第12話 α個体② 戦闘
夜の村でケンとオオカミが対峙している。
睨み合うオオカミとケン。
ジャンには逃げろと言われてはいたが、そういうわけにもいかない。
「ケン。このデカオオカミなんで出てきたわけ?」
「仲間を殺されたからじゃない?」
「じゃあ狙いはワタシたち?」
「ジャンたちかもよ?」
「逃げたほうがいいんじゃないの?」
2人は希にしか見れないα個体が出現した理由を推測している。
その間にもジャンとフレディが村人を起こして領主の館へと避難させている。
「何にせよ村人は避難させたほうがいい」
ケンはオオカミの狙いが分からない以上、とりあえず村人を避難させる判断をした。
オオカミから逃げるにしろ戦うにしろ村人に危険が及ぶ可能性があるという理由から。
「さぁ・・どう来るデカブツ」
オオカミはケンを横目に見ながら左右に繰り返し動いている。
ケンはその動きをしてみせたオオカミに知性を感じた。
相手の出方を伺うように一定の距離を保つ様は格闘術を学んだ人間を彷彿させたからである。
一丁前のことをするなと感心しているとオオカミは急に動きを止めた。
動きの変化に身構えるケン。
そして、オオカミはケンを目掛けて猛突進をしかけてきた。
「オレ狙いか!
オオカミの出足に合わせて、前足に飛び蹴りをかました。
しかし、オオカミは急ブレーキで間一髪ケンの蹴りを避ける。
「なっ!?」
避けられたことに驚くケン。
その隙にケンの横を急加速して通り抜けようとするオオカミ。
しかし、ケンも即座に切り換えてオオカミへと身体を向ける。
「行かせねー!」
オオカミがケンの横を抜けようとした瞬間。
ケンはオオカミの横っぱらに飛び蹴りを叩きこんだ。
オオカミは倒れこそしないがバランスを崩して一瞬動きを止めた。
そこにケンの追撃が叩き込まれる。
ケンは足払いでオオカミの前足をすくう。
すると、さすがの巨躯も支えがなくなり、その場で転倒した。
「このオオカミ、欺いてオレを出し抜こうとしたのか?」
ケンは緩急をつけた動きでフェイントをかけられ出し抜かれそうになった。
その事実にこのオオカミの知性を侮れないと痛感するハメになった。
危険の最中に考えむケンに屋根の上のベルから注意を喚起される。
「ケン!ボサッとしてないで!
「うん!了解」
オオカミはゆっくりと起き上がり、ケンを睨みつけている。
オオカミの本来の目的は知る由もないが今はケンを目標としてさだめたようだ。
ケンも短剣を手に取り腰を落として構える。
オオカミは雄叫びを上げ、ケンに前足を振り下ろした。
その手の大きさ爪の鋭さたるや、喰らえば一撃で首がはね飛ぶだろう。
しかしケンは紙一重でそれを避ける。
「身体強化のおかげで早く動ける!」
ケンはすかさず蹴りをオオカミの脇に蹴りを放った。
蹴りは見事に命中するもオオカミの巨躯は崩れなかった。
すぐさまオオカミは反対の前足でケンに攻撃をしかけた。
ケンもこれを飛び退き避ける。
「あっぶね!」
こんな攻防が何度と繰り返される。
1分、2分・・と時間が経過する。
時間の経過に焦りを感じるケンとベル。
「ケン!!何をやってるの!?早く倒さないと」
「ベルちゃんごめん!!」
謝るケンは苦笑いをしており困ったという表情をしていた。
「勝てない!」
勝てない、その一言にベルは絶望した。
「どういうことよ!?」
「こいつ丈夫すぎてオレじゃダメージが入れらない!」
「そんなこと言っても、どうすんのよ!?
「そうだよね!どうしよう!?」
ベルは解決策を求めたというのに質問に同じ質問で返されて絶句した。
頼みの綱のケンにもいよいよ成す術が無いのだと悟った。
そこからはベルも何も言えずにいた。
何か良い策は無いかと考えを巡らせている間もケンはオオカミと戦い時間がどんどん過ぎてゆく。
「ベルちゃん離脱しよう!」
タイムリミットが迫りくるなか、咄嗟に判断を下したのはケンだった。
「ジャンたちが村人を案内してるわよ!」
ケンとベルが退けばオオカミはジャンや村人を襲う。
そうなれば、間違いなく村に甚大な被害が出るだろう。
「でも、このままじゃオレたちがコイツに食い殺される!勝てなくても身体強化状態ならベルちゃん連れて離脱できる!」
村人を見捨てて逃げようというケン。
昨日出会ったばかりのジャンとフレディ、顔もみたこともない村人。
それらのために自分たちの命を捨てるのは合理的ではない。
それはベルにも理解はできるが決断はできない。
「アンタみたいにパッと命を天秤にかけられないわよ!人でなしの元ボンボン!」
「わかったよ!じゃあ勝手にベルちゃん連れて逃げるから」
ケンはすぐさま飛び上がりベルのいる屋根の上に飛び乗った。
「ちょ!ちょっと!」
ケンは有無を言わさずベルを抱えると何も言わずオオカミに背を向けた。
そして、駆け出そうと脚に力を込めた瞬間のこと。
「待って!!」
ベルが待ってと叫ぶ。
無理にでも連れていこうとしたケンだが、その一言に足が止まってしまった。
ケンは何となくだがベルのその言葉に迷いではなく確信を感じたからである。
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