鬼? ただのザコ敵では?
「ふふふ……ただのザコ敵だったな」
ぴくりとも動かなくなった鬼を見下ろして、俺は不敵な笑みを浮かべる。
前世で周回プレイをしていた時も、《エルフリア森林地帯》でレベリングをしてからこの洞窟に潜るのが鉄板だったからな。
弱いくせに経験値だけは多めなので、なかなか美味しい敵だと言える。
ひとつ気がかりな点があるとすれば……。
「ローフェミアよ、どうしてそんなに目を輝かせている?」
そう。
ザコ鬼を倒してからというもの、ローフェミアはより尊敬と好意の入り混じった目で俺を見つめてくるようになったのだ。
それこそもう、このあと不貞行為に及んでも拒否されなさそうなくらいには。
「本当にすごいです、本当にすごいです……。私たちのために鬼退治をしてくれるなんて……」
「は? このザコ敵がどうかしたか?」
「はうう、しかもザコ敵呼ばわりなんて……!」
なぜだか悶絶しているが、俺なにか変なこと言っただろうか。
このゲームは世界観がめちゃくちゃ凝っている上に広大なので、俺の知らないこともあるんだよな。
とりあえず、この鬼は経験値のためのザコ敵としか考えていなかったが……。
まあいい。
この洞窟の本命はこんなクソザコではなく、鬼を倒した先にある宝箱だからな。
「さあいくぞ。超お宝が俺たちを待っている!」
「はいっ!」
その後もローフェミアは俺に密着してきたが(もちろん胸も当たってきたが)、しかしもちろん、ハーレムを築きたい俺としては拒否せずにしておいた。めっちゃ歩きにくかったけどな!
★ ★ ★
さて。
アウストリア洞窟の最深部にある宝箱だが、これはゲーム中であれば、同行メンバーに応じた武器がそれぞれ配置してあるのが鉄板だった。
つまり俺とミルアの使用武器である剣、そしてローフェミアの使用武器である杖。
ゲームではこの三つが配置されていたが、果たして……?
「おや、宝箱が三つも……?」
果たしてこっちの世界でもそれは同じだったようだな。
ミルアが目を細める先には、ゲームと同じように、三つの宝箱が等間隔で配置されている。
「ふふ、開けにいってみるといい。おまえたち二人の武器が入っているはずだ」
「え、そうなんですか?」
目を丸くして訊ね返してきたのはローフェミア。
第一王女たる彼女でさえ知らないってことは、たぶんこの国のエルフは全員知らないことなんだろうな。
「ああ。開ける宝箱はなんでも構わない。好きなものを選べ」
「わ、わかりました! 全知全能のエスメラルダ様がそうおっしゃるなら、きっとそうなんですね!」
全知全能……?
さすがにそれは言いすぎだとは思うが、俺が突っ込む間もなく、ミルアとローフェミアが宝箱に駆け寄っていく。
その際に乳がばるんばるんと揺れていたのが実に壮観だった。
「馬鹿な、まさかこれは宝剣ユグドラジル……⁉」
「すごい、私のほうは
先に宝箱を開けた二人が、それぞれ黄色い声をあげている。
どちらも店には売っていない代物で、宝剣ユグドラジルは一定時間ごとに相手からHPを吸収するチート機能、魔法杖レスタードは単純に魔法攻撃力が二千も上乗せされるぶっ壊れ能力だ。
(ちなみにローフェミアがさっきまで持っていた杖は、魔法攻撃力を三百しか上乗せしない)
そして。
「さあ……いでよ魔剣」
俺が開けた宝箱には、目当てのブツ――魔剣レヴァンデストが入っていた。
上乗せされる攻撃力はなんと脅威の一万。
作中でもトップクラスの攻撃力を誇る魔剣だった。
もちろんそれにはデメリットもあって、被ダメージが三倍になるという呪いに課せられることになる。
ゆえに並のプレイヤースキルでは到底使いこなせないが、前世で三百周もゲームをやり込んだ俺ならば話は別。
さっきの鬼のように、攻撃など当たらなければどうということはないからな。
レベリングをして高まりまくった物理攻撃力に、さらに魔剣レヴァンデストの強さが重なる……。
クックック、それはもはや世界を手中に収めたも同然。
俺に敵う者はいっさいいなくなるだろう。
「フフフ……ハッハッハ‼」
それがあまりにも愉快で、俺は思わずその場で高笑いをしてしまうのだった。
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