あやかしの森の羅利子拝(らりこっぱい)

猫野 尻尾

第1話:電話ボックスの少女。

座敷わらしってのは主に岩手県に伝わる妖怪で座敷または蔵に住む神と言われ

家人に悪戯を働く、見た者には幸運が訪れる、家に富をもたらすなどの伝承が

あります。

座敷わらしの話は柳田國男さんの「遠野物語」や「石神問答」などが有名ですが

この小説の中に出てくる座敷わらしは少し現代風な女の子です。


タイトルの羅利子拝「らりこっぱい」は、この小説の中の座敷わらしの名前。


なんじゃらほいって思われた方もいらっしゃるかと思いますのでちょっと解説。


本来は四字熟語で乱離骨灰・羅利骨灰(読み)らりこっぱいと書くんですが、

骨に灰では死んじゃってる人みたいなので骨を子に灰を拝むに変えました。

座敷童も少女・・・女の子、子供を拝む・・・そう言う意味ではベストなの

ではないかと・・・。

らりこっぱいの意味は「さんざんなありさまになること、また、そのさま、めちゃめちゃ」ってことです。


ではでは「あやかしの森の羅利子拝」はじまりです・・・。


高校から帰りのいつものバス停。

そのバス停のすぐ横に誰が設置したのか今時とは思えない木製のめっちゃ

レトロな電話ボックスがぽつんと立っている。


その電話ボックス、通学時毎日のように見てるけど誰かが利用してるところを

俺は一度も見たことがなかった。

ところが今日はじめて電話ボックスに人が入って行く人の姿を見たんだ。


興味を惹かれた僕はその電話ボックスに近づいて、そっと中を覗いてみた。


でも誰もいない。

さっきまで確かに人が入ったはずなんだけど・・・。

見間違いなんかじゃない・・・たしかに入って行ったんだ。


それからその電話ボックスのことが気になって毎日通学、下校時に

観察していた。


そしたら奇妙な衣装?着物ならしい衣装を着たの人、この間

見たのと同じ少女?が電話ボックスに入っていくのを見つけた。


また見失うといけないと思って急いで電話ボックスまで行って中を覗くと

やはり誰もいない。

不思議なことがあるもんだと俺は思いながらバス停まで戻ってきた。


それから数日後その少女がまた電話ボックスに入るところを見かけたので

今度は見失わないようにと大急ぎで電話ボックスに駆け寄って中を覗いた。


そしたら今度はその少女と目があったんだ。


電話ボックスから出てきた少女が言った。


「なに、しとんの?・・・ノゾキはあかんよ?」


「あ、いやこの電話ボックスに、女の子が入ったのを見かけたんで

あの・・・珍しいなって思って」


「み〜た〜な〜」

「そう・・・見られちゃったんならしょうがないわね」

「見ちゃたからにはあんた・・・死ぬよ」


「え〜〜〜?」


少女の形相が急に変わってデカくなった気がして僕は少し後ずりした。


「死ぬって・・・なに?」


「冗談、冗談・・・なわけないでしょ?・・・なにか?私にご用?お兄さん」


よく見るとは少女は、きつねみたいに目が少しつり上がっていて、赤い唇の

下側に両サイドにピアスなんかしていた。

派手な柄の着物を着ていて髪は長く、赤と黒のメッシュがかかっていた。

歳のころなら中学生くらいか・・・。


「あ、いや、別に用ってわけじゃないんすけど・・・」

「たしかに電話ボックスに入ったはずなのに中覗いたら毎回誰もいないんで・・・

その理由と原因を確かめたくて・・・ほんの好奇心と出来心っす」


つづく。


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