俺のオ〇ホは手榴弾 ~異世界侍、ヌキ捨て御免~

くろぬか

第1話 我、抜く者なりけり


 我、異世界からの放浪者。

 本日もまた、刀の代わりに“抜く”小生。

 ヌキ捨て御免

 我、異世界より馳せ参じた抜く者なりけり。

 その欲望、果てる事なく上を向く愚息。

 だが“ソレ”は花火の如く弾けて早漏、誰もが危険に晒される愚行なりけり。

 だが我は、己の道をイク者なり。

 武者たるもの、天涯孤独。

 それは百も承知、覚悟の上。

 しかしながら、街を歩くおなごは百花繚乱。

 いと、素晴らしきかな。

 我は孤独、故に見抜く。

 笑いたければ笑え、コレが我が武士道なり。

 ヌいては溜め、戦場に赴く戦士の如し。

 この身に滾る欲望は、戦場を火の海に変えようぞ。


 ※※※


「終わったでござる」


「あ、お疲れ様でしたムギさん! 討伐証拠部位提示をお願いします」


「あい分かった、しばし待たれよ」


 異世界。

 まるでファンタジーアニメや、ライトノベルの様な世界へ来てから早数年。

 俺、持田もちだ 麦太郎むぎたろうは冒険者としての生活を満喫していた。

 今時そんな名前の奴居るのかと思う人も多いだろう。

 しかしながら、いつの時代でも親というのは不思議なモノで。

 一時期流行ったキラキラネーム、アレに反発して随分と古風な名前を付ける者だって居るのだ。

 その結果が、ワタクシめ麦太郎である。

 確かにフワフワしている名前を付けられるよりかは、自分としても気に入っている。

 けど麦太郎って。

 完全に昔の農家の人間である。

 そしてやはり、“異世界”の人々に対して。

 俺の名前は覚えづらかった様で、此方を呼ぶ時は皆“ムギ”と呼んで来る。


「おいムギ! 今日も獲物を爆散してきたのか? うぉーおっかねぇ。間違っても娼婦なんか抱くなよ? 女どころか、店ごと吹っ飛んじまう」


 カラカラと笑いながら、一人の冒険者がからかって来たが。

 これもまた、いつもの事。

 だがこれも致し方なしと、此方も受け入れていた。

 何たって“こちら側”に来る際、俺が貰ったチートふざけた能力というのが。


『吐き出した欲望の汁が爆発する、何を言わんとしているのかは察しろ。但しこれだけでは、被害しか出ないであろう。だからこそ、お前にもう一つ力をやろう。性玩具、もしくは道具を無限に作り出す力じゃ。これらに触れている内は、貴様の白濁液も爆発しない様にしてやる。しかし気を付けろ? 貴様が害意を持ってソレを使えば、五秒後に性玩具は機能を停止する。つまりドカンじゃ。玩具の効果が失われるのが五秒、もしくは強い衝撃を与える事によって炸裂する。上手く使って、精々気を付けてシコるんじゃな』


「ちょっと何言っているのか分からないです。もうちょっとこう、マシな力って無いんですか」


『無い事は無いが、お前が引いた能力はこれじゃ。あっちもこっちもと注文する輩が多くてな、今では完全にガチャシステムを導入しておる。諦めろ』


 クッソふざけた事を言い放った神様の元を旅立ち、俺はこの街にやって来た。

 最初こそ戸惑ったものの、神様くそやろうの初期サポートは手厚かった。

 金銭やら一番近い街までの地図、そして“冒険者”という職業の紹介状までくれたのだ。

 それらを駆使しながら無事仕事に就き、全てを爆撃しながらここまで生きて来た。

 魔獣退治、盗賊退治。

 その他護衛依頼……は、俺の噂を聞いて仕事が回ってこなかったが。

 とにかく、俺の武器はオナ〇。

 一発致した状態で保管し、戦場で投げつけるという。

 とんでもなく特殊で変態的な爆弾魔として名が売れているという訳だ。

 そんでもって、やはり“異世界”に来たのであれば。

 二度目の人生と言っても良いだろう。

 という訳で、俺は趣味全開に生きる事にしたのだ。

 それはもう、侍や武士。

 俺は昔から侍という存在が好きだった。

 だがしかし、俺が憧れたソレはファンタジーを含んだソレ。

 歴史とか詳しくないし、覚えている武士なんて宮本武蔵と佐々木小次郎くらいしか知らない。

 だが、俺は昔から憧れていたのだ。

 漫画やアニメの世界の、侍というモノに。

 彼等が一刀すれば相手は死ぬ。

 コンクリートだろうが鉄だろうが、刀というモノは全てを両断する。

 そんな憧れの元、俺は生きて来た。

 SAMURAI、イコール強い。

 そういう認識のまま日々を生き、ある日死に。

 そしてこの世界にやって来て、刀を見つけてしまっては。

 やるしかあるまい、侍ロールプレイング。

 借金してまで刀を購入、和服を選び形から入って。

 俺は今や、さすらいの侍と言える風貌になっている事だろう。

 だからこそ、恰好つけた言葉を返すのだ。


「拙者、娼婦には興味がありませぬ。……本当でござるよ? やはり体を重ねるとなれば、相手との気持ちの繋がりというか」


「何にも知らず抱かれた相手はドカン! なんて事は止めろよ? ムギ。あ、それから俺がよく行く店にやけに若い見た目の女の子が入ってな……なんと、ハイエルフだそうだ。俺等からすればびっくりする程の年齢だが、見た目だけなら十代前半だぜ?」


「ちょっとその話、詳しく」


 ズイズイっと身を乗り出す勢いで彼の方へと歩みを進めてみれば、受付嬢がガシッと此方の胸倉を掴んで来た。

 えぇい放せ、俺は今ロリババァの情報を手に入れるのに忙しいのだ!

 なんて事を言いそうになったが。

 受付嬢さんが、今にも此方をぶっ殺しそうな笑顔を浮かべていたので大人しく前を向き直った。


「何度も、えぇもう何度も言いましたけど。“鑑定”により貴方の能力は危険極まりないモノと判断致しました。なので、そういう店に行く事は許可出来ません。普通は、そりゃもう普通は、ココまで制限しませんよ? でも貴方の場合、出ちゃったら爆発するんですよ? それも建物を崩壊させる勢いで。こちらが雇っている冒険者が、街中でそんな危険行為をする事を許すと思いますか?」


 ものっ凄い笑顔で、エッチなお店に行く事を規制されてしまった。

 無念。

 しかしながら、俺はこの世界において“侍”を演じているのだ。

 だからこそ、恰好良くあれというもの。


「拙者、その様な欲望に負ける程軟弱な精神はしておりませぬ。武の道は孤独、孤高の精神を持って日々鍛錬を――」


「おっぱい揉ませてあげましょうか?」


「是非お願いします受付嬢さん!」


 瞬間的に声を上げれば、右ストレートが顔面に突き刺さった。

 そうか、揉ませてはくれないのか。

 “向こう側”で、二十数年。

 俺は普通に生きて来た。

 学校を卒業し、社会に出て、そして死んだ。

 異世界トラックなんて揶揄される事もあるが、まさにソレ。

 見る限り運転手が居眠り運転をしていたのだ。

 配達、お疲れさまです。

 大変ですね、もっと休んで下さい。

 そんな事を思いながら撥ねられ、俺は宙を舞った訳だ。

 我が人生、一片の悔いなし!

 それで終われば良かったのだが、生憎とそうはいかず。

 頭のおかしい老人神様が、俺に射精爆破技法を授けたのがそもそも始まり。

 マジで余計な事しやがって。

 これさえなければ、というか別の能力ならラノベ主人公みたいな無双出来たかもしれないのに。

 俺は今や、性的な行動を取った瞬間にテロリズム的行為を勃発する危険人物になってしまった。

 こっちの世界では結構活躍している筈なのに、女の子にもちょっとは……本当にちょっとは声を掛けて貰えるくらいには活躍しているのに。

 未だ仲の良い女友達の一人も出来ないのだ。

 というかこんな能力持ちで出来る訳がない。


「殴らなくても良いじゃないですか!」


「だまらっしゃい! 貴方が気持ち良くなった瞬間店が吹っ飛ぶんですよ!? そんなもん許可出来る訳無いでしょうが!」


「ど、道具を使えば爆発も抑えられて……」


「何かの拍子に失敗して爆発してみなさい! こっちが責任取る事になるんですからね!?」


 滅茶苦茶怒られた。

 神様から貰った性玩具・道具の生成。

 コレには当然避妊具も含まれる。

 ソレを使用すれば、爆発も防げるのだが……生憎と、実戦に使った事がないので未だ能力は未知数。

 そんな訳で俺が普段“武器”と使用しているのは、もっぱら玩具。

 スポッと嵌めて、色々した挙句。

 最終的には魔獣やら何やらに投げつけるという、どうしようもなく見た目が酷い感じになっているのであった。

 つまり俺は、オ〇ホを投げつけて爆撃。

 その成果によって、今の地位と金銭を得ている事になる。

 男性冒険者にとっては笑い種となり、女性冒険者にはドン引きされる。

 受付嬢は、俺の担当さん以外は口も聞いてくれない。

 それが、俺の異世界生活なのであった。


「明日の仕事ですけども、新人さんが一人……その、後衛の方が貴方を指名しています。パーティを組んでみたいと」


「ほほぉ、小生とパーティ希望とはお目が高い」


「ふざけていると、もう一発パンチしますよ?」


「すみません詳細を教えてください、何で俺なんかに組む要請を寄越したのか全く分からない上に、新人さんに教える技量も無ければ俺爆撃しか出来ないんです。一応刀も使ってますけど、剣術家って程の実力ないんで」


「サムライが聞いて呆れますねぇ……」


 ひたすら頭を下げながら、受付嬢に言い訳してみれば。

 彼女は大きな、それはもう大きな溜息を溢しながら。

 一枚の書類を差し出して来た。


「先日登録したばかりの若いシスターです。言っておきますが、く れ ぐ れ も間違った知識を吹き込まない様に。相手は小さな村の教会の出で、いわばお上りさんです。都会ではこうなんだ、みたいな変な知識を植え付けないで下さいね!?」


 受付嬢から、非常に辛辣なお言葉を頂いてしまった訳だが。

 生憎と此方は侍、間違った知識など教える筈があるまい。

 何たって、何たって……ねぇ?

 そっか、シスターさんか。

 あぁ、どんな子がやってくるのだろう。

 早くも表情筋が崩壊し始めた俺に対し、受付嬢はもう一発右ストレートを繰り広げるのであった。

 彼女のストレートは、いつも鋭い。

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