第参拾参話:特殊魔技『暗黒導師』の暴走

―――杉村真紀視点―――


「吾・・・君?」


吾君は体の周囲に闇を纏い、表情もまるで悪魔のように恐ろしく目は赤く光っていた。


「うううう・・・・。」


「な、んだ?何が起こっている!?」


「があああああっ!」


「吾君!」


獣のような声を上げたかと思うと闇の中から無数の手が現れて私を殺そうとしたお医者様の首を締めあげた。


「グガッ!ああっ、放せこのケダモノが!!おい!娘、こいつを何とかしろ!」


「・・・。」


正直、こいつは死んでもいいと思っていたし何より恐怖で体が動かない以上は・・・。


「止めるのはあなたしかいません!杉村さん。」


「御剣さん!?どうして・・・・。」


突き飛ばされ気絶していた御剣さんがよろめきながら立ち上がった。


「彼は今危険な状態です。麻生閣下の言う通り、彼は闇の心に支配されてしまったのです。『暗黒導師』は使いこなせば闇夜にまぎれ影を自由自在に操れる特殊魔技、ですが怒りの感情に支配されると使いこなせていない人の場合、あのように悪魔化してしまうのです。」


「そんな・・・。」


「そしてそのまま放置すると、いずれ怒りの感情に飲み込まれてすべてを破壊しつくす魔王という存在になるのです。」


「どうすればいいのですか?!」


「明確な対処法は無いのですが、彼を愛し彼に愛されるものが止めればあるいは・・・後は彼の精神力を期待するしかありません。」


「あ、愛・・・やってみます!」


私は少し赤面しながら吾君に話しかけた。


「吾君、もうその人を放して!私は大丈夫だから。」


だけど、うめき声をあげるばかりで反応は無かった。


「がはっ!あぐあ・・・。」


「もう一声です!」


「私はここよ!目を覚まして!!」


「うううう・・・マキチャン?グアアアウ!!」


「・・・!もう意識が、あと少しです杉村さん!」


「お願い吾君!もうやめてーーーー!!」


―――主人公視点―――


ここはどこだ。真っ暗で何も見えない?


脱出したくても、まるでできないぞ。


『お前はそこでじっとしていればいい。』


「だれだ?!」


『わらわは魔王、だれもが心の奥底に潜むものじゃ。』


「魔王だと?魔王ってあれか、角が生えてて褐色ロリでビキニアーマーの・・・。」


『貴様はどんなものを想像しているのじゃ!』


すると、目の前に想像通りの魔王が現れた。


『ほらみろ!貴様のせいで変な姿になってしまったではないか。』


「姿は調整できないのか?」


『できんな。お前が概念を変えない限りな。』


「ふーん」


『なっ!なんじゃその目はこのケダモノめ!』


その時、どこからか声がした。


「私はここよ!目を覚まして!!」


「真紀ちゃん?」


『ちいっ!精神力の強い奴め!!もう目覚め始めおったか・・・。』


「どうすれば出れるんだ。」


『わらわが教えるはずなかろう。』


ロリ魔王は意地汚い笑顔を見せた。


「お願い吾君!もうやめてーーーー!!」


今度は真紀ちゃんの声がはっきり聞こえたかと思うと、ふいに魔王の後ろに扉の形をした光が見えた。


『なっ!早すぎだろっ!!』


「あそこを通れば意識が戻る気がする・・・ヨシ!」


『させるか!!』


俺が走ると同時に魔王は後ろを振り返ると不思議な力で光を閉じようとした。


「なっ、これでも喰らえ!ヒョォオオーーー!!」


『うぐぅ!なんじゃ・・・これは、体が・・・重くて動かん!!』


「き、効いた!」


魔王を『鵺の咆哮』で動かなくさせた隙に俺はダッシュで光の方へ走って行った。


『よせ!やめろ!!あのヤブ医者に復讐したくないのか!?』


俺は立ち止った。


「・・・俺は確かに奴に復讐したい。だが、怒りに任せて破壊の限りを尽くす化け物にはなりたくないっ!」


そして、ロリ魔王が止める声を振りきりながら走って光の中に入ると意識がまた途絶えた。

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