『続 タイム・レコーダー』

やましん(テンパー)

『続タイム・レコーダー』

 『これは、フィクションです。』





 人類は、いまや、新しい階級闘争に遭遇している。


  人類 対 幽霊たち


 である。



  

    👻👻👻👻👻👻👻


 

 考えてみてほしい。


 もし、ほんとうに、幽霊がいるなんて話になったらば、地球上は、もう、幽霊で一杯である。


 現世人類が、いつ生まれたのかという議論は、まあ、ひとまず置いておくとしても、20万年前あたりまでに発生したと言われる。あたり、といわれても、はっきりしないが。


 現世人類ではなくて、人類の起源というと、少なくとも500万年は遡ると言われていたが、サヘラントロプスは、もしかしたら700万年前にはいたようだ。グレコピテクスと呼ばれるものもあるらしいが、証拠が少なく、はっきりは、していないらしい。


 もし、これが、人類の祖先ならば、720万年前あたりらしい。


 では、幽霊に始めてなったのは、いつ、何なのか?


 ちなみに、聴くところでは、動物の幽霊や呪いという話もある。化け猫とか、いろいろある。


 道具も古くなると化けるらしいが、これは、いわゆる化物であろう。


 江戸時代の『稲生物怪録』を見ると、これでもかあ、というくらいに、妖怪が出てくる。絵があるだけに、また、成立した歴史がわりにはっきりしているだけに、まさに、壮観だ。


 古代ローマにも幽霊の話があるらしい。


 北欧にもある。ハムレットは、もともと、デンマークにあった『アムレート』の話が元にあるらしい。


 縄文時代にも、死者と土偶をいっしょに埋葬したりもしていたらしいが、幽霊に関係あるのかどうかは、分からない。(縄文時代には、集落の真ん中にお墓があったらしい。)


 さすがに、幽霊は肯定しないとしても、先祖の弔いは、みな、たいがいやっているだろう?



 しかし、これは、そうした古い化石に比べたら、ごく、最近のことにすぎない。


 人類の祖先は、はたして、幽霊を見たのか?


 そいつは、たぶん、永遠に、分からないだろう。


 では、幽霊に寿命があるのか?


 ある、という話もあるが、そもそも、幽霊の存在が証明できないのだから、その寿命がわかるとは、思えない。


    💀💀💀💀💀



 荒川博士は、タイム・レコーダーの発明後に、おどろくべき、まさに、おどろくべき、事実を発見したのである。


 タイム・レコーダーの威力は、また、地球の記憶力は、なかなか素晴らしいものである。


 しかし、地球の地殻は、どんどん動いて行くからか、記憶の保存される期間には、かなり限界や、ばらつきがあるようだ。


 場所によって、遡れる時間に違いがあることが、分かってきた。


 にもかかわらず、いや、だから、遺跡が保存されている場所ならば、うまくゆけば、新石器時代までは、ゆける。


 これは、ものすごいことである。


 歴史学、古代史学、考古学、言語学、人類学、音楽学、文明に関する学問、様々な分野に、まさに革命をもたらすだろう。


 しかし!


 荒川博士は、さらに、大変な事を発見したのである。


 つまり、この機械は、幽霊の声まで、遡って聴いてしまえる、らしい、のだ。


 まさに、オカルト、ホラ(ー)、である。


 ただし、その言葉を理解できるかどうかは、そのつどやってみなければ、わからないが、弥生時代の言葉を再現する研究もあるし、それを公開している資料館があるくらいだし、縄文語の研究もある。博士は研究分野が違うが、弥生時代や晩期縄文時代なら、たまには、なんとなくわかることもあるみたいであった。


 そこに、おそらく『ゆうれい』が、発したらしき言葉をも、博士は、見つけたのである。


 その話者が、幽霊なのかどうかを判断するのは、言葉が発せられた範囲を確認すると、かなり推測が出来るようだ。


 つまり、幽霊は、特定の器官からではなくて、ある程度広い空間を震わせて、音を出しているようなのだ。


 博士の機械では、その発音場所を、かなり絞れるのだ。


 すごい!   


 それは、現状がはっきりしている場所を調査したデータと、きちんと照合させる裏付けも行った結果である。


 ま、完璧とは言えないが、おそらく幽霊であろうものの発言を、ある程度、特定することが可能になった。ある種のテレビ番組よりは、いくらか確からしい。


 

     🙅🙆🙇🙋🙌



 しかし、博士は、ある意味決定的と思える資料を、ついに、得たのである。


 それは、一時間前の、資料である。


 たまたま、スイッチを入れたままにしていた。


 すると『いるはずのない』ものの、声が録音されていた。



 『ほうすいよ。わが息子よ。悪いことは言わない。この研究は、やめなさい。きみは、ぼくが、けして知られたくない隠し事を知ってしまったね。その薬のせいで、どれほど苦しんだかわかるまい。しかし、このままやると、きみも、そうなる。いいかい、人間は、自分だけが思い付いたなんて、考えてはならない。たいていは、最低でも、もうひとりは、必ずや、同時に同じことを考えては、やっているんだ。幽霊や陰謀論は、もちろん、ないと考えるべきだが、甘くみてはならない。』



         おわり


 


 


 

 

 


 


 


 



 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『続 タイム・レコーダー』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る