嫌われ者の悪役王子に転生した俺、今生こそ好き勝手に生きようと思ったら、無自覚に聖人ムーブをしていた件 〜悪の王国を作ろうとしているのに、なぜか皆に尊敬されてるんだが〜
悪役王子、数え切れないほどのおっぱいを押し付けられる
悪役王子、数え切れないほどのおっぱいを押し付けられる
その後。
俺とクローフェ女王は、ユリシアの案内でエルフを幽閉している場所に赴くことにした。
シュドリヒ国王は気絶しっぱなしだったからな。
ここは私に案内させてほしいと、ユリシアみずからが提案してきたのである。
……よくわからないが、今回の一件で《大切なもの》とやらを取り戻したらしい。本当によくわからないけどな。
当然だが、会談の参加者については同行していない。
明らかな内政干渉となるため、バージニア帝国・オーレリア共和国はこれ以上首を突っ込まないと決めたらしい。
ゆえにいったんは王城の客室にて待機してもらうよう、係の者に対応させているところだ。
「……こちらです」
数分後。
ユリシアが案内してきた先は、ある王城の一室だった。
ゲームでは《立ち入り禁止区域》として設定されており、どうにも足を運べなかった場所だな。
この部屋について、有志たちがさまざまな考察をしていたが――まさかここにエルフたちが閉じ込められていたというのか。
「では、いきますね」
ユリシアがその扉を開けると、物置らしき部屋が目の前に広がった。
棚の中にいくつもの箱が置かれているだけの、一見すると普通の物置部屋だ。
だが部屋の隅にはなにやら意味深な小門が設置されており――そこをくぐった瞬間、まるで別の世界が広がっていたのだ。
中央に伸びる通路の左右に、等間隔で並ぶ牢屋。
そこにげっそりとやつれたエルフたちが地に伏せており、なんとも痛々しい光景が広がっていた。
「ぐっ…………!」
同胞の苦しそうな姿を見て、クローフェ女王が悔しそうに両の拳を握り締める。
「…………」
一方のユリシアは、そんなクローフェ女王を黙って見つめるばかり。
エルフの王たる彼女にどんなふうに声をかければいいのか……心底迷っている様子だった。
「ん…………」
と。
ふと近くのエルフからそんな声が聞こえてきて、俺は目を丸くした。
なんだ。
助けるのは絶望的だと思っていたが、まさか生きているのか……?
念のため周囲を見渡してみるも、死んでいるエルフはどこにも見当たらない。活力は極限まで奪われてしまっているものの、すべてのエルフが生き残っているようだ。
「なるほど、そういうことか……!」
ユリシアの目的はあくまで《エルフの血》。
ここで殺してしまっては採取の効率が悪い。
牢屋でうまいこと生かしておいて、定期的に傷をつけては血を奪い取る……。
そんなふうにして、血を集めてきたのだろう。
もちろんこれ自体も許せないことではあるが、エルフたちが誰も死んでいないのは僥倖だった。
「エスメラルダ様、どうしたのですか……?」
ニヤリと笑う俺に対し、クローフェ女王が不思議そうに首をかしげる。
「なに。これなら有効活用できると思ってな。――大量生産の用意をしておいた《世界樹の雫》を」
「へ…………?」
世界樹の雫。
それはパーティ内のHP・MPを全回復し、さらに瀕死を含めた状態異常さえも一瞬で治すチート級アイテムだ。
かつての俺も、ブラッドデスドラゴン戦で負った傷をこのアイテムに癒された。
ゲームではレア中のレアアイテムで、なかなか手にすることができないが――。
「ふふ……実は正しい知識さえあれば、調合できるんだよ。【調合】スキルを最大まで高めた上で、“ラストエリクサー”と“不死鳥の羽”をかけ合わせればな」
不死鳥の羽。
これは《エルフリア森林地帯》に住んでいる不死鳥から採取できる調合素材だ。
強力な武器防具の素材になるので、実はそっちの目的で集めていたんだけどな。
けれど今はそんなことよりも、エルフたちの命を救うことのほうが先決だろう。
エルフたちは人間と比べて、かなり優秀なポテンシャルを秘めている。ここでみんなを見放してしまっては、すなわち有能な奴隷たちを失うことと同義だからな。
「待っていろ。ここにいるエルフたち、全員助けてやる」
そう言って、俺は重篤に陥っているエルフたち人数分の《世界樹の雫》を調合してみせた。
目的の武器を作るためには相当数の“不死鳥の羽”を集めないといけないので、実は秘密裏で大量にかき集めていたし――。
ラストエリクサーに関しては、今では多くのエルフたちが大量生産できるようになっているからな。
素材不足に陥ることもなく、俺は一瞬で激レアアイテムを複数生成してみせた。
「よし、これで完成だ。クローフェに姉上、これを手分けしてエルフたちに渡してもらってもいいか」
「は……はい!」
「わ、わかった」
そう言って全員で手分けして、まずは瀕死に陥っているエルフたちに《世界樹の雫》を飲ませていく。
みんな息も切れ切れになっていたが、このチートアイテムさえあれば……。
「あ、あれ……?」
「治った……?」
「なんで……?」
果たして俺の狙い通り、さっきまで地に伏せていたエルフたちが、一気に元気を取り戻した。
「じょ、女王様……? わ、私たち、助かったんですか……?」
うち一人のエルフが、クローフェ女王にそう問いかける。
「ええ。そこにいらっしゃるエスメラルダ様が、惜しげもなく《世界樹の雫》を振るってくださったんです。あなたたちの傷は――完全回復しました」
「う、うわぁああああああああああ!」
エルフは一気に泣き出すと、俺の懐に一気に飛び込んできた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……!」
「もう助からないと思ってたのに……!」
「あなたは命の恩人です……!」
「――フフ、気にするな。当たり前だろう、これくらいのことは」
そう言ってなんか意味深な笑みを浮かべる俺だが、チート級に柔らかいおっぱいがぐいぐい押し付けられてきて、正直それどころじゃなかったのは秘密だ。
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