第参拾壱話:親殺しの狙撃手2

―――麻生閣下視点―――


「・・・どうやら外したようです。」


遠眼鏡を片手に反対のビルにいる獲物を覗く御剣はそうつぶやいた。


足元には御剣が処分した俺を不意打ちするために寄越したであろう敵対分子が転がっていた。


「あの女、男同士のスナイパー対決に茶々入れやがって。」


「どうします?」


「あの男は放置だ。見ろ、味方の心配してやがる。」


「それは・・・当たり前じゃあないんですよね。」


「腕の立つスナイパーは味方が撃たれても基本知らんぷりだ。味方の処置に気を割いたらあっという間に殺されるからだ。」


「厳しい世界なんですね。」


「ああ、そうだ。だが、奴はそれをしなかった。味方には欲しいがスナイパーとしては落第点だな。ところで、お前さん。何か情報をつかんだからここに来たんじゃないのか?」


「吾たちを襲っている連中は布田月一家の手の物でした。」


「そうか・・・。」


「それともう一つ、これが一番重要な情報なのですが、布田月虎之介・・・宗端學園の教頭ですが、彼が教頭になった本当の目的が分かりました。」


「それはなんだ?」


俺は御剣に衝撃的な事実を聞かされた。


「・・・それが本当だとしたら、大分まずいんじゃねえの?」


「大分まずいです。下手をしたら、この国の信用がガタ落ちする危険性があります。」


「この情報は本体の脳みそに記録しておく、お前さんは引き続き俺のサポートを頼む。」


「かしこまりました。」


―――吾視点―――


俺たちは銃声の音がしたので、周囲を警戒しながらやっとの思いで真紀ちゃんが入院している病院に着いた。


「待て、吾。」


そう言って父さんは病院の裏側の誰も来なさそうな場所まで俺を引っ張っていった。


「どうしたの父さん。俺は一刻も早くこの神秘薬を使って真紀ちゃんを助けたいのに。」


「俺は病院がクサイとにらんでいる。」


「確かに薬品臭いけど今更感すごくない?」


「違うわい!真紀の症状にずっと違和感があるんだ。」


「だから、時々難しい顔をしてたの?もしかしてこの病院がわざと真紀ちゃんを苦しめるようなことをしてたとか。」


「簡単に言ってしまえばそうだ。」


俺は開いた口が塞がらなかった。


「もし、それが本当だったら猶更早くいかなくちゃ!」


「待て!話を最後まで聞け!!」


父さんの作戦はこうだった。


銃や剣は本来面会するためには不要なので守衛の人に預けるのだが、その後に影移動を使って預けた銃や剣を盗むというコソ泥そのもので、尚且つ病院を信用してないという意思表示になる最低な行為だった。


「これ病院側が無実だとしたら不味くない?」


「吾、真紀ちゃんが倒れてから容体が悪化した時間はどのくらいだった?」


「え、えーっと・・・半日ぐらい?」


「本来、急性魔素中毒は人間が取り込まれる平均的な魔素量の十倍の濃さ或いは量の魔素を瞬間的に浴びてから1時間で体が紫色になるんだ。」


父さんの説明に納得した俺は早速作戦を実行に移して、うまく病院の真紀ちゃんが入院している部屋に入ることが出来た。


真紀ちゃんは息も絶え絶えになっており、一刻も猶予のない状態だった。


俺が有無を言わさず神秘薬を真紀ちゃんに飲ませようとした時、後ろで銃を構える音がした。


「うごくな。」


その声には聞き覚えがあった。


「真紀ちゃんのお医者さん?どうして・・・。」


すかさず父さんもお医者さんに向かって銃を突きつけた。

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