第11話 招待客を調べましょう

 晩餐会は領地貴族の屋敷で招待状を見つけた事で、次の満月の日の夜に行われる事がわかった。

 晩餐会は毎月行われているらしく、女の子が運び込まれた前日にも晩餐会が行われていた。

 女の子は穀物粥と果物とハーブが多い根菜スープが出され続けている。そして運動はあまりさせず、毎日のように風呂でマッサージを受け、本を読み聞かせたり音楽を聞かせたりしていた。

 奴隷にとって居心地良さそうな環境に見えるけれど、これは明らかに肥育させている状態だと分かる。肉の臭みを消すための食事と運動させずに太らせる、リラックスせマッサージをする事で肉を柔らかくさせる。シェフにとっては食材の下ごしらえ中って所なんだろう。


 女の子はそんな境遇にいる事を疑問に思って居なかった。良い所に貰われたと思い世話を焼いてくれる使用人に懐いてしまっているように見えた。

 今救助しても逆恨みされて騒がれるだけだろう。だから可哀想だけど、晩餐会当日に現実を知って貰ってから救助する事に決めた。


 時間的猶予がある事が分かったため、情報収集を行った。

 寝静まった頃に調べたい範囲を時術で時間を止め侵入すれば誰にも気が付かれず調べ物が出来た。

 人の往来がある時や昼間だと周囲に違和感を感じさせるけど、夜の静かな時間帯ならそれもバレはしなかった。

 結果としてこの領地の貴族の党首とその妻と成人の嫡男とその妻の全てが晩餐会に参加している事も分かった。つまり僕の両親も完全に真っ黒な存在だった。


 ちなみに晩餐に出されるのは5歳前後の女の子と決まっていた。ニケロが女の子として産まれていたら、孤児院では無く晩餐会に出されていたのではと思う。なぜなら他の貴族家で無能とされた女の子が晩餐会に出されたと分かる資料が見つかったからだ。


 なぜ人を食べるのかだが、過酷な環境に居るとステータスポイントが増えるという事と理由が同じだという事が分かった。

 この食事を参加したばかりの人は体の能力が上昇する傾向があるらしい。異常な環境下に居るというストレスによって過酷な環境に居るのと同じような負荷がかかって能力の向上が起きるのではないかと考察が書かれた日記もあった。

 また慣れて来ると能力の上昇が無くなるとも書かれた日記もあって、残酷に殺しながら食べる事でさらに向上させる事も出来ると書いてあった。

 能力が上がらなくなったけど晩餐会の興奮が忘れられないと書かれた日記もあったので、異常な環境に居る事が快感になってしまい参加し続ける人が居る事も分かった。


 こんなことまでして能力への執着がある貴族という存在。術理の才能が無いとみなされたニケロがあっさり見捨てられたのは、その執着ゆえなんだと分かった。


 このような残虐な晩餐会の様な事を、貴族は普通に行うものなのか3つの隣領を調べた。しかしそんな事はしている証拠は見つからなかった。

 子供に薬を飲ませたり術理をぶつけたりと、僕と似たような虐待を受けている子は居たけれど、ニケロと同じように普通に受け入れてしまっていた。

 幼少期の分別の付かない子にとっては、日常になった虐待でも親の愛だと受け入れてしまうものなのだろう。ニケロも僕と入れ変わるまでそういうものだと思い続けていたようだったし。


 招待客にはあらかじめ時術の時間停止をかけて耐性みたいなものがあるのか調べた。結果として全員あっさりと時間停止がかかったので、晩餐会は問題無く制圧出来ると思う。


 それにしてもこの胸糞悪い調査のせいで僕のステータスポイントは上昇していた。結構な精神的ストレスを感じ続けていたらしい。

 僕は気配を消す事が得意となる体術と風術と逃走を助けてくれる時術や空術にそれを注いでいき晩餐会本番になる日を待った。

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