い時間いる。

はたから見たら怪しいのではないか……「おい! お前ら何やってんだ!」っていつか言われるんじゃないかとひやひや。

もちろん悪いことなど何一つやっていないが、つたないスペイン語で怒っている人に対して反論するなんてできそうになかった。

だから本当にひやひや。


その後通いだした語学学校で聞くところによると、もともとATM にはあんまりお金を入れていないらしい。

ATM泥棒がいるので、被害を最小限にするためだそうだ。

なので連休前や給料日になるとみんながお金を引き出して、ATM内が空っぽになってしまうというわけ。

また土日はそのATMにお金も補給されないから、空っぽ率が高い。

ATMを正しく操作して、自分の口座にはお金がある状態でお金が出てこないというのは、日本では考えられないこと。

理由を聞けば納得なのだが……お金が手に入らないのは、不安だったなぁ。


理由がわかれば対策のしようがある。

なるべく週初めのおろして、おろせなくてもまた別の銀行の近くに行ったときトライすればいいだけだ。

とにかく余裕持っておろせばなんてことない。

現地の人もなんとも思ってない。

日本では、交通機関もしっかり時間通りだし、宅配便だって翌日には来る。

ATMからお金が出ない事態なんてありえないし、ちょっと時間が過ぎれば、ちょっとメンテナンスなどでサービスを一時中断すれば「多大なご迷惑をおかけし申し訳ありません」である。


物流や交通に限らず、その他いろいろな職種でも1分1秒待たせないように、すべてのお客様に満足してもらえるようにと一生懸命やっているが、時に「もう限界だー!お客様は神様なんかじゃないー!!」と言いたくなる時がある。

そんな時思うのが、このお金の出ないATMや時間通りにはやってこない地下鉄のことだ。


日本のサービスは素晴らしい。

でも上を見続ければきりがない。

より良いサービス、より早いサービスを求め続けると、それは働く人をより忙しくし、中には体調を崩したり、プライベートの時間が無くなったりする。

そんな忙しい人はもちろん、1分1秒が貴重なわけで、より良い、より早いサービスを期待してしまう。


その便利さのために忙しい。

その忙しさのために便利が不可欠。

たまにATMからお金が引き出せなくてもいいじゃない。

通販で頼んだ商品が翌日に届かなくてもいいじゃない。

ちょっと不便でも早く帰宅できる方が、ちゃんとお休みがあるほうがいいじゃないと思ったりする日もあったり、なかったり。

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