第肆拾漆話:御剣椿の過去
「お兄ちゃん!大丈夫だった?」
「ああ、だけど油断は大敵ってことが身をもって知ったよ。」
すると、恋美が体をそっと寄せた。
「恋美?」
「約束して、もう無茶はしないで・・・またお兄ちゃんを失うのは嫌!」
めっちゃいい匂いで、気持ちがどうにかなりそうなのを抑えて恋美をそっと抱きしめた。
「ああ、約束する・・・俺は恋美がおばあちゃんになるのを見届けるまで絶対に死なねえよ!」
「・・・うん。ありがとう、お兄ちゃん大好き。」
嬉しいけどなんか目に光が無くて怖いです!恋美最近どうしちゃったんだよ・・・。
「あ、ああ、俺もだよ。さあ、恋美!真紀ちゃんを見つけないとね。」
「私も手伝う!お兄ちゃんをこれだけ心配させてるんだもの。ガツンと言ってやらなくちゃ!!うふふふ・・・。」
「お手柔らかにおねがいしますね。でないと真紀ちゃんのパパに何されるかわかったもんじゃないから。」
「うん!」
大丈夫かな?
―――御剣椿視点―――
「どけええええ!!」
私は襲い掛かる敵を剣技であしらいながら金華猫を探していた。
「どこへ行ったんだ?あの泥棒猫!」
「椿、真紀の居場所わかったぜ。」
麻生閣下が私の影から現れた。
「麻生閣下!どこですか?」
閣下が指さす方に真紀さんが歩いているのを見かけた。
「真紀さん!」
「あ!待て、まだ話は終わってねえぞ椿!!」
これ以上足手まといになるわけにはいかない。そのことで頭がいっぱいだった私は忠告を無視して真紀さんのもとへ走って行った。
「真紀さん!ご無事でよかったです!」
だが、彼女の返事はなく代わりに彼女の拳銃が火を噴いた。
「グフ・・・真紀さん。いったいなぜ?」
彼女は笑うだけで答えなかった。
その後、黒塗りの高級車がやってきて宗端學園初等学校の校長である和田左衛門が降りて来た。
「・・・和田校長?なぜ、ここに・・・。」
もうろうとする意識の中、和田が真紀さんを助手席に乗せて去っていくのを目撃した。
―――10数年前:御剣邸―――
私は病床の父上から最後の教えを受けていた。
父上は厳格で滅多に笑顔を見せず褒めることもない人だが、私が3歳の頃から特訓してきた剣技で剣道の全国大会に優勝の報告を病床で聞かせた際は嬉しそうに笑った。
「よくやった。我が娘よ・・・お前には随分と苦労を掛けたな。」
「そんな滅相もありません父上!」
「お前は生まれつき魔力許容量がほかの人より少ない。バカ息子がどこかへ行ってしまった以上この家をお前に託すしかあるまい。だから、私は人一倍厳しく育てた。」
「・・・・。」
「決して憎たらしかったわけではないのだ。本当は誰よりも可愛がってやりたかったのだよ。」
「そうだったんですね。」
私にとってはこれが最後の会話だと悟ると悲しみが一気にこみあげてきたが、それをぐっとこらえた。
父上は激しくせき込み女中は慌てふためいた。
「梅太郎様!」
「父上!!」
「ゴホゴホ!・・・私はもうだめだ。床の間に飾ってあるその刀を私の形見として大事に取っておけ。」
「ハイ、父上。」
「その刀で守るべきものが出来たなら、どんな手を使ってでも必ず守るのだぞ?花、もはや椿が家族と呼べる者は君しかいない。娘を頼んだぞ・・・。」
「仰せの通りに旦那様!」
父上はその言葉を最後に息絶えた。
「旦那様・・・。」
「父上?・・・父上!!」
・・・・・・
私はそこで目が覚めた。
「ゆ、夢か・・・。」
周囲の雰囲気からして病院だろう。
「お、起きた。全然起きなかったから焦ったよ。」
見慣れた少年の顔が覗き込んだ。
「悟君?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます