役割が変わって
鈴乱
第1話 (会話劇?)
「確かに豊穣の神だった」
「今は違うの?」
「今は……、変わってしまった」
「ふぅん。どうして?」
「大切なものを失った悲しみが豊穣の神を破壊の神たらしめてしまったのだ」
「へぇ。神様も人間みたいだね」
「そうだなぁ」
「その破壊の神様は今どこにいるの?」
「今か? お前の目の前だ」
「ん?
「そう」
「君が、破壊の神様?」
「あぁ」
「壊せるの?」
「え?」
「破壊の神様なんでしょう? 何でも壊せるの?」
「……あぁ、そうだ。なんだ、何か壊してほしいものでもあるのか?」
「今はまだ。でももう少ししたら、壊してほしいものができるんだ」
「今はまだ? ほぉん。予約しておくか?」
「予約できるの!?」
「まぁ、お前は俺を
「やった! えっとね、壊してほしいものはね……」
そう言って、少年は破壊の神の耳元に口を寄せる。
「……別にいいが、本当にそれを壊したいのか?」
破壊の神は怪訝な顔をする。
「うん!」
「そうか。
「ありがとう! じゃ、僕、約束があるから、またね!」
駆けていく小さな背を見送る。
破壊の神は、先ほどの予約を思い返す。
『バラバラになった家族を壊して、仲良し家族にして!』
「……そういったものを壊す、とは、やったことがないのだが」
自分の持つ力にはそういう使い方もあるのだと、破壊の神はしみじみと自分の手を見つめていた。
役割が変わって 鈴乱 @sorazome
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます