第12話 晩餐会をやめさせましょう

「本日のメインディッシュはこちらでございます」

「まぁ美味しそうな子だこと」

「今日も楽しみですな」

「えっ? 何? えっ? どういう事?」

「綺麗な声ねぇ、早く悲鳴を聞きたいわ」

「わしは脂の乗りの良さそうな肝臓のソテーを所望するぞ」

「私はコリッとした食感の舌を楽しもうかしら」

「このワインに早く血を注いでもらえんか?少し物足りなく感じて来とるんじゃ」

「えっ? やだっ! 助けてっ!」


 日没してしばらく経ってから始まった晩餐会は始まってすぐに佳境に入っていた。

 お酒と軽い前菜だけが配膳され、舞踏も楽隊も無い様子に、会場のど真ん中に肉の解体道具や調理台が並んで居なければ貴族が集まる晩餐会としては質素だと思ってしまうぐらいだった。

 そんな中で連れて来られたのが、術理の使用が制限される首輪と質素だけど清潔そうな貫頭衣を着せられただけの女の子。

 その解体道具の並ぶ中心まで連れて来られて貫頭衣を外されて首輪だけにされれば、これからどういう目に合うのか5歳前後でも分かるのだろう。だからこそ抵抗もしるし、泣き叫んで命乞いをしている。しかし今まではこの屋敷で女の子の面倒を見ていた使用人に左右からガッシリと抑え込まれては逃げる事もままならないようだ。


「ではまず皆さんお手元のワインに合う血をお配りしたいと思いますのでしばらく悲鳴を聞きながらお待ちになって下さい」

「早くしてくれっ!」

「余り多く抜きすぎて弱ったら勿体ないわ?」

「やだーっ! 嫌ーっ! 助けてーっ! ひっ!」


 女の子は使用人の女性2人により調理台の上にベルトで固定されてしまい、今から腕にぶっとい穴のあいた針をつき刺され、流れ出る血を透明なフラスコのものに入れられようとしていた。

 僕はその瞬間に屋敷にい僕と女の子以外のの全員を時術で動きを止め、その凄惨な晩餐会を停止させた。


「へっ?」


 僕は、急に周囲が固まったため呆けている女の子の目の前に姿を表した。


「助けに来たよ」

「えっ? だ・・・だれ?」

「君が食べられそうになってたから助けに来た・・・分かる?」

「う・・・・うわぁぁぁぁぁん!」


 女の子は恐ろしい目から逃れられるという事が理解出来たのか、ベルトに固定されたままで大声で泣き出した。


「ベルトを外すからね? 暴れないでね?」

「早くっ! 外してっ! うわぁぁぁぁぁん!」


 僕は調理台に置いてある切れ味の良さそうなナイフを使い、革製のベルトを切って女の子の拘束を解いた。


「うわぁぁぁぁぁん! 怖かった! うわぁぁぁぁぁん!」

「うん怖かったね・・・」


 拘束が外された事で抱きついて来た女の子を受け止めて頭と背中を撫でた。

 号泣していた女の子はひとしきり泣いたあとでシャックリの状態になったので話をする事にした。


「僕はニケロだよ」

「ニケロ・・・」

「ニケロ・・・名前だよ?」

「ニケロ」

「君の名前は?」

「・・・ミウラ・・・」

「歳はいくつ?」

「・・・7歳・・・」

「僕の2つ年上だ・・・」

「そう・・・なの?」

「僕は5歳だよ?」

「うん・・・私より小さい・・・」

「ミウラは僕よりお姉ちゃんなんだね」

「お姉ちゃん・・・うん・・・お姉ちゃん!」


 お互いの自己紹介を終えたところで本題を告げる事にした。


「僕はこれからここの掃除をしないといけない」

「・・・おそうじ?」

「君みたいな子がまた連れて来られないようにしないといけないでしょ?」

「・・・うん・・・」

「だから掃除しなければいけないんだ」

「・・・うん・・・」

「手伝ってくれる?」

「うん!」

「じゃあ僕がこの屋敷のものを全部片付けていくから、君はここに居る全員とこれから僕が運んで来る全員にこの首輪を付けていって貰える?」


 僕は空術の保管庫に入れておいた、ここに来ている貴族の屋敷から拝借した術理を制限する首輪を大量に取り出した。


「私と同じ首輪?」

「それは術理を使えなくする首輪だよ」

「そうなんだ・・・うん・・・分かった!」

「じゃあ掃除を始めようか!」

「うん!」

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