第5話 紙装甲、豆鉄砲。でもティーガーより愛される。95式軽戦車

 95式軽戦車ハ号。


 旧日本軍の主力戦車にして、知識人からは何かと批判されることの多い戦車です。


 ですが、チハたん(97式中戦車)に次いで、日本国民から、そして世界からも愛されている車両でもあります。私も好きです。


 火砲は貧弱で、当時のアメリカ軍戦車を撃破することは至難の業。装甲は重機関銃でも貫通できるほど薄く、実際に貫通された記録があります。


 低い対戦車能力は、練度の高い乗員でカバーしているような状況でした。


 速度はそれなりにありますが、他国の軽戦車と比べて抜きん出て速いかと聞かれると、それほどでもない。


 確かに、性能で言えば微妙な戦車ではあります。


 ですが、それには日本軍の抱える事情がありました。


 そもそも日本やアジア圏の貧弱な交通網は、重い戦車を運搬するのに適していませんでした。いくら強くても、道路に沈むようでは困ります。


 そのため、重装甲、重火力を持ち対戦車戦闘をこなせる強力な戦車を運用することは、そもそも現実的でなかったのです。


 そして日本軍の対戦車戦闘は、主に歩兵の運用する対戦車砲に任されており、戦車に期待されていたのは対歩兵戦闘でした。


 実際、対歩兵戦闘において95式は高い効果を発揮しています。


 日本軍の用兵思想にはかなった戦車でしたが、戦場では、少し相手が悪すぎましたね。

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