透明の色
すく
一話完結
13歳の誕生日、私は泣いた。
太陽の匂いがする布団で、顔を突っ伏して泣いた。
友達から、たくさんおいわいされた。
おめでとうの最後には、いい一年にしてね、とか、これからもなかよくしてね、とか。
私にとっては、苦痛でしかないのだ。
どうしてまだ生きているのだろうと、まだ生きなくてはならないのだろう、と。
足がだんだんしびれてきた。
どれくらいたったのだろう。
顔をあげると、部屋はもう薄暗くなっている。
カーテンをていねいにひく。
左手首がひりひりと痛む。
そのときだった。
ベッドのうえでなにかが動いている。
うさぎくらいの大きさで、白くて、ふわふわで、まるいなにか。
ちいさいころあそんでいたぬいぐるみによく似ている。
なんとなく懐かしさを覚えて話しかけてみた。
「あの、、、?」
その動きが止まった。
ラグビーボールに白いふわふわの毛が生えたような、可笑しな生き物がそこにいた。
その子は言った。
「世の中はそんなに黒ばかりじゃない。白というわけでもないが、うーん、透明といったところかな。」
目が覚めた。
夢だった。
きいたことがある。
人間にはひとつだけ見えない色があると。
私は、世の中の真っ黒な部分を知るほど、見るほど、消えたくなっていた。
あのときのまっさらな自分が、教えてくれたのだろうか。
冷たかった頬もいつの間にか暖まっている。
今度は思いっきりカーテンを開けてみる。
夜空は満点の星空だった。
透明の色 すく @ciel-ym04
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