記録の記憶
Coppélia
第1話、始めのひとかけら
RTA=現実世界でタイムアタック
人はそれを「効率厨」と呼ぶ。
初めての1人映画館。
まさか初めて自分のためにチケット買った映画が故人の伝奇映画とか、流石にしんみりしてしまう。
人の欲望で土壌汚染された場所のど真ん中。
人を見下す傲慢さを現したビルの中。
ビルの周りは路上で飲んだくれとか、結構無法地帯。普段の俺ならまず近づかない場所なんだが、ちょうど月命日に当たるというのもあり最期の1話をどうしても作りたかったから、わざわざ新宿までやってきた。
ビルの中は新しいだけあって非常に綺麗。
今回欲しいデータは4つ。映像が2つにラウンジの音とS席買うと入れるプレミアムラウンジにある彼の直筆サインを見ること。
映画館って行ったことがほとんどないから、どの席がいいのかもよくわからない。とりあえずS席真ん中とA席1番前の真ん中を選択してみる。
そもそものシステムがわからない。
受付っぽい人に「初めて映画館に来ました。ルール自体がわかりません」と聞いてみる。
事前情報でわからなかったのは、上映開始前からラウンジに入れるのか。
これは1時間前から入場可能だった。
今、上映45分前。
時間潰しに付近をうろうろしていたから普通に入れた。
歌舞伎町とか、絶対に行きたくない場所。
日本の中でもバッドニュースばかりの街。
Frankfurt am Mainの中央駅並みに行きたくない。
まあ、昼間だし、警察いるだろうからと折角だと思ってふらふら彷徨いていた。
しかし、本当に日本なのか怪しくなるレベルに欲望で染め上がっている。
何より怖いのは、道路挟んで一つ隣のブロックは「普通」。
異様過ぎて怖かった。俺が何枚か写真を撮っていたら、警察官が後ろに付いてきた。
「如何されましたか?」
「観光の方だと思いますが、このあたりは写真を撮られたくない人も多いし、危ない場所もあります。気をつけてください。若い子を狙ったスリもあります」
俺に職質かと思ったので声を掛けたのだが、普通に心配された。マスクでわかりにくいが、間違いなく俺より若い警察官。東京出身なのに行動がお上りさんで申し訳ない。謝罪して、交番前で別れる。
別に迷惑掛けたくもない。
そのまま映画館を目指した。
拾いたかったピースのうちの一つ、ラウンジの音。
なんだが、さっそく入ったラウンジ内は平日昼間に関わらず人が多い。
雑踏に溶け込む彼の音は、どうやら会話を誘発するようだ。
塩味とキャラメル味のポップコーンとほうじ茶もらってラウンジで食べる。
新しいし、感じがいいスタッフさん。
映画館ってなんか、薄暗くて怖い、アングラなイメージだったけど教えてくれた方含めて落ち着いた感じといい、居心地がいい。
ポップコーンは食べきれそうにない。
仕方なくスタッフさんに会場内に持ち込んでいいか聞いたら、いいと教えてくれた。
「おかわりも可能ですのでどうぞ。あと扉が開く演出音は「彼」が作った音ですよ」
「ありがとうございます」
丁寧な対応をしてくれる。欲しいデータを食べながら、開場と同時にシアターに入る。
まだ、誰もいない。
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