もし貴方がこれを読んでいるなら、もう地球は手遅れです。
路肩のロカンタン
ガーガガピガ……ガガガ…ピガ…ガガガガ
昔、旧帝テレビTOKIOで放送されてた伝説の深夜アニメ……
「
って知ってる?
知るわけないよね。
まあストーリーは単純なもんで、とある平凡な女子高生みどりが実は政府が開発した
そん時ちょうど地球は戦時中で、一般人が視聴出来る
でもこのアニメが伝説的だったのは……
毎話登場する怪獣トリステロンの侵略方法に、そん時のX星軍が地球に送り込んでいた実際の
トリステロンの身体はスライムのように変幻自在で、地球上の大体の有機生命体には擬態出来る設定だったからね。
そんで当時、地球の
……え?
んな事より、お前誰だって?
ごめんごめん。
こうして皆の脳内に直接語りかけてんのは、訳あって今、大変な事になってるから。マジの緊急事態宣だからさ、うん。
一応、駄目だった時のために
それにそっちの惑星に、文字を読む文化があるかすら分からない。でも一応、バックアップは取っとかないと。
そのうちこの手紙は瓶に詰めて、宇宙の大海に流されることになると思う。
……え?
んな事より、どうやって脳内に直接語り掛けてるんだって?
そりゃもう、私は地球の神だから。
イエスとでもヤハウェとでも何とでも呼んで。
とにかく、地球人類が生まれてから約20万年の間、紫外線と放射線で馬鹿になった頭で必死になって捻り出した、全ての神と、神の教えや概念の総合体。
それがあたし。
オーケー?
でもそんな神の神聖はもう、相当ヤバいとこまできてるみたい。てかもう本当に、「これ」が届いてるかどうかも怪しい。今現在、地球はX星軍の侵略を受けて息も絶え絶えな状態だから。
それに私は基本的に人間に対しては、何もしてやれることはない。問いかけられても沈黙を保つだけ。神聖は個々の信じる者たち自身が紡ぎ出してゆくもの。
それが聖なるヴェール。
そのヴェールをX星軍が破って、この地球を凌辱し尽くしてしまうことは既に、有史以前から現在に至るまで全て記されていた。
20世紀中盤、地中海沿岸のとある晴れた日の朝、ビーチに埋もれていたのを発見された、一冊の死海文書の中に。
情報量が多い?
とりあえず、話を「
制作陣の座組はこんな感じ。
……ごめん、やっぱ
まあ、とにかくそん時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった新人監督を筆頭に、スタッフは末端に至るまで業界で評価の高いクリエイターたちばかりが揃ってたの。
そんで陸軍スクールNAKANOのエージェントの皆様がスタッフの方々を、およそこの歪な人間社会の中で考え得る全ての
【
【第壱話「トリステロン、襲来」】
OP。
朝寝坊したみどり、急いで家を飛び出て学校へと向かう。
一方、親友のあかりちゃんが露出狂兼通り魔である、隣の
イーロン君は町一番のお金持ちで、資産家の息子。地域一体を占める権力者の一族で、物心が尽いた頃から手に入れられないものはなかった。
そして今では、暗黒の力に支配されている。
暗黒の力に支配されたイーロン君は、あかりちゃんを
あかりちゃんに襲いかかるイーロン君。
それに気付いたみどりは身を呈してあかりちゃんを庇い、イーロンを右ストレートでぶっ飛ばす。
イーロン君は地面に倒れ込み、「てめー覚えてろ」という捨て台詞と共に、溶けてなくなる。
地面に残る銀色の体液、よく見ると「3」と「7」の形になっている。
昼休み、不審に思ったみどりは「3」と「7」の数字の並びについて、スマホで検索しまくる。
それがルカの福音書(ローカルの
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巨大な双頭の犬へと変形したイーロン君は、みどりへと襲いかかる。
みどりは裏コード「37」を発動し、巨大化(何故か着ている服と共に)。
イーロン君を再び右ストレートでぶちのめしてEDへ……
……どう?
……んで、どう?
分かったでしょ、まんまだから。
こんな感じで毎話、私はトリステロンに殺されそうになってた。
神聖とは対極にある、暗黒の力を纏った外宇宙からの脅威。この世の全ての非合理的な存在が送り込んできた魔物に。
非合理的な存在は無慈悲で、何の情動も持ち合わせていない。ただ、地球上の人間ひとりひとりに、非合理的な出来事を体験させるだけの存在。
それは地球の人々の言葉でいうところの、悲劇となって当人に降り掛かる。
私は早く、この事実を宇宙に広めてほしいの。
暗黒の力に負けた、神の神聖を信じることを止めたが故に滅びそうになっている、このとある惑星のことを。
そのためのステップに、まずはこのURLに飛んで登録して──
【https://mvpmjmjgtwkgk.jp/】
……
……
……
……
宇宙世紀3737年3月7日、私は職員寮の部屋でひとり、机に向かってその手紙を読んでいた。
今日はかつて母方の祖母が健在だった頃に定められた、「3」と「7」が並ぶ我が家に伝わる個人的な祭日だ。
かつての故郷である惑星地球に古くから伝わる
故郷にいた頃の記憶は殆どない。
三歳の頃には既に、両親にこのコロニー型光速宇宙船「アニアーラ」に入植させられていたから。
その数年後に地球は核戦争によって
どうやらそれらの中には''邪宗''と呼ばれるものがあり、集団セラピーの
とりわけ顕著なのは、このように終末思想を煽る
これは外宇宙へ向けて発信された手紙ではない。当時国内で遍く流通していた、ただのつまらない怪文書だ。
果てなき宇宙の片隅を漂う、取るに足らない
曖昧模糊とした表現の羅列で、読み手を煙に巻くような代物。
陰謀を餌に、猜疑心を植え付ける。
これで一人前の
しかしきっと、いい値段は付くだろう。きっと火星のアルバシティーに住んでいる富裕層などには……近頃の彼等の興味は、失われた文明への哀悼に注がれているのだ。
「お? どうした? それはこないだの
気付くと背後に同僚の''45856-BR''が立っていた。
私は手袋をはめた手で、慎重にそれをケースにしまいながら返答した。
「この前、お前んとこの婆さんたち連れて地球周りの残骸ツアー行ったろ? あん時見つかったんだよ」
「故郷だか何だか知らねえねど、地球マニアも程々にな。呪われちまうぞ。あんな星なんかに夢中になってっと」
そう言うと''45856-BR''は自分の部屋へと戻っていった。
私はぼうっとしながら、窓の外を流れる黒い海を眺めていた。
人々の識閾下に流れる集合的無意識に、語りかけられる神聖などといった存在は、この無限の虚空が広がる宇宙空間には存在しない。
何処までも広くて──
何処までも空っぽな空間があるだけだ。
その人が何らかの困難や悲劇を乗り越えるには、神聖の声が向こうから届くのを待つのではなく、まず最初に、自ら神聖に問いかけなければならないのだ。たとえその返答がなかったとしても。
あるいは、罵詈雑言を浴びせるだけでもいい──
たった一言──
「
それが少しでも分かっていたなら、あの星の寿命ももう少しは伸びていただろうか。
私は寝支度を済ませてベッドに潜り込み、欠伸を噛み殺しながら消灯した。
明日はエウロパでの水質資源調査の仕事がある。
面倒くさい。
ただただ、面倒くさかった。
ガーガガピガ……ガガガ…ピガ…ガガガガ
もし貴方がこれを読んでいるなら、もう地球は手遅れです。 路肩のロカンタン @itmightaswellbespring
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