クリスマスなのに爆発【半月の夜に泣く】

陽女 月男(ひのめ つきお)

第一 再会

再会2022.11

 奈緒と久しぶりに会うことができた。前回デートしてから、半年が過ぎていた。

連絡を取り合う手段は、携帯メールだけ。ほとんど、メールを送信していないし、受信することもなかった。

 そんな中、僕は突然、無性に奈緒に会いたくなった。奈緒の誕生日が近づいていることも、関係しているのだろうか。

 断られるのが怖くて少し躊躇したが、思い切って食事に誘った。デートに誘うことは避けた。女性にとっての節目の歳を迎えている奈緒と、なんの事前情報なしにデートをする自信がなかったからである。危険度が高く断られる可能性も高いが、食事を選択した。ふたりで外食すると、誰かに目撃される危険がある。そう、ふたりの関係は、誰にも知られてはいけないのだ。奈緒は、すんなりO.K.してくれて、日程も調整できた。

 奈緒と予定どおりに会えた。何回か一緒に来たことのある「月のひかり」、という全席個室の居酒屋だ。奈緒は、ほとんどアルコールを口にしないが、僕はそれが無くてはならない酒好きである。

 奈緒の55回目の誕生日を祝い、小さな薔薇の花束とプレゼントを渡し、同じ年齢になることを喜びあった。奈緒は、自信に満ち溢れ輝いていた。驚くほど、とても素敵な女性になっていた。

 半年間の出来事や、近況を報告しあった。奈緒から家族に発生したトラブルについての相談も受け、真摯に答えた。どれだけ力になれたのかわからないが、奈緒は僕の答えに満足していた。

 なんともいえない幸せな時間を過ごし、ふたりは別れて帰路についた。僕は、電車で1時間の道のり、今夜の出来事を思い返しながら、奈緒へ今日の御礼のメールを送った。暫くして、返信もあった。奈緒は、別方向行きの電車に乗り、30分ほどで帰宅したはずだ。

 駅からの帰り道、南の空に綺麗な満月が眩しく輝いていた。少なくとも僕には、満月に見えた。


再燃

 僕は、奈緒を今まで以上に好きになっていた。9年目を迎えている奈緒との関係だが、再び火がつき心が燃え上がった。奈緒が大好きだ。

 でも、なぜ、あんなにも奈緒は自信に満ち美しく輝き、素敵になったのだろう。

 積極的にデートに誘ってみた。コロナ禍になり、なかなかO.K.してくれない奈緒だったが、日程の調整は直ぐににできた。奈緒からは身体の状態も教えてもらった。女性特有の周期を計算することは難しくなり、やや消極的な奈緒だったが、無理のない範囲でデートをすることで納得してもらった。

 僕は、嬉しくてたまらなかった。コロナ禍の後、あんなに僕とのデートを避けていた奈緒が、O.K.してくれたのだから。


あの金曜日 2022.12

 無事に約束の日を迎えることができ、ふたりはいつもの場所でデートをした。郊外にあるラブホテル「ブルームーン」だ。

 奈緒は、少しふくよかになっていた。とても良い具合に。年齢相応の色っぽさを、醸し出していた。再会したときに感じたとおり、奈緒はとても輝き、素敵になっていた。わずか半年での変化に、少し戸惑い気後れもしたが、素敵になった裸の奈緒を目の前にして、とても興奮した。

 立ったまま裸で抱き合い、何度も何度も、唇を重ねた。間違いなく、奈緒の感触だった。奈緒の香りに包まれて、陶酔していた。

 お風呂の湯を張ったことを知らせるアラーム音が鳴り、我に返った。

「さっ、一緒にお風呂に入りましょう。」

 奈緒に導かれて、一緒にお風呂に入り、じゃれ合った。

 風呂から上がって、僕は部屋を暗くし、いつものように、奈緒にアロマトリートメントを施し始める。お気に入りの定番メニューである。

 今夜のアロマオイルは、ホホバオイルにローズのエッセンシャルオイルを加えた今夜のために調合した手製のものだ。奈緒の全身に、優しく、ゆっくりと、丁寧に、くまなく、アロマオイルを塗った。一糸まとわぬ奈緒をうつ伏せにして、肩、腕、掌、背中臀部、腿、ふくらはぎ、足首、足裏、足指へと。奈緒の体は、柔らかく美しく、そして、輝いていた。

 途中何度か、我慢できずにそのまま奈緒に絡みつきたい衝動に襲われたが、ぐっと堪えた。

「久しぶりのアロマトリートメント、気持ちいいかい?」

「とっても」

奈緒は、色っぽく答えた。僕も、リラックス感と高揚感、矛盾する2つの感覚に同時に襲われた。

 奈緒を仰向けになるよう導き、アロマトリートメントを続ける。首元、胸、そして乳房、特に頂きの突起を入念に施術する。あくまで、ゆっくりと、優しく。それから、徐々に下半身に向かう。美しく、かつ、力強く生え揃う陰毛を優しく撫で、軽く足を開かせる。鼠径部、内腿、膝、脛と手を滑らせて、アロマオイルを塗る。

 奈緒は、目を瞑ってじっとしている。表情まではこの角度からは見えないが、ふたりはローズの香りに包まれ、心穏やかにリラックスしつつ、これから始まる淫らな色々を想像し、胸をときめきかせている。

 次は、奈緒の全身を、唇と舌を使って愛撫した。ゆっくりと、優しく、くまなく。奈緒の秘部へアロマオイルを塗る。ゆっくりと慎重に丁寧に、外側から内側へ向かい、その全体にオイルを塗る。自然と奈緒の脚が開き、そこの全体像が目に入る。つやつやと熟してぷっくりとしたその外観は、大人の女性のそれであり、淫靡で神秘的。そして今夜のそれは、ひときわ美しかった。

 奈緒のそこが温まってくる。次の段階へと進む合図である。そこを押し広げ、さらに内側へと指を滑らす。ゆっくりと優しく丁寧に、強すぎないように細心の注意を払う。中心の突起を、指、唇、舌を駆使して愛撫する。ゆっくりと、優しく。しばらくすると、割れ目の中心が潤んでくる。潤みは増し、いやらしく愛液で濡れる。奈緒の顔を覗くと、小さく頷いた。僕は、奈緒の中心部の窪みに、僕の物の挿入を試みる。ゆっくりと。

「ちょっと、痛い」、奈緒は一言、そう呟いた。試みを、直ちに中止した。

「大丈夫だよ。ゆっくりしよう。これだけが、目的ではないから。」

と、僕は伝え、奈緒を抱き寄せキスをした。

「とても素敵だよ。いや、今夜は特別に、素敵だ。愛してるよ、奈緒。」

僕は、奈緒の耳元で囁いた。そして、奈緒の中心部への愛撫を続けた。

 しばらくすると、奈緒のそこから愛液が噴き出すように溢れ出し、意図せずに僕の指が奈緒の中心の窪みに、すうっと吸い込まれていった。奈緒は、僕の愛に応えてくれた。奈緒のその中は、とても熱く濡れていた。奈緒の中がこんなにも熱く、こんなにも濡れたのを、僕は初めて経験した。奈緒は、いままでで一番ぐっしょりと濡れて、僕自身を求めた。僕も高揚し、僕の物も強く大きく硬くなっていた。

「いれて」

とても素敵で色っぽい声で、奈緒が囁いた。こんなにも切なく求められたことは、今までなかった。

 僕は、奈緒の求めに応じた。ゆっくりとゆっくりと、僕の物を、そこへ挿入した。それは奥底まで到達し、奈緒は淫靡なため息をひとつついた。

 奈緒の中は熱く、たっぷりと濡れ、僕の物を熱くより硬くした。ぬめる愛液が絡みつき、気が狂うほどの快感と幸福感が、僕の物を伝い脳に溢れた。奈緒とひとつになり、じっとしている。奈緒のその中を十二分に感じながら、どのくらいの時間が経ったのだろう。今度は、僕の物をゆっくりと優しく動かした。前後に動かしてはじっとして、それを何度となく繰り返し、キスをし愛を囁いた。すると、快感と幸福感はどんどんと強まり、限界を試すかのように上昇し続けた。奈緒は、突然に、僕の物を締め付けた。その刺激が、僕に違う次元の快感を与えた。

 こんなにも狂うほどの快感と幸福を、僕は人生で初めて経験した。奈緒も、快感と幸福に酔いしれているようだ。僕のことを「好きだ」、と言ってくれた。滅多に聞けないその言葉に、僕は興奮した。

 どのくらいの時間、ひとつになっていたのだろう。さすがに、体力的に苦しくなり、僕は奈緒からそれを引き抜いた。ゆっくりと。

 幸福感に包まれながら、ふたり抱き合い、唇を重ね、心地よい筋肉の疲労を感じていた。そのとき、奈緒から「触って」と…

 僕は、奈緒の割れ目をそっとなぞり、突起に静かに触れた。中心から湧き出す愛液を指に絡め、ゆっくりゆっくりと、優しくそっと。奈緒は、快楽の渦に、少しずつ、確実に、段々と、深く深く落ちていく。そして、快楽に苦しむ声を小さくあげながら、全身を震わせ、最後の一瞬を迎えた。美しく、愛おしく、素敵な奈緒がそこにいた。

 僕もその瞬間、脳に電流が走り、なんとも表現しようがない強烈な快感と幸福感に痺れた。ふたり一緒に、イッたのだった。

 こんなデートを、最高なデートを、奈緒とできるなんて。奈緒は、今が女としてもっとも成熟しているときなのか、それとも成熟したきっかけがあったのか。

 奈緒は、

「また、女を感じちゃったわ。これじゃ、なかなか、女を卒業できないわよ。」

と言いながら、賢者タイムに入っていた。何ごともなかったように、冷静に現実に戻っていた。

 僕は、デートにおいて射精的オーガズムを迎えることを望まない。そうなってしまうことも確かにあるが、奈緒を残して僕ひとり、プツッと突然電気が切れてしまうような終わりを迎えるのが嫌なのだ。ずっと永遠に、奈緒と一緒に快楽と幸福に浸りたいのだ。

 奈緒が賢者タイムに入ったことにより、色々な話を聞くことができた。今夜、一緒にいられる時間は限られている。そんな中で、奈緒の現状を不十分ながらたくさん知ることができた。

 僕は、今夜感じたことを正直に奈緒に伝えた。今夜の貴女が、いままでで一番素晴らしかったこと。とても素敵な女性に変貌していること。そして、この9年の中で、いまが一番大好きだと思うことを。

 駅からの帰り道、西の空に綺麗な半月が輝いていた。それを観ながら、涙が溢れ出た。

 僕の身体は、幸福感で満ちあふれ、地に足がつかないフワフワとした感覚に包まれていた。これが幸せの境地なのだろうか。こんな感覚は、生まれて初めてだった。このフワフワ感は、翌日も続いていたが、段々と弱まり、数日後には消えていた。


なぜ

 なぜ、奈緒はあんなにも素敵な女性に変貌したのか。得られた全ての情報をもとに、色々と考えを巡らせた。

 彼氏ができたのか。奈緒に、同時期に二人の男性の相手をできるほどの器用さがあるとは思えなかった。あの金曜日のようなことを別の男ともしているとは、到底、思えない。ならば、その男とはもう別れてはいるけれど、または、そもそも一度限りの関係だったけれども、忘れられない素晴らしい経験をして、その記憶に支えられているのか。

 こんなゲスの勘繰りを頭の中で続けている自分に、嫌気が指してきた。奈緒が素敵になったことは、僕にとって嬉しいことであるのだから、理由なんてどうでもいい。この僕を捨てないでいてくれれば、それで十分だ。


奈緒

 奈緒は、中堅の証券会社でパートをしている。店舗での受付接待や庶務事務が、主な業務だそうだ。会社では、結構、もてているそうだ。年上のセクハラ系おじさん、ひとまわり年下の店長、

「あの人達、きっと私のこと好きだよ」と笑顔で語っていた。僕に、嫉妬心は生まれなかった。今の奈緒がもてるのは、当然だろう。あんなにも、輝いているのだから。

 この話の流れで、奈緒が、あるゲームに夢中になっていることを知った。

 それは、中高年のおじさんに人気のパズルゲーム。会社のおじさんに勧められて始めた。ゲームの中で、その人のチームに所属していたが、会社の人なので抜ける訳にもいかない。スマホを買い換えた際に、別のIDで登録し直して、一からやり直している。これが、奈緒から得た情報である。 

思い返すと半年前に久しぶりにデートしたとき、奈緒は新しいスマホが届くのをとても楽しみにしていた。それが届いたら、直ぐにあるゲームをインストールするのだと、嬉しそうに話していた。それが、このゲームなのだろう。

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