第3話 ホテルのロビーにて

ホテルのロビーに設けられた居心地の良い休憩スペースで、私は運命的にも当時大連市にお住まいだった日本人の若い夫婦と出会いました。彼らは私の時代を超越した服装に興味を惹かれ、親しげに話しかけてきたのです。


「こんにちは、その衣装はとても珍しいですね。ここ大連にはよくいらっしゃるのですか?」

女性が優しい笑顔で尋ねました。


私は緊張しながらも、彼らに自分が未来から来た旅人であることを明かしました。夫婦は目を見張り、信じられない様子で更なる話を求めてきました。


「未来からとは、まさに驚きですね。しかし、それが真実であれば、未来の世界はいったいどのようなものなのでしょう?」

男性が期待に胸を膨らませて尋ねました。


私は未来の世界のことを説明し始めましたが、インターネットという言葉を避け、

「想像してみてください。手紙や電報よりも遥かに速く、人々が遠く離れた地域にいる誰かと話したり、ニュースや知識を共有することができる電気的な通信網が存在するのです」

とできる限り彼らが理解できる言葉に置き換えて回答しました。


そして、

「異なる国々や文化が互いに影響を与え合いながらも独自性を保ち、一つの大きな社会の中で共存しています。例えば、ある国の音楽が別の国で流行したり、食事のスタイルが様々な文化圏から影響を受けて新しい料理が生まれたりしています」

と具体例を挙げて説明しました。


これを聞いた夫婦は目を輝かせ、

「そんなに速く情報が行き交うなんて想像もつきませんが、それは素晴らしい進歩ですね」

と女性が感嘆しました。男性も

「異なる文化が互いに学び合い、共存するというのは、まさに理想的な社会像ですね」

と感慨深く述べました。


二人はまた、1940年代の大連の日常について熱心に語り始めました。

女性は市場での光景を描写し、

「新鮮な魚や野菜が並ぶ市場では、中国人のお母さんたちが元気に値段交渉をしていて、そこには活気が溢れています。私たちもそれに交じって買い物を楽しんでいますよ」と。


男性は工業の発展について触れ、

「大連は港町として栄え、日本からの貿易も盛んです。工場では多くの労働者が働き、街は急速に近代化しています」

と述べ、その成長の様子を力強く語りました。


そして、夫婦は地元の祭りや行事についても情熱的に語り、

「春節(旧正月)には街中が赤い提灯で飾られ、ドラゴンダンスやライオンダンスが行われます。私たちも地元の人々と一緒にこれらのお祭りを楽しんでいます」

と、当時の大連の文化的な融合と交流を生き生きと表現しました。


彼らはまた、日本統治下での生活が持つ複雑さにも言及し、

「異国であるここ中国で日本人として暮らすことは時に大変だけど、異文化の中で学び成長していると感じます」

と女性が真面目な口調で述べ、男性も

「ここで出会う人々との友情は、言葉や文化の壁を超えて築かれています」

と付け加えました。


私は彼らの話から、当時の大連が持っていた独特の活力と、そこで生きる人々の喜びや挑戦、そして彼らが抱く希望と夢を感じ取ることができました。彼らの記憶が色褪せることなく、未来へと受け継がれることを願いながら、時代を超えた交流が続いていきました。


「大連は多くの文化が交流する場所です。日本から来た私たちも、この地で新しい生活を築いています」

と女性は言い、男性は

「私たちはここでの生活を大切にしており、未来の人々にもこの時代の記憶が色褪せずに残ることを願っています」

と付け加えました。


私たちの対話は時間と空間を超越したつながりを感じさせ、過去と未来が一瞬で結びつく不思議な体験でした。

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