第9話 奴隷を見に行きましょう

 暑くて寝苦しい夜に水を飲もうとベッドから体を起こしたら寝る前より運命力が3上昇していた。

 水を飲んでもう一度寝そべってしまうと3下がる。

 つまりこのまま寝ていれば何かを逃すという事なのだと思った。

 仕方ないなと起き上がり奴隷商に向かうと案の定運命力がどんどん上がっていった。けれど奴隷商の近くに留まると運命力が下がりだした。

 疑問に思い少し戻ると運命力が上がった。つまり運命力の源は奴隷商から移動しているのだと予想した。

 運命力が上がっていく方向に進んでいくとそれは街の門に続く道だった。

 つまり運命力の源は街の外に居る。これなら奴隷商に侵入するという犯罪を犯さずとも運命力が上がる存在を見る事が出来そうだ。


 風術で体を浮かび上がらせて運命力の高まる方向に向かうと、良く奴隷商の前に止まっている幌が被せて目隠しされているだけの周囲が鉄格子になっている馬車が走っていた。

 周囲には特に護衛は居ないようで御者台に2名乗っているだけなのでそんなに多くの奴隷が乗っている訳ではないのだろう。

 荷台の屋根にこっそり降りて幌を少しめくって中を見ると、中にあったのは棺桶のような箱だった。

 奴隷はあの箱の中に入っているのだろうか?

 箱をあけて確認したい気もするけれど、中に居る人が叫べば御者席の2人に聞こえてしまうだろう。

 このまま進むと途中の村を通り過ぎて隣町にも入ってしまう。

 助け出すなら絶対夜間が良いだろうしあまり時間の猶予は無い。

 そう思って悩んでいたら御者の2人の会話が聞こえて来たので聞き耳を立てる事にした。

 御者席の2人は奴隷に唾吐かれて頭に来たとか、不倫している相手とどういう行為をしているとか、向かう先の街でのおすすめの娼館の話とか下らない話をしてしていた。

 取り合えず向かう先の街が分かったので1日は猶予がある事が分かった。

 通り過ぎるだけの村が見えて来たので離れて様子を見ようと思った瞬間に奴隷の事について話を始めたので屋根に張り付いて聞き耳を続ける事にした。


「それで・・・あんなガキが相手になるもんなんです?」

「あまり大っぴらに言えんが、あの家に売られた奴隷は二度と表には出ないらしいな」

「どっかの部屋に閉じ込めているんですかい?」

「噂では貴族が集まる晩餐会に出されるらしいな」

「晩餐会?」

「あぁ・・・」

「貴族の前で躍らせでもるんですかい?」

「踊るかもしれんが俺は見たくないな」

「どういう意味です?」

「食べるんだよ・・・」

「・・・はぁ?」

「生きたまま少しづつ切り取ってそいつがあげる絶叫を聞きながらその場で調理したものを食べるらしいな」

「まさか家畜だったとしてもそんな事しませんぜ」

「奴らにとっては平民・・・ましてや奴隷なんかは家畜以下なんだろうよ」

「マジですかい」

「小さいガキなのは肉が柔らかいからって事らしいぞ」

「他の奴隷より扱い良さそうなのはそんな理由だったんですかい」

「ウチで大切にしていたのは病気の有無を確認しながら痩せさせないためだな」

「気分が悪い話ですね」

「あぁ・・・あまり大っぴらにするなよ?」

「わかりました」


 この奴隷商の罪の有り無しの判断は分からないけれど、その晩餐会に参加する奴らは罪人であると見なして良いかなと思った。

 ましてや奴隷を運ぶ先が両親が居る筈の領都なら、参加者の中に僕の元身内が居るのではないかと思った。

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