第18話 戦いの後
朝日が眩しく煌めく朝は昨晩の惨劇が嘘のように穏やかな朝だった。
村の男たちはいつも通り麦畑で仕事を始め女子供は井戸で洗濯に勤しんでいる。
「なんだかウソみたいに平穏ね」
「ヘロニモが来なかったら村人全員オオカミの餌だったのにね」
「ホントよね~怖い怖い」
領主の館から村を眺めながら話をするケンとベル。
「おーい!ケン、ベルさん」
2人の後ろからジャンが駆け寄ってくる。
「オオカミたちの毛皮と肉の処理が終わったよ!」
「おージャン!ありがとう」
ジャンは昨日狩ったオオカミから剥ぎ取った毛皮を手に抱えている。
「でか!!」
「すごいわね・・
「そうだ。これは珍しいから貴族とかが物珍しがって高く買い取ってくれるだろう」
「ちなみに肉は村の神父さんが薬用に使うからって買い取ってくれた。オオカミの肉は食用としては利用されないから助かったよ」
「さすがは狩人の息子ね。手際が良すぎるわ」
「まぁな――あっ!そういえば、これを」
ジャンは村の神父から受け取った銀貨数枚を分け前だとケンに渡した。
「すごいな、こんなにもらえるのか」
「そんなに感動するほどの金額か?毛皮を売ればもっともらえるよ。さぁ、領主様から依頼完了のサインをもらって帰ろう」
こうしてケンとベル、ジャンとフレディは一度領主の館を訪ねたのち村を出発した。
――帰路の途中のこと。
「ケン、ベルさん報酬は何に使うんだ?」
「ん?とりあえず酒でも飲もうかな。ベルちゃんエール好きだし」
「そうなのか。良ければ、オレに奢らせてくれないか?パリの美味しいエールの店を知っているんだ」
「美味しいエールのお店!」
ジャンの言葉に目を輝かせて反応したベル。
ベルの生まれ故郷ではエール作りが盛んで小さいころから日常的に飲んでいたという。
だからワタシはエールにはうるさいわよ。
これがベルのいつもの口癖だ。
そうは言っても金がないので安いエールを飲んでいるのが現実である。
「あぁ美味しいよ。楽しみにしていてくれ」
「うん楽しみにしてるわ!」
うんと返事をしたベルの表情は目尻の釣り上がっている普段の表情とは違い子どものように可愛らしい表情だった。
そして一行はパリへと向かって急ぎ足で歩いてゆく。
こうしてケンたちの初の駆除依頼は終わったのだった。
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