深海都市
阿保踊
プロローグ
『行方不明者増加?!』
『犯人は未だ分からず』
『これが現代の神隠し?』
「似たような話ばっかりだな。」
スマホの電源を切ってハンバーガーを口に入れる。
この記事の通り、ここ最近は行方不明が多いらしい。
道具から動物、建造物、人まで消えている。
犯人は複数いるだとか、超常現象、神隠しとか言われている。
「まぁ、こんなに多発してんなら神隠しって言われても不思議じゃないよな。」
バーガーを食べ切ると、店を出てイヤホンをつける。
この神隠しは三年前から始まった。
日本でも稀に見ぬ降水量の雨が降った日、多くの人が消えた。
死んだんじゃない、消えたんだ。
消えたモノは何一つ帰ってきていない。
実際、俺の高校時代の同級生も何人か消えているらしい。
「オカルトを信じる性格じゃないけど、こればっかりは人が犯人じゃないだろうな。」
そう考えていると、電話がきた。
「もしもーし」
「アキラ、いつまで昼休憩してんだ!」
電話越しから怒鳴り声が聞こえる。
先輩からだった。
「今食べ終わったんで戻りますよ。」
そう言って電話を切る。
急がないとまた怒られそうなので、軽く走りながらバイト先に戻る。
すると、誰かにぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
直ぐに謝り、また走ろうとすると肩を掴まれる。
かなり強く掴まれた為、後ろに倒れかけた瞬間、鈴の音と沈むような感覚を覚えた。
「…は?」
そのまま後ろに倒れると、目の前には黒装束の人がこちらを見ており、俺は徐々に沈んでいく。
起き上がろうと腕を動かすが、黒い液体が邪魔をして挙げられない。
目の前の人に声をかけるが、無視される。
どうにかしようともがき続けると、口に何かを突っ込まれ、下に押し込まれた。
そのまま目の前が真っ暗になったと同時に、意識も失っていった。
「おーい、人間!さっさと起きろ!」
頬を叩かれる感触があり、目が覚めた。
目の前にはスカジャンを着た猫…猫?
「猫?!ゴホッゴホッ!」
起き上がると、喉に異物が入りむせる。
大きい咳をすると、口の中から小さめの鈴が出てくる。
「おい人間、邪魔だからさっさとどいてくれ。」
「邪魔って、まずなんで猫が喋ってんだよ。」
そう言ったと同時に、辺りがおかしいことに気づいた。
先程まで昼だったのに今は真夜中。
それに、街灯ではなく提灯が空中で光りながら漂っている。
急いでスマホを開くが、圏外だし文字も読めなくなっている。
「ここ、どこだよ。」
「にゃんだ、お前陸から来たのか?」
「り、陸?」
疑問に思っていると、後ろから影が迫ってくる。
振り返ると、一つ目の大きな壁が迫ってきていた。
驚いて道の端っこに移動すると、その壁はそのまま通り過ぎていった。
「何なんだよこれ…」
「人間!」
頭を抱えていると、先程の猫が話しかけてくる。
「お前が誰かは知らにゃいけど、そこだと邪魔だから一旦店に入れ。」
そう言われ、目の前のコンビニに連れて行かれる。
コンビニはお客がいないが、品揃えは見慣れた物ばかりだ。
「さて人間、お前はここに来たことはあるか?」
「な、ない。」
猫はふむふむと頷くと、看板を店奥から引っ張り出して俺に見せる。
看板には『うぇるかむ』と書いてある。
「ようこそ、深海へ!お前の名前は?」
「えっ、
これは、俺の中の普通が変わった最初の日だ。
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