第14話 梨花の前にイチャイチャ権利をぶら下げる
たかが四割。されど四割。
総まとめチェックと言っても、完全に出来ているかを確認するのでは無く、大まかな理解が出来ているのかを確認する為のもの。
つまるところ、梨花が大まかに理解している分野は四割、もしくはそれに満たない可能性が高い。
答えは正解しているけど導き方が間違っていて、実質勘で解いたようなものも見受けられたのがその証拠。遠慮なしに不正解にしてやったけども。
解法がしっかり出来ていてこその数学であり、他の科目、特に物理や化学にも同じことが言える。だからこそ、甘えで正解にする事は出来なかった。
例え、梨花に嫌われようとも……。
そんなこんなで、今現在。俺と梨花は何をしているのかと言えば───。
「反復反復! ひたすら、ノートや紙に公式を書き込んで手と目で頭に覚え込ませるんだよ!!」
「ひぃぃぃ……っ! 手が痛いようぅ……!!」
「大丈夫だ、すぐに慣れるさ」
「何も大丈夫じゃない気がするんだけど……?」
「口よりまず手を動かそう。……いや、書きながら公式を口にした方が早いな。よし、それでいこう」
「むしろ悪化した!?」
楽しい楽しい数学のお勉強。
上機嫌そうに喜びの声を上げながら、自前のノートにらんらんと数学の公式を次々と書き出していく梨花。
それはそれはなんとも楽しそうな光景が目の前に……広がってません。
ええ、はい。真逆です。
嫌々ペンを持ちながら、苦しげな声を上げ、ほぼ新品に近いようなノートにゆっくりと公式を書き出していく梨花。
言うなれば、『やらされている』状態である。
元来、勉強とは苦しいもの。好き好んで勉強をする人なんてそうはいない。いたらその人は変態ですので、気をつけましょう。
それでも勉強は高校を卒業する上ではやらなければいけない事で、これからも形は違えど日々勉強。
本来なら、勉強は進んでやらせるべきなのだろうが、動き出すまで待つには時間が足りない。むしろ、『鬼軍曹』清水 麻那の扱きから逃げたとは言え、俺のところに来てくれたのは幸いだった。
梨花が俺の事を味方、もしくは優しく教えてくれると思ってくれていたのなら、少しばかり申し訳ないと思う。
だけどこればっかしは仕方のないと言うことで諦めて欲しい。
梨花がこれからどんな道を歩んでいくにしても、卒業くらいは彼女と一緒にしたいから。
そんなこんなで、今の現状。俺としてはせっかく彼女が家に来たというのに勉強だけさせて帰しました、じゃ可哀想とは思っている。
だから、今から口にする事は苦肉の策だ。
決して、俺がしたいからとか、そういうのではない。
そう自分に言い聞かせた俺は、とある提案を梨花に持ち掛ける。
「……少し、イチャイチャするか?」
「……するっっ!!」
あからさまに嬉しそうに返事をする梨花。
分かっていた反応だけれども、思わず抱きしめたくなるほどに眩しく愛おしい笑顔に「あぁ、やっぱり梨花は可愛いなぁ……」と思わずにはいられなかった。
もちろん、そう簡単にイチャイチャしては彼女の為にはならない。
「じゃあ、あと二ページ分頑張ったらな」
もうひと踏ん張りだと告げると、終わりが見えた事でモチベーションが上がったのか、ノートに書き出していくスピードを上げる梨花。
あっという間に追加の二ページ分を終わらせていく。
「さ、イチャイチャしよ?」
そう言う彼女の目は、昨日以上に輝いていた。
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