黒い部屋

わちお

おはよう〜さようなら

私が初めてこの部屋に入った時、その部屋はとても明るく見えた。

何もわからなかったけれど、その部屋はとても楽しい場所だった。


そこからしばらく時間が経ち、その部屋には複数の"誰か"がいることに気づき始めた。

その部屋にいる誰もが、自分がそちらを向けばこちらを向き、同じように自分の椅子を探した。


そこからさらに時間が経ち、全員が椅子に座った。

部屋はいつの間にか以前の明るさを失い、座った正面を見つめると先は真っ暗だった。


いつしか、見つめているつもりが見つめられているような、そんな感覚になった。


ぱりんっ、という音と共に部屋から1人の"誰か"がいなくなった。

いなくなったのは「諦めなければ夢は叶う」と言っていた奴だと、後からわかった。


再びガラスの割れる音がして、部屋からもう1人消えた。

今度消えたのは、どんな時でも他人を思いやる、優しい奴だったらしい。


暗闇の向こう側からこちらを睨んでいるのは、どうやら"他人"というものらしい。

それがわかると同時に、部屋から人が消えた理由もなんとなくわかったような気がした。


そうしていると、再びぱりんっ、という音と共に人が消えた。

そいつは決して自分の正義を曲げることのない強い奴だった。


私は残った1人と向かい合った。

残った1人は血の涙を流しながら苦しそうに笑っていた。

ひどく不細工だと、心から思った。


向かい合うことに疲れた私は、目の前に残った鏡から離れ、床に散らばるたくさんの鏡の破片を踏みながら外に向かって歩いた。


扉を開けて外へ出ると、最後の鏡が割れて何も見えなくなった。

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黒い部屋 わちお @wachio0904

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