第19話 sideマイ

sideマイ



それから3年が経った。ツインズはドームとは言えないが、大きめの会場で最後のステージを行った。20歳を超えて、一つの節目としてツインズは活動を終えることを決めた。タクヤのいるcolorSは去年、全国ドームツアーを行っている。レイは、タクヤのいる場所にはいけなかった。でもこれで十分だ。自分達の持てるすべてを出して全力で挑んできた。後悔はない。いつだったか、マイは最終目的はドームツアーだと言っていた。

「ユリナちゃん…みんなの夢背負って、ドームに立ちたかった」

その夢は叶えられなかった。しかし、マイの瞳は真っ直ぐ前を向いていた。

「俺、事務所で社長の下で働きたい。できれば自分の事務所を持ちたい。そのためにも、経営とかアイドルたちのマネージメントとか、勉強したいんだ」

ツインズの今後についての話し合いで、マイは迷いなく語った。これから大学に通いながら社長の元で修行をしていくそうだ。

「アイドルって特性上、若い子が多い。私達は所属してくれてる子達の若さを搾取してるとも言えるわ。若ければ若いほど本人の精神も肉体も未熟だし、悪いことへの耐性も低くて交わし方も上手くない。『アイドルを守る事務所』。それが私の、この事務所の信条なのよ」

社長はマイとレイに語った。マイとレイの女装アイドルも、そもそもスキャンダルを避けるための社長の策だった。やり方は無茶苦茶だが、社長なりに自分達を守ってくれていた。

アイドルはとにかく入れ替わりが激しい。レイはあまり他のアイドルと交流がなかったようだが、マイは多くのアイドルと仲が良かった。去っていく仲間の理由を聞いては胸を痛めたり諭したりしていた。今まで見てきたアイドルたちの苦悩や葛藤。マイ自身も味わってきたそれらを受け止めて指導し、より高みを目指していきたい。そして身も心も守っていきたい。プレイヤーではなくサポーターへ。それがマイの、今の夢だった。


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