超陰険なパワハラ社員VS元ヤン上司

@samabuu

第1話

(俺の名前は石川拓馬29才。

今の設計会社で働いて約3年が経った。

うちの会社は客先毎にチームが分かれていて、俺はMM工業という客先の担当チームのチームリーダーをしている。

MM工業はうちの会社の売上げの約30%を占めているとても重要な会社だ。

会社の信用を落とさないように、みんな慎重にやりつつもけっこう仲良くやっている。

これからもこの調子で楽しく仕事ができると思っていた矢先の出来事だった。)

チームは主人公含めて5人。


部長「みんな、ちょっといいかな。

今日から中途入社で入ってもらうことになった谷崎くんだ。」

谷崎「谷崎です。宜しくお願いします。」

陰険そうな暗い声。

部長「谷崎君は前の会社でMM工業の仕事を10年以上やっていたそうだ。

うちでも引き続きMM工業を担当してもらうことになった。

石川君、専門知識は谷崎君の方があると思うけどうちのやり方は分からないと

思うから色々教えてあげてね。」


石川「はい!わかりました!」

谷崎「・・・」

谷崎は無表情。


石川「谷崎さん!チームリーダーをさせてもらってる石川と申します!

宜しくお願いします!」

谷崎「・・・よろしく。」

(こうしてうちのチームに谷崎さんが加わった。

少し話しづらい空気もあるけど、仕事を通じて

少しずつ仲良くなっていけばいいだろうと軽い気持ちで考えていた。)


(数日後)

谷崎「三浦君。ここの部分なんだけど、この部材使った方がいいよ。

なんでこれ使おうと思ったの?」

三浦「あ、それはうちのルールで決めていたんです。

特に指定が無い場合はこの部材を使おうと。」

三浦は笑顔で答える。

谷崎「いや、ルールとかの問題じゃなくて、こっちの部材使った方がいいと思わないの?

君はそういう疑問とか持てない人間なの?」

三浦「・・・すいません。」

谷崎「あー!なんの考えも無しに仕事してる奴みるとイライラする!」

三浦「・・・すいません。」


(さらに数日後)

谷崎「加藤さん・・・」

加藤「は、はい!なんでしょうか!」

谷崎「なんでこういう配置にしたの?

製作しづらいとか考えなかったの?

俺が納得のいく説明して。」

加藤「え、えっとこれは、この部品が正面にあったほうが

お客様が使いやすいかなと思いまして。」

谷崎「・・・つまり製作者のことは一切考えてないってことか。

呆れて何も言えないよ。

もういい。君はもう自分で考えることをしなくていいから、全部俺に聞いて。」

加藤「そ、そんな・・・」


(さすがに言い過ぎだと思い、俺も口を挟んだ。)

石川「谷崎さん!言い過ぎですよ!

加藤さんだってユーザーのことを考えて設計したんじゃないですか!

そんな言い方しなくたっていいじゃないですか!」

谷崎「・・・」

(谷崎さんは無言で自分の席に戻っていった。)


(谷崎さんは定時になるとすぐに退社していた。

定時後、チームのメンバーみんなで話し合いをした。)

三浦「なんなんですか、あの人は!

あの人のせいでチームの空気最悪ですよ!

まだ入社したばかりの人の態度とは思えないですよ!」

石川「うーん...谷崎さんはこの仕事を10年以上もやってる人だからね。

色々俺らの至らない点が気になっちゃうんだろうねー。

・・・そうだ!これからは何か疑問があったら全部谷崎さんに聞くっていう

スタイルでいくのはどうかな!

そうすれば後から責められることは無くなると思うんだけど。」


三浦「うーん。あいつの言いなりになるのは悔しいけどしょうがないですね。

それで行きましょう。」

石川「うん!そうすれば少しずつ会話も増えてきて

谷崎さんも少しずつ心を開いてくれるようになると思うんだよね!

自然にみんなの知識も付いてくると思うし!」


(チームのみんなはその後、我慢しながらも谷崎さんによく質問をするようになっていったが、

俺の考えは完全に甘かった。)

加藤「谷崎さん、すみません質問があるのですが・・・」

恐る恐る話しかけてみる。

谷崎「・・・」

自分のデスクに向かい、無視して仕事を続ける。

加藤「あ、あのー...」

自分のパソコンから目をそらさずに口を開く。

谷崎「なに?」


加藤「あの、この部分なんですけど。」

谷崎はあからさまに嫌そうな顔をして図面を見る。

加藤「こ、この部分はどんな並びにすれば宜しいでしょうか?」

谷崎「・・・ハア。」

ため息。

谷崎「この順番にすればいいんじゃない?」

加藤「わかりました!ありがとうございます!」


谷崎「・・・ハア。俺の貴重な時間が1分無駄になった。」

加藤は落ち込んだ表情。

(谷崎さんは常にこんな感じで、チーム内の雰囲気は良くなるどころか、

ますます悪くなっていってしまった。

それに耐えきれず、メンバーは一人また一人とチームを抜けていき、

気付けばうちのチームは、俺と谷崎さんの二人だけになっていた。

そして、谷崎さんの矛先はとうとう俺に向かってきた。

毎日毎日嫌味を言われ、徐々にメンタルが削られてきたある日。)


谷崎「あのさー、石川君。ここ、なんでこの部品使ったの?」

石川「・・・この仕様の時はいつもこの部品使ってるんです。」

谷崎「ハァ...君この仕事何年目?」

石川「もうすぐ4年目ですけど。」

谷崎「新人みたいなこと言わないでよ。

ここの部分はこの部品使って!前の会社の時にはこれを使ってたんだよ!」

石川「いや、それは前の会社の話ですよね?うちではこの部品を...」


谷崎「いいから黙って言う通りにしろよ!たかが入社3年程度で俺に口出しすんなよ!」

石川「...わかりました。」


打ち合わせ室にて

石川「もうあの人とはやっていけません。」

暗い声

課長「そうか...お前だけはうまくやれると思っていたんだがな...だめだったか。

谷崎くんを他のチームに配属させることもできるんだが、どこのチームも受け入れる気はないらしい。

会社のためを思うと当然の判断だと思うが...どうするべきかなぁ。」


ガチャ。ドアが開く。

唐沢「あ!課長!石川!こんなとこにいたんすね!」

石川「か、唐沢さん!」

課長「唐沢!どうしたんだ!なんでお前がここに?」

(この人は唐沢龍二さん。MM工業チームの本当のリーダーで俺を一から育ててくれた師匠みたいな人だ。

半年前にMM工業の新規製品開発のため、メイン設計担当として海外出張中のはずだった。)


唐沢「いやー、実は部品の入手が厳しくて一旦プロジェクトが凍結しちゃったんですよねー。

恐らく半年くらいは掛かると思います。ということで急遽帰国しましたー!」

課長「そうだったのか。連絡ぐらいしてくれよ。」

唐沢「いやー、電話しようかと思ってたんですけど日本時間では夜中でしたからねー。

どうせ次の日には出社するからいっかと思って。」

課長「そ、そうか。」

唐沢「そんで?何話してたんすか?面白い話?」

課長「い、いや実はな...」

(課長と俺は唐沢さんにこれまでのことを一通り説明した。)


唐沢「ふーん。なるほどねー。

石川ー。お前相変わらずメンタルよえーなー。」

石川「す、すいません...これでもけっこう耐えてたんですけど。」

ニヤニヤしながら唐沢が言った。

唐沢「ふーん。本当かなー?

まあ、いいや。お前への説教は後だ。

ちょっとお前にお願いがある。」

石川「は、はい!なんでしょうか?」


(3時間後)

唐沢「どうもー。はじめまして!唐沢と申します!」

谷崎「どうも、谷崎です。よろしくお願いします。」

唐沢「はい!よろしくお願いします!

えー、突然ですが谷崎さんにはうちのチームから抜けてもらいます!」

谷崎「は?」

唐沢「これは谷崎さんが入社されてからのMM工業の売上げです。

だんだん下がっていき、今では売上半分以下になっちゃってます。」


谷崎「ええ。まあ、今は二人でやってますからね。

自然なことだと思いますけど。」

唐沢「へー。なんで二人になっちゃったんですか?5人だったはずなんですけど。」

谷崎「皆さん、私のやり方に合わなかったんじゃないですか?

経験の浅い方たちばかりでしたので、色々と教えてあげていたのですが

入社したばかりの私に指摘されるのが気に食わなかったのではないかと思っております。」

唐沢「ほー、なるほど!よく分析なさってらっしゃる!素晴らしい!

確かに谷崎さん程度の方に色々言われたら気に食わないっすよね!」


谷崎「は?」

唐沢「実は谷崎さんが入社されてからの図面を一通り見させてもらいました。

1時間くらいちょろっと見させてもらったんですけど、しょぼい図面お書きになりますねー。

あれじゃみんなが付いていけないのも納得できちゃいました!」

谷崎「...私の図面がしょぼいだと?どこがしょぼいのか説明してもらいましょうか?」


唐沢「はい、まずこれー。」

唐沢が図面を出す。

唐沢「この計算間違えてますよ。全然強度足りてないです。恐らく近いうちにぶっ壊れますね。

ああ恐い恐い。」

谷崎「う...私も人間なんですからミスはあります。」

唐沢「そうですか。ではつぎー。この部品とこの部品を近づけたら熱に耐えられなくなって

簡単に壊れます。正直常識レベルですwはい、言い訳をどうぞ。」

谷崎「う、うぐぐ。」

唐沢「はい、つぎー。これもレベルが低すぎて笑っちゃったんですけど、この部分...」

(唐沢さんはその後も谷崎さんのミスを10箇所以上指摘した。

最初は言い訳をしていた谷崎さんも最終的には何も言えなくなっていた。)


唐沢「ね?あなたは人に意見できるほど立派な方じゃないんです。

大した知識もなく、人と調和する能力も無い。そんなやつ、うちの会社にいらないと

俺は判断しました。」

谷崎「ぐぐぐ...しかし、他の社員達は私よりも...」


唐沢「黙れクズ野郎!!

俺の可愛い部下たちをいじめやがって!正直ハラワタ煮えくり返ってんだよ!

ごちゃごちゃ言わずに消えろ!!」

谷崎「あ...あ...」

(唐沢さんの迫力に押され、谷崎さんは何も言えなくなっていた。

その後、谷崎さんは他のチームに異動という話になったが、

どのチームからも断られ、出社しても仕事が無いというみじめな状況になり、

周りの目に耐えられなくなった谷崎さんは暫くして自主退職した。

一方、俺たちは唐沢さんを中心にMM工業チームを復活させ、売上げも順調に回復していった。)


居酒屋にて

石川「唐沢さん!本当にありがとうございました!」

唐沢「はぁ...ほんとにお前は情けねーなー。あれだけ鍛えてやったのに。」

石川「す、すいません...」

唐沢「暫くしたらまた海外に戻らなきゃなんねー時がくる!

その時は今度こそお前がチームを引っ張っていかなきゃなんねーんだ!

明日からはもう一回基礎から徹底的に叩き込んでやる!

覚悟しろよ!今度こそチームを頼むぞ!」

石川「はい!気合い入れ直して全力で頑張ります!!」


(それから3か月後、唐沢さんは再び海外出張に旅立った。

俺の仕事は唐沢さんが戻ってくるまでにもっとチームを大きくすることだと

決意し、今まで以上に真剣に仕事に取り組んだ。

その結果、メンバーも増え、今では過去最高の売り上げを更新し続けている。

唐沢さんが帰ってきたときに成長した姿を見せられるように

これからもがんばるぞー!!)

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