(4-2)
◇
あの日、僕の体は救急車で病院へ搬送されて緊急手術を受けていた。
肉体を遊離した僕は手術室の空中を漂いながら、そんな自分の様子を見下ろしていた。
腕や脚、肋骨を骨折、内臓の圧迫、その他打撲多数で、痣だらけの体の表面は皮をむいた腐ったバナナのようだった。
ただ、こうして治療を受けているということは、僕はまだ生きていることの証でもあった。
心肺機能はかろうじて失われていなかったし、脳内の出血もなく、昏睡状態ではあるものの僕はまだ死んではいなかった。
人間の体ってこんなになっても生きてるんだな。
まるで事故の野次馬みたいな他人の視線で僕は自分自身を眺めていた。
手術後に集中治療室に移された僕は何本もの管をつながれたまま酸素マスクをつけて横たわっていた。
何も感じない静かな時間。
それすらも、どれくらい経過したのかさえ分からない。
なのに、どうしてなんだろう?
――今、そちらへ行きます。
動けない僕の耳に君の声だけは聞こえたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます