第3章 天使の砂時計に満たされた悪夢(3-1)

 この世に奇跡なんかない。

 ここがこの世でなければ、これほど絶望しなくてすむはずなのに。

 どんなに思い出を積み重ねても、記憶は粉となって崩れ去る。

 手を触れようとすればするほど遠ざかってしまう。

 なのに、君と私を引き裂いた悲劇はいつまでも色濃く影を落とす。

 降りつもる白い砂に埋もれて。

 思い出すことのできない君の笑顔が真っ黒に塗りつぶされる。

 私は君に誓う。

 だって、君は私の大切な人だから。

 私にすべてを捧げてくれたかけがえのない人なんだから。

 だから私は。

 ――今、そちらへ行きます。

 思い出すことのできない君のそばへ。

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