彼女は異なもの味なもの。〜幽霊じゃダメ?〜

猫野 尻尾

第1話:神も仏もあるもんか。

「あんたまた、しなびたナスみたいに玄関に座り込んで・・・」

「しっかりしなさいよ、学校休んじゃダメよ」


「わ〜ってるよ・・・でもやる気出ねえんだ・・・」


「金玉ついてるんでしょうが・・・情けない」


「姉ちゃんには俺の気持ちなんて分かんねえんだよ」


「なんだと?」


「姉ちゃんは彼氏もいないし、好きな人に死なれたことないだろ」


「バカかおまえは・・・いつまでも亡くなった子の悲しみに囚われやがって」

「ヘタレ、まじで女々しいわ」


そう言われて俺の頭の中でゴールデンボンバーが歌ってた。


俺の名前は「遥 叶多はるか かなた」高校一年生。

姉ちゃんの名前は「遥 望美はるか のぞみ」大学一年生。


俺は姉ちゃんが大学に入学することを気に一緒に上京してきた。

だから今は賃貸マンションで姉ちゃんと二人暮らし。


なんで俺が朝からヘタレになって姉ちゃんから叱咤しったされてるかって

言うとだな・・・


俺の同級生の彼女「恋人」が、自分ちの風呂場で石鹸ふんずけてすべった拍子に

後ろにずっこけて頭打ってあっけなくあの世に行っちゃったんだ。


俺から大事な子を奪いやがって・・・神も仏もあるもんか・・・。


彼女の名前は「茲沢 瑠奈ここさわ るな」クラスでもトップクラスの

めちゃ可愛い女子高生・・・だったんだ。


実は俺は高校に入学した時、一目で好きになったのが茲沢 瑠奈ここさわ るなで、でも好きだって告る勇気が持てなくて彼女から「ごめんちゃい」って言われる

のが怖かった。

そんなことになったら瑠奈とは永遠に距離が遠くなるって思った。


瑠奈はどっちかって言うと、おっとりした性格でのんびり屋、物事に深く拘らない

タイプ、ポジティブ、ノー天気、天然、ちょくちょくボケをかます。


俺はそういう子がタイプなんだ。

俺がどっちかって言うとイラチだから、タル〜い子のほうが癒されるんだ。


そんな折、瑠奈の一番仲のいい「道野 早希みちの さき」が俺のところに

来て 瑠奈が「話があるから屋上に来てほしい」って言ってるからって言ってきた。


瑠奈が?・・・俺に?何の用?・・・俺、彼女になにかしたか?・・・。


俺がドキドキで屋上へ行くと、先に瑠奈が来てて俺に気づくと笑顔で ペコって

お辞儀した。


すこし離れたところから見る彼女の立ち姿。

風になびく長い髪・・・眩しすぎる笑顔・・・揺れるスカート。

俺の目の中で切り取った彼女の完璧なベストショット。


「ごめんね、はるかくん・・・呼び出したりして」


「ああ・・・別にいいよ・・・なに?俺に用って?」


俺は平静を装ったが実は口から喉ちんこが飛び出るくらい緊張していた。

なんせ想いを寄せてる瑠奈からの呼び出し・・・どんな用事だろうと思うと

それだけでアドレナリンとドーパミンが出まくるってもんだろう。


「あの〜あのね・・・そのね・・・私みたいな落ちこぼれでよかったらだけどぉ」

「付き合ってほしい・・・んだけど・・・」


「は?」


あまり唐突な彼女の言葉に俺はしばらく返事ができなかった。

ずっと想ってた子からの思わぬ逆告白・・・棚からぼた餅。

支離滅裂、喜怒哀楽、紆余曲折、四面楚歌、自暴自棄・・・違うか・・・。

晴天の霹靂・・・それだ。


うそだろ、まじで言ってる?

俺は突然起こった予期せぬ出来事に戸惑ってなにも言えず黙ってると


「やっぱり・・・ダメかな・・・そうだよね」

「私みたいなヘタレでポンコツが遥くん見たいな優秀な男子の彼女って・・・」

「ごめんね・・・迷惑だよね・・・」

「あ〜もう告るんじゃなかった」


彼女は勇気を出して俺に自分の想いを告ったんだろう。

告ったあとで、後悔してる彼女の様子が伺えた。


「遥くん、今のことは忘れて・・・」

「・・・ごめんね・・・じゃ〜ね、忘れてね」


そう言って彼女は顔を真っ赤にして立ち去ろうとした。


「ま・・・待てよ・・・」

「俺に告っといて、なにひとり自虐的になってるんだよ」

「俺、まだなにも言ってないだろ?」


「だって・・・」


「いや、まさかの展開に少し戸惑っただけだよ」

「迷惑なんかじゃないし・・・むしろ嬉しいし・・・」


「えっ?」


「実は俺、瑠奈のこと、ずっと前から好きだったんだ」

「でも気持ちを告る勇気がなかなかでなくて・・・」

「きっとこのまま片思いで終わるんだろうなって思ってたんだ」


「だからさ、好きな子からのまさかの告白だろ・・・固まるよな、普通」


「え、それじゃ」


「もちろん、おっけ〜に決まってるよ・・・俺の方からお願いしたいくらいだよ」


「ほんとに?・・・からかってないよね」


「なんでよ・・・こんなチャンス・・・逃したら俺、バカチンコだよ」


「バカチンコ?」


瑠奈はクスって笑った。


「俺の方こそ、付き合ってだよ」


「じゃあ、今日から瑠奈をよろしくお願いします」


そう言って彼女は満面の笑顔で、俺を見た。


「お〜その笑顔・・・キュンキュン来るだろうが・・・」


つづく。

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