ストロベリー♡プライム。〜メイドさんはクローン猫の夢を見る〜
猫野 尻尾
第1話:有機体ゼル。
ここは太陽系。
ゼルと言う一個の有機体が宇宙空間を彷徨っていた。
ゼルは物理的な存在としての実体を持たない有機体で人間のような肉体を持たず、
魂のように浮遊している生命体だった。
長い進化の末に不必要なモノを排除し、今の姿になった。
人の肉眼ではパチンコの玉くらいの小さな光の玉にしか見えない。
基本的には人間や動物、形ある生物に寄生して生命を維持している生命体なのだ。
一度寄生すると、寄生した生物の生命がつきるまで離れることはない。
どうやらこの有機体は人間で言うと男「雄の分類にはいる」らしい。
生物に寄生して肉体を持ってからの特技としては物質を一度分子分解、化学結合
して違う物質に変える、 と言う能力を持っていた。
たとえば、雑誌をマグカップに変えたり、割れた皿を元どおりに戻すとか
そういうことができた。
ゼルは遠い故郷の星から家出してもう何年も宇宙を彷徨っていた。
初めての広大な宇宙への旅立ちだった。
流れ流れて悠久の果てにたどり着いたのが銀河の辺境にある太陽系だった。
太陽に向かってひとつひとつ星を訪ねたが生命体がいたのは青い星だけだった。
ゼルはとりあえずその青い星に降りることにした。
緑も多いしまあ空気はそれほど綺麗でもなかったが生きていくには充分だった。
しばらくは有機体のまま浮遊しながらその星の生態や環境を観察した。
この星は文明がそこそこ繁栄していて二本足で歩く生物がこの星の支配者だと
言うことも分かった。
とりあえずその生き物に寄生するのがベストだとゼルは考えた。
上空から降り立ったゼルは一人の人物に目をつけた。
本屋の入り口でひとり、ぼ〜っと立ってる二本足の生き物。
ゼルがなんでその生き物を選んだかって言うと寄生する時になるべくなら
止まっていてくれたほうが都合がよかったからだ。
動いている媒体だとタイミングが合わずにすり抜けてしまう恐れがあった。
ゼルに目をつけられたその女は「ストロベリープライム」ってメイドカフェ
のメイドさんで名前を「
相手はゼルと性別が違っていたが、その子がなんとなく心地好さそうだったので
なんの躊躇も抵抗もなくゼルは古都華の脳に潜り込んでいった。
古都華の中に入ったゼルはこれまでの経緯を古都華の脳に伝えて体を借りる
ことを承諾してもらった。
なんだかよく分からないまま、古都華は脳と体をゼルに乗っ取られた。
寄生された古都華には選択の余地はなかった。
つづく。
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