第参拾漆話:討伐報告

俺たちが区役所へ向かおうとした矢先に、眩いばかりの青白い着物を着た少女と少しボロい服を着て散弾銃を持った気丈夫が立っていた。


女性の方は腰あたりをケガしたのか、気丈夫の服の切れ端で傷口を縛っていた。


「君たちは一体?」


「我々はあなたたちの敵だったものです。」


「敵・・・だった?」


「訳あって恨みもないあなた方に敵対していましたが、その必要がなくなったので今度は布田月家の仲間の情報を提供するためにここに来ました。」


「ああ、彼女たちは我々が呼んだ人たちだ。さ、どうぞ中へ。」


2人は真紀ちゃんの父さんに会釈をすると布田月家の屋敷へ入っていった。


俺たちは首をかしげながらも真紀ちゃんの父さんの客人が言うなら心配ないだろうということで改めて区役所を目指した。


彼女たちの言う通り、先ほどとは打って変わって何事もなく区役所に着いた。


中に入ると犬耳の受付嬢がすっ飛んできた。


「水樹さん!吾君!!お待ちしていましたよ!どこに行っていたんですか?!」


「すまん、迷宮が攻略された後に急用ができてね。」


「そうでしたか、積もる話は冒険者課の課長室で・・・。」


「わかった。」


区役所に来ている人の中にはモンスターの死骸がダメな一般人もいるため、基本的に課長室で討伐照明のための死骸と報酬を交換するそうだ。


・・・・・


「お茶です。」「どうも。」「ありがとー。」


「・・・で、一応確認なんですがあなたたちが最下層まで言ったわけじゃないんですよね。」


「ああ、そうだ。だれがやったのかは分からずじまいだったが、ともかく俺たちも其れなりの魔物を討伐したぜ。」


本当は麻生閣下のデコイが攻略したんだろうけど黙っておこう。


「まあ、いくら水樹さんとは言えお子さんと一緒じゃせいぜい鬼3体が限界かもしれませんが・・・。」


犬耳の受付嬢は足を組んで自分で入れたお茶を口に含んだ。


「鬼3体までは合ってるぞ?な、吾。」


「うん!あとね・・・雷獣20体と、百鬼夜行?のお化けたち全員やっつけたよ!あと、ぬらりひょんも!」


犬耳の受付嬢は口に含んでいたお茶を噴いた。幸い受付嬢の前には誰もいなかったので高そうなソファに飛び散った。


だが、机同様血糊が飛ぶのを防ぐため白いシーツが敷かれていたため、シーツがお茶まみれになるだけで済んだ。


「ら、雷獣20?!百鬼夜行にぬらりひょん・・・そ、そりゃまた。」


落ち着くためなのか彼女はまたお茶を口に含んだ。


「ああ、しかもそれを討伐したのは息子の悟なんだ。」


また、彼女がお茶を噴いた。というか、父さんわざとやったでしょ。


「う、ウソでしょ!?」


「嘘なんかじゃないさ。」


父さんはそう言ってポーチから討伐証明のための魔物たちの死骸の一部を机に並べた。


死骸は腐っておらずポーチの大きさ以上の量が入っていることから、ポーチも俺の『無限収納』と同じ効果を発揮しているのかもしれない。


受付嬢は、さっきのおどけた顔とは打って変わって真剣な顔で死骸を眺めた。


さすがは冒険者課の人だ。こういうのは慣れっこなんだな。


ヴォエエエエエッ!!


盛大に吐いたから違うみたい。


「どうした?」


「じょ、情報量が多すぎて魔技使用の際に脳がパンクを起こしただけなので大丈夫です。」


「お姉ちゃんの魔技って?」


「『神眼』、どんなものでも鑑定できる。それが私の魔技です。」


「すごい!」


「主に、だれが魔物を討伐したのかを死骸から判断して報酬を与える際に使用します。」

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